【企業分析】大衆化が進むZOZOTOWNはやがてあの大企業とぶつかる?

ZOZOといえば、社長のキャラクターも相まって、現在日本のファッションECサイトで最も広く知られている企業の一つです。本業自体は順調といってもいいでしょうが、「ZOZOARIGATO」などの打ち手によって、多くの論争を引き起こしています。

その内容については多くの記事がネットでアップされていますので、この服ログの記事においては、「ZOZOのユーザー層の変化」「財務データから見るZOZOの現在地」という、少し違った切り口によってZOZOを見ていきたいと思います。

ZOZOのユーザー層が変化してきている

まず一つ目の切り口、「ZOZOのユーザー層の変化」です。ZOZOは2004年にZOZOTOWNを創業、2007年に上場してからも成長が止まらない企業ですが、それを示す一つのデータとして、ユーザー数が伸び続けているということがあげられます。

アクティブユーザーとは、ZOZOにユーザー登録をして1年以内にZOZOで商品を購入しているユーザーのことです。この推移を見ると、ユーザー数はここ数年で一気に伸びている印象を受けます。しかし、これだけ急激にユーザーが増加すると、ユーザーの中身は変化します。

そこで今回は、手に入る最も古い情報である2008年3月、ユーザー数が急激に増加する直前である2015年3月、そして最新のデータである2018年12月のユーザー層を見て、「ZOZOのユーザーはどのように変わったか?」について見てみましょう。まずは2008年3月です。

goo.gl/Q5681Q

ユーザー数は約82万人。平均年齢27歳で、男女比率は半々でした。次に2015年のデータを見てみましょう。

goo.gl/spwQKs

この時のユーザー数は約350万人です。平均年齢は32.3歳、男女比で女性客が60%となっています。最後に最新のデータ(2018年12月)のデータを見てみましょう。

goo.gl/5fJdfT

ユーザー数は800万人。(アクティブユーザー600万人のほかに、ZOZOにユーザー登録をせずに購入するゲスト購入者が200万人ほどいます。)平均年齢は33.2歳、男女比が女性67%となっています。このようにデータを並べると、ZOZOはユーザー数の増加に伴い、「女性ユーザーが大幅に増加した」ように見えます。では、女性ユーザーが増加した他にはどのような変化があったのでしょうか?

データを使ってユーザー層の変化をより明確に

ZOZOのユーザーの購入の仕方はどのように変化したのかを見てみます。まず1回の出荷単価を見てみましょう。

一回の出荷単価は年々減少しています。これは、「ユーザー数の増加に伴い、ユーザーは単価の低いものをZOZOで購入している」ことを示しています。次に年間購入点数を確認してみましょう。

これに対応して、年間購入点数が大幅に増加しています。この事から、「ユーザーは単価が低い商品を購入するものの、その購入回数が大幅に増加している」ということが分かります。

そして、会員の年間購入金額を確認すると、2007年からほぼ変化していません。このことから、ZOZOはユーザーが増加することで年間の購入金額に大きな変動はないものの、その購入行動が「安く、何回も購入する」という方向性にシフトしているのが非常によく分かります。

ZOZOは「安いブランドが台頭」してきているとよく言われます。「安いブランドが増加したため、ユーザー層が変化した」のか、「ユーザー層が変化したから、ZOZOが単価の低いブランドを積極的に増やしていったのか」どちらが先かは分かりませんが、このユーザー層のデータを見ていると、「安いブランドの台頭」は、ユーザー層の変化にマッチしたものであると言えます。

ユーザー層の変化から見ると、ZOZOARIGATOは非常に合理的

そして、ZOZOのユーザー層が、現在急激に変化している状況下にあると理解すると、現在物議を醸しているZOZOARIGATOをスタートした理由がおぼろげながら見えてきます。

まず、ZOZOのユーザーは大幅に増加した結果、だんだんと購入単価が下がり、購入回数が増えている事から、「ユーザー層は大衆化してきている」と言えます。このことから、安く買えるという事は強烈な訴求効果を及ぼすと思います。

ZOZOからすれば、これによってさらに購入回数が増えたり、購入頻度が下がってきた高価格帯の商品が売れたりすればOKなのです。これに対して、出店停止をしているオンワードの行動もまた合理的でしょう。オンワードが取り扱う商品は比較的高価格帯の商品が多い印象があります。

オンワードから商品を購入するユーザー層は「いいモノを購入したい」のです。オンワード販売チャネル別売上高で、「百貨店」が圧倒的に多いことからもそれが読み取れるのではないでしょうか。

goo.gl/1YyDUU

このように、ZOZOは自社のユーザーに合わせて打ち手を打っている為、オンワードなど、出店を停止している企業が自社のユーザーに合った打ち手ではないと判断するのも当然でしょう。ZOZOは今後も自社のユーザーに合わせた打ち手を打っていくでしょうから、それに対しての対応を迫られているのは出店企業側なのではないのかなと思います。

ZOZOのユーザーファーストの打ち手の結果とは?

上記のように、ZOZOはユーザー層の変化に合わせた打ち手を打ってきている事が確認できました。では、2つ目の切り口である「ZOZOの財務データから見るZOZOの現在地」はどうでしょうか。まずは売上を見てみましょう。

ZOZOの売上は成長を続けていますね。ZOZOの取り扱っている商品はファッションアイテムですので、秋~冬にかけて重衣料が売れる傾向にあります。ZOZOにとって今期(10~12月)は4半期の中で最も売上が取りやすい3カ月なのですが、様々な打ち手の結果、売上は過去最高額になっています。

これは売上だけでなく利益に対しても同じだと言えます。「事業を行った後に残る利益」である、「営業利益」について見ると、こちらも過去最高額を計上しています。

2018年の営業利益は売上が増加しているにもかかわらず落ち込んでいたのですが、これは「ZOZOSUIT」の無料配布に原因があると思われます。ZOZOは、プライベートブランドである「ZOZO」を広めるために、大きな資金を投じてZOZOSUITの無料配布を行っていたのですが、ZOZOSUITがあまり利用されなかった為、1年も経たないうちに、ZOZOSUITにかかる無料発送を取りやめるという決定を行いました。

ZOZOはこのプライベートブランドに非常に強い自信を持っていたはずですが、思ったよりユーザーに受け入れられないと分かった時点ですぐに打ち手を変えるこの姿勢はものすごいものがあると思います。結果として、この決断がZOZOの営業利益を大幅に回復させています。この徹底的に「ユーザーファースト」を貫く姿勢がZOZOの強みなのかもしれませんね。

今後ぶつかっていく相手はAmazonではないか

ZOZOは大衆化しているのではないかと思います。ではZOZOが今後どうなるのかというと、ECサイトとして既に最も大衆化しているAmazonという大きなライバル企業と改めてぶつかるのではないかと考えます。

現在Amazonは、「Prime Wardrobe(プライムワードローブ)」という、プライム会員は洋服を試着して気に入ったら返却できるというサービスを展開し、本格的にファッション業界に乗り出そうとしています。

goo.gl/mhyYbK

このアマゾンのプライムワードローブは、ネット通販の弱点である「サイズの問題」を、「自宅で試着して返品は無料」という方式で解決しようとしています。Amazonがこのようなサービスをもって日本のファッション市場を取り込もうとする動きは、ZOZOにとって大きな脅威なのではないでしょうか。

また、「アマゾンファッションウィーク」などを見ると、実はAmazonは日本の新興ブランドの開拓にも非常に積極的なことが見てとれます。アマゾンファッションウィークの初参加ブランドを見てみると、なんとAURALEEやJieDa、RAINMAKERなど、ファッション好きにはなじみのブランドが並んでいます。

goo.gl/Po2YjY

他にも、「アマゾンファッション」というサイトも開設されています。Amazonがファッションに非常に力を入れていることがお分かりになるかと思います。

goo.gl/qY92VD

ZOZOが戦わなければならない相手はこのような相手なのです。そのため、ZOZOは今後も自社のユーザーに合わせた打ち手を打ち続けるでしょうし、打てなければAmazonに飲み込まれてしまう可能性も十分あります。

そう考えれば、ZOZOARIGATOはユーザーに対して非常に的確なアプローチを行っている分、ユーザーの囲い込み効果から、Amazonへの対抗策としても機能するかもしれません。今後、ZOZOの打ち手やユーザーファーストの姿勢を、「Amazonなどへの対抗策ではないか?」というような目で見てみると、少し違った見方ができるかもしれません。

 

やなぎば

この記事を書いた人

やなぎば

身長168cm 体重63kg 靴26.0cm

「オシャレわかんねぇよ!」と叫んでいた所MB理論と出会いオシャレさんを目指し中。友人の「オシャレになったねー!」の一言が今の原動力です。