デニムでドレスな着こしが再現できるA.P.C.のプチニュースタンダード

A.P.C.と言えば、まずどのようなイメージを思い浮かべるでしょうか?

ケンゾーやアニエスベーなどを経て、ジャン・トゥイトゥ氏が1987年に立ち上げた同ブランドは、あえてデザイナーの名を冠せず、「生産と創造の工房(Atelier de Production et de Creation)」との言葉の略に由来します。

フレンチファッションを代表する上品かつ、高品質な服を数多く生み出すA.P.C.。意図したその名の通り、どちらかと言うと、脱個性的でシンプルでありながら、袖を通すと、このブランドの持つ独自のこだわりやスタイルが、シルエットやその素材にしっかりと感じられます。

さまざまなA.P.Cの定番アイテムの中でも、デニムはもっとも人気のアイテムのひとつ。A.P.C.と言えば、真っ先にまずデニムを思い浮かべる読者も少なくないでしょう。

今回はとかくカジュアルになりがちな巷に溢れるジーンズとは一線を画す、フレンチ・カジュアル特有のどこか都会的で洒脱なA.P.C.の「プチニュースタンダード」を紹介します。


https://goo.gl/4hNpnD
(特徴的なデザインは無くとも、上質で完成されたスタイルのA.P.C.)


https://goo.gl/y4sVWD
(デニムもスラックス並みにドレスで洗練された雰囲気)

リジットデニムを選ぶ

A.P.C.の人気デニムの多くがウォッシュ加工を施していないリジットデニムです。「リジットデニム」とは、洗い加工などを施されていない糊の付いた生デニム、もしくは防縮加工のみが施されたデニムを指します。

リジット(rigid)=固い、という意の通り、通常のデニムに較べるとゴワゴワとして、とりわけストレッチのきいたスキニーとは全く異なる履き心地です。

また、今回レビューするプチニュースタンダード(ストレッチ入りのものもありますが、今回はノンストレッチを取り上げます)は、厳選された日本製の100%コットンを使用し、14オンスの非常にしっかりとした生地ですから、リジットデニムの中でもより固めのデニムと言えるでしょう。

もちろん、履き続けていれば、次第に時間をかけて身体に合った形に馴染んでゆき、生地は柔らかさを増して、履き心地も楽になってゆきます。


(未加工のデニム生地。確かな厚みがあり、深みのある独特の色味)

高級デニムの証のセルビッチ、生地の上質さは折り紙つき例えばビンテージジーンズと言えば、一本数十万円もざらです。それらのビンテージに特徴的なディテールとして代表的なものに「セルビッチ」があります。

セルビッチとは、デニム生地の両端のほつれ防止に縫い付けられた赤色の縫い目のことで、通称「赤耳」とも呼ばれます。これは旧式の織機を使用して織られたデニム生地にのみに見られるもので、単なるビンテージ風のアイコンではなく、高価なデニム生地を使用していることの裏付けともなる特徴です。

この赤耳がプチニュースタンダードにもみられます。

旧式織機は文字通り古い機械ですから、一度に生産できる生地巾が狭く、通常の量産デニムの約半分程度。更に織るのに数倍の時間を要する為、非常に生産コストが高くなります。

何しろ半分以下の生地を数倍の時間を掛けて織るわけですから、その生産効率はファストファッションのそれとは比べるべくもありません。

しかし、量産ジーンズにはない独特の風合いを持った色落ちに繋がるため、あえてこのような「前時代的」とも言える製法が重視されるのです。


(裾を折り返すと、高級ジーンズの証の赤耳「セルビッチ」)

わかりづらいラインナップ。抑えるべきは3タイプ

さまざまなラインナップがありますが、抑えるべき主要モデルは「ニュースタンダード」、「プチスタンダード」、そして「プチニュースタンダード」の3つのモデルです。

まずは、これらの基本ともいえるシルエットのニュースタンダード。端的に言うと、これは少々太さが中途半端です。細くもなく、また太くもない……。

何も考えずに履くと、シルエットが野暮ったくなりがちです。クラッシックなシルエットで、オーセンティックではあるのですが、トレンド性は希薄で、初心者は避けるのが無難です。

それに比べ、そのアップデート版ともいえるプチスタンダードは、ニュースタンダードよりも股上が浅く、全体的に細身で、すっきりとしている為、コーディネートは比較的構築しやすいでしょう。

