大人の夏を上品に演出するcosのシャツを徹底レビュー!

ファッションにおいて夏は特別な季節ですね。

ファッションアイテムで「スリーシーズンOK」という表現があることは、その裏返しとして、夏は“夏ならではのアイテム”があるということになります。本来的に大人っぽいアイテムであるシャツも、夏は半袖シャツに。

ただ、半袖だとカジュアル感が強くなるため、大人っぽさを確保するためには、デザインや色が地味なものになりがちです。そこで本稿では、“夏ならでは”の価値を積極的に獲得できる、大人のカジュアルシャツを「COS」で発見したのでご紹介します。

 シンプルだけど地味じゃない、絶妙なバランスのデザイン

COSはファストファッションでおなじみのH&Mグループの高級ブランド業態です。2014年に日本に進出してきて、今年5月にようやく3店舗目が銀座にできたばかり。ファッション感度の高い人には知られているものの、一般的にはまだまだ“知る人ぞ知る”ブランドです。

H&Mグループの生産背景を活用できるため、生地調達や製造工程のコストダウンを図られることで、高級ブランド並みの良質なアイテムを低価格で提供できる強みがあります。

今回ご紹介するシャツは、スタンドカラーです。商品名の「GRANDAD SHIRT」、グランダッドシャツ(グランパシャツともいわれます)は、スタンドカラーシャツの別名。レギュラーカラーシャツに比べるとカジュアル感があります。

ただ、このアイテムが一般的なスタンドカラーシャツと異なるのは、襟の部分が折りたたまれたようになっている点。なかなか見ないデザインです。首元は人の注目を集める部分です。ちょっとした違いですが、大きく印象は変わります。ここだけを見ると少々フェミニンですらありますが、ともあれカラーの部分にとってつけたような印象がなく、とてもクリーンな印象です。

もうひとつ、シャツの印象を大きく左右するのはボタンです。このアイテムはボタン穴が表から見えなくなっている比翼仕立て。見る人に大人っぽい(=ドレスな)印象を与えます。見えるのは一番上のボタンだけ。ボタン自体はプラスチック製で、実のところ高級感はないですが、色はシャツと同じ色なので、さほど目立ちません。ドレス?http://www.neqwsnet-japan.info/?p=1810

ただしよく見ると、シャツの生地よりわずかに薄い色の糸によるバータックが入っています。バータックとは棒状の縫製のことで、本来はジーンズの補強などに使われることが多いのですが、このアイテムのようにファッションのポイントとして使用されることもあります。

フロント部分がシンプルになりすぎず、それでいてカジュアルになりすぎない、大人の遊び心というべきデザインです。

 作りはゆったり、それでいてきれいめなシルエット

一般的なシャツの後身頃(背面部分)にはプリーツやダーツとよばれるものがあります。これは平面の布を立体的な体になじませ、動きやすさを確保するために必要なものです。

(参考:ボタンダウンシャツで一般的なセンタープリーツ)

その点、このシャツの後身頃にはプリーツやダーツがありません。その分、デザイン的にはドレス感が増しています。しかしその分動きやすさが損なわれているとも感じられません。後述しますが、生地自体の伸縮性が動きやすさを補っているようです。

商品名の「3/4SLEEVE」が意味するところは七分袖。七分袖の利点は、袖が長いぶん半袖よりもドレス感が増す上に、袖が肘のあたりにフィットすることです。半袖シャツの場合、鍛えていない腕の周りで袖がひらひらすると、細腕が強調されてカッコ悪いものです。その点、肘周りは腕よりも太く、袖のひらひらが低減されるため、よりカッコよく見えるのです。

加えてこのシャツは、デフォルトの状態で袖が折りたたまれています。袖は首元と並んで視線を集めやすい部分。袖が腕にきれいにフィットしているサマを、カジュアルながらも上品に見せる仕立てといえます。

なお、折りたたまれている袖を敢えて伸ばすとこんな感じ。丁寧にアイロンをかければ伸ばしても変ではないですが、敢えて伸ばす必要もないでしょう。なお、雨に濡れるなどして袖先が重くならない限り、折りたたまれた袖が自然に落ちてくることはありません。

裾は、前面が直線的にカットされた、シャープな印象のスクエアテイル。しかし背面はゆるやかにラウンドしており、屈んだ時などにベルト部分が見えにくいようになっています。

スクエアテイルはしばしば、上半身と下半身をくっきり切り分けるように見えるために足の短さを強調しかねないのですが、このシャツはもともとの着丈が若干長め(Sサイズで78cm)なので、そうした心配も無用です(サイズは筆者による実測値です。他も同じ)。

このシャツの身幅はSサイズでも54cmとゆったりめ。胸のあたりがややゆとりがあるように感じられるのは、西洋人の立派な上半身に合わせて作られているからでしょうか。

ともあれ、体型が自然に隠れるため、細身の方にもふくふくした方にも着やすい作りです。それでいてルーズな印象にならないのは、上述の通り背面や袖、裾といったポイントポイントの見せ方がクリーンであるためでしょう。つまりこのシャツは、着やすい上にシルエットがきれい、というスグレモノなのです。

 生地はカジュアルながら、珍しい素材と色

生地についてです。フカフカした独特のマットな触感です。特に艶があるわけではなく、ドレス感があるものとはいいがたいですが、夏用のシャツでよく見かけるリネンやシアサッカーとひと味違うおもしろさがあります。表示上はコットン75%、ポリアミド22%、エラスタン3%。ポリアミドとはナイロンのこと、エラスタンとはポリウレタンの一種です。

コットン以外の化繊が入っていることで実感できる価値は、大きく2点。ひとつはシワがつきにくいこと。

シワはカジュアルな印象を強めます。このシャツ自体は重いわけではないのですが、テロンとした落ち感があり、コットン100%に比べるとシワがつきにくくなっていて、クリーンな印象を保つのに役立っています。もうひとつは、わずかながら伸縮性があること。上述の通り、このシャツには後身頃にプリーツやダーツがないものの、生地自体の伸縮性により、着やすさ、動きやすさが確保されています。

また、このシャツは白と青の2色展開なのですが、筆者はどちらかといえば青をオススメします。白も決して悪くないのですが、原色より少しだけダークトーンのこの青は独特で、ほかのブランドを見渡してもあまり見ない色です。落ち着いた印象ながら地味にならない点で、より魅力的です。

 サイズ選びにご注意を

COSの表記はヨーロッパサイズで、日本のものより大きいため、注意が必要です。筆者は身長178cm、体重64kg。日本のメーカーのシャツであればