【事業分析】ステュディオスを擁するTOKYO BASEは売上1000億円を達成できるか?

STUDIOUSやUNITED TOKYOを運営しているTOKYO BASE。良くも悪くも話題性のある企業ですが、CEOである谷社長は以前1000億の売上を上げるために「1%のコアなファンを大切にする」という旨の発言をされています。

では、「99%の人に嫌われても、1%のコアなファンを大切にする」とはどういう事なのか。その方針は上手くいっているのか。決算書を基に見ていきたいと思います。

現在TOKYO BASEは成長しているのか、マーケットはどこか

まずTOKYO BASEの現在の売上高を見ていきましょう。2018年2月末時点でのTOKYO BASEの売上高は128億円。売上高は毎年成長し続けているようです。

このように、直近3年だけを見ても売上は毎年大幅に増大しています。実は、直近の四半期決算では売上が伸びずに株価のストップ安が起きる事態も起こっているのですが、四半期ごとの売上のグラフを見るとTOKYO BASEは明確に秋冬に強いブランド。今期の売上が2018年を超えるかどうかは今後の売上次第という事になりそうです。

この図のように、今までは毎年売上の山がどんどん大きくなっていましたが、今後この山を更に大きくしていく事はできるのでしょうか。それを確認するためにも、経済産業省の出した2020年時点の推定マーケットの大きさを見てみましょう。

http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/creative/fashion_gyoukyou_gaiyou.pdf

図のピラミッドの一番上から、ハイブランドが位置する「ラグジュアリ層」日本のアパレルブランドの多くが位置する「アッパーミドル層」ファストファッションが位置する「ローワーミドル層」、「その他」に分かれています。アッパーミドルと呼ばれる部分のボリュームが大きいのは日本独自の特徴と言えそうです。

日本の市場規模は洋服、アクセサリ、化粧品などすべて含めて19兆円ですが、その内の洋服の市場規模は9兆円ほどのようです。日本市場は「ラグジュアリ」「アッパーミドル」「ローワーミドル」がまんべんなく存在していますので、仮に3分割すると、各市場ごとに約3兆円の市場規模になります。

TOKYO BASEはどの市場に向けて商品を提供しているのか見てみると、ラグジュアリブランドとファストファッションの中間層であるアッパーミドル層をターゲットにしているようです。

これらの情報を一言でまとめると、TOKYO BASEは「3兆円規模のアッパーミドル市場に向かって1000億円の売上を目指しており、現在売上が128億円である」ということになります。

1%のファンを大切にするという意味とは?

TOKYO BASEのターゲットは服にこだわりを持つアッパーミドル層ですが、ファストファッションを購入するローワーミドル層より絶対数が少ない事は言うまでもありません。そしてTOKYO BASEの目標を見ると、売り上げ構成のイメージはSTUDIOUS、UNITED TOKYO、そして今期から始まるPUBLIC TOKYOの3ブランドで300億ずつの売上を上げるという計画のようです。

主力事業であるSTUDIOUSを例にとると、前期の客単価は実店舗で2.8万円、ネットで0.7万円です。仮に実店舗とネット販売が半々程度になるとしても、実店舗で必要な売上は150億円。客単価が将来的に少し上がって3万円だとしても、1回売り切り型のビジネスをしてしまうと、毎年50万人の顧客が必要になってきます。企業規模を考えると毎年50万人の顧客はどうあっても現実的ではありません。そこで、谷社長は1%のコアなファンを大切に。つまり、リピーターを大事にしようと発信しているのだと思います。

アパレル業界は、下手をしてしまうと一度商品を売ったらその後の関係が途絶える、売り切り型のビジネスになってしまうことも多いと思います。そのような業界において、このリピーターを増やしていこうとする戦略自体は的確なものだと思います。フレンドリーな接客などはその目的のための方法なのでしょう。

現在リピーターの数は増えていっているのか。

リピーターを増やすというTOKYO BASEの方針が分かりました。では、この方針は成功しているのでしょうか。TOKYO BASEは各ブランドの売上高と客単価を開示してくれていますので、それを使って検証してみたいと思います。TOKYO BASEはアパレル企業ですので、「客単価×購入回数=売上」という式が成り立ちます。そして、この式は「購入回数=売上÷客単価」という風に組み替えることも可能です。それを3年度分計算した図が下記になります。(ST=STUDIOUS、UT=UNITED TOKYO)

一番下が購入回数です。ファンが増えると、この購入回数が増えていくはずです。この購入回数をグラフ化してみましょう。

これを見ると、STUDIOUSの実店舗の購入回数が昨年に比べて落ちていることが分かります。これに対してネットでの購入回数が非常に伸びています。しかし、ネットでの購入回数が増えることと、ファンが増えるという事は同義ではありません。特にネット販売の大多数をZOZOTOWNに依存しているTOKYOBASEは、その逆の方向性になる危険性があるのです。

ファン化の為にはネットは市場が異なる。実店舗への注力が必要?

では、TOKYO BASEが消費者をファン化させるためにはどこに注力していけばよいのでしょうか。筆者の見解ですが、注力するべきは実店舗です。消費者がファンになるとは、継続して買い続けてくれる人になります。その会社の商品を、自分の友人にも紹介してくれるようになる人だと考えています。

そして、このファン化とネット販売は、実はあまり相性が良くないように感じています。というのも、ネット業界で求められるものは「便利さ、手軽さ、簡単さ」です。これは例えば、メルカリがヤフオクのシェアを一気に取ってしまったように、より便利なサービスが生まれると、ユーザーは一気にそちらの方に流れてしまうことを意味します。ユーザーは便利だからそのサービスを使っている。これではファンになっているとは言えません。

一方ファン化とは、「自分はここの商品が好きだ!」「自分はこの販売員が好きだ!」という理由で購入を続けてくれる人を増やすということです。その為に必要なこととは、例えば客のワードローブの中身をリサーチし、好みを把握し、お客がより理想の自分に近づけるような商品の提案をしてくれること。これは手軽でも便利でもなく、むしろ手間のかかる方法であるため、現在のところ店舗でしか実現はできない分野です。早晩ZOZOがお任せ定期便を更にアップデートしてこれに近いサービスを開始するかもしれませんが、今はPB商品に注力しています。いち消費者としての意見ですが、ファン化を推し進めていくためにはこのような「実店舗によるリアルでの体験」が必要なのではないかと思います。

そして会社としてファンビジネスを目指すというのであれば、例えば無印良品の「MUJI passport」などのように、「ファン化がなされているか?」を会社として把握するための仕組みが必要でしょう。企業がファン化の為の取り組みの成果を視覚化し、明確に会社としての方向性をそちらに示すことがファンビジネスに転換する上では重要かと思います。上記は一例でしかありませんが、ファン化に向けてどのような取り組みを行ってくるのか。今後注目していきたいと思います。