特にウエスト周りの着心地は結構なタイト感があります。ただし膝から下のテーパードは少な目です。

そして、肝心のプチニュースタンダードは、名前からも想像できる通り、プチスタンダードとニュースタンダードを掛け合わせた良いとこどりモデル。

特徴としては、股上は深めで、かつウエストはニュースタンダードよりも随分と余裕があるので、着心地は比較的楽です。膝から裾にかけてのテーパードは3モデルでいちばん顕著なので、シルエットとしては最も今日性のあるモデル。あれこれ考えずとも、トレンドフルなシルエットが決まります。

また股上があるということはウエスト位置が上がるということ。

足長効果も期待できますから、着心地、トレンド、足長効果の3拍子揃った特にオススメモデルなのです。


(画像はプチニュースタンド。ウエスト周りは比較的ゆったりとした履き心地)
http://zozo.jp/sp/shop/apc/goods/2420273/


(膝から下にかけて、かなりテーパードがきいているのが解る)

デニムでスラックス並みのドレス感を

ジーンズは本来、経年劣化もひとつの味として美しく色落ちしてゆく過程を楽しむ一面もあり、とりわけセルビッチジーンズでは、その点が非常に重視されるポイントです。

理想の色落ちを得る為、ガンガン履いて、1ヶ月近く洗わないのものもザラで、上級者の間では、むしろそのような扱いが推奨される傾向にあります。

そのように、趣味性の強いアイテムであるジーンズですが、実際のコーディネートに落とし込む際に、そのようないわゆる「ジーンズ的」なマニアックな趣向に偏っては、客観的なオシャレ度を欠いてしまう事も。

むしろこのデニムは出来得る限り色落ちさせず、綺麗に着こなす事で、その真価を発揮します。

リジット状態の生地は、光沢のあるグレーに近い上品な色合いで、非常にドレス感を持っています。加えて、このジーンズのすっきりとテーパードの効いた細身の美しいシルエットはさらに脱カジュアルを加速させるのです。

つまり、A.P.C.のプチニュースタンダードは、いつものカジュアルなジーンズスタイルを大人の雰囲気と気品をプラスした、新たなスタイルへと劇的に変化をもたらす優秀アイテムなのです。


(ツヤ感のあるリジット独特の色合いは、ドレス感を損なわない)
https://goo.gl/T3xSvT

サイズ選びについて

リジットデニムを選ぶ際、気になることのひとつは「洗濯による縮み」でしょう。しかし、注意すべきは丈の長さで、ウエストは一時的には縮むものの、履いているうちにまた元に戻ります。

筆者自身、購入時にそのように説明され、実際にウエストは洗濯後には一時的にきつくなったものの、履いている内に元に戻りました。ただし、先述の通り、やはり丈は縮んで短くなります。

その為、履けるサイズギリギリをチョイスし、スキニーのようなタイトなシルエットを狙う事も可能です。ただしノンストレッチですから、履き心地とシルエットはトレードオフで、とりわけ履き始めは苦行のような日々を味わう覚悟が必要で、あまりオススメはしません。

ともあれ、ジャストサイズでもしっかりとこのジーンズで持つシルエットの美しさは出ますから、自然なサイズ感がいちばん品のある着こなしではないでしょうか。

ちなみに筆者は通常27インチがジャストサイズですが、フィッティングを重ねた結果、結局このジーンズもまずまず無理なく履ける27インチを選びました。それでも、ウエスト周りには多少ゆとりがあるものの、裾は細く足首にはそれほど余裕はありません。

また、履き始めはリジット特有の硬さから履き心地はそれなりにタイトですが、履いているうちに身体に馴染み、柔らかくなります。ですから、まずは身体に馴染むまで、多少動きにくいと言って、タンスの肥しにしないことが大切です。


(無理のないジャストで履いたシルエット)
http://zozo.jp/sp/shop/apc/goods/2420273/

大人ならば、一本は長く使える「高品質デニム」を

今や3000円以下でも容易に手に入るジーンズ。しかし時間が経つにつれ、薄いストレッチ素材は型が崩れ、チープさが目立つようになります。使い捨てのようなジーンズが溢れる中、手間暇をかけられ作られた本格ジーンズは、やはり歴然とした違いがあるのです。

ドレス=高価ではありません。が、またそれは同時に、カジュアル=安価でもないという事も意味します。カジュアルアイテムにこそ長く使える良質な一品を選ぶことで、そこはかとない気品と説得力が生れるものです。

そう、大人ならば長く使える上質なジーンズをまず一本持つべきなのです。2万1600円(税込)


(写真はプチニュースタンダード)

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2019.01.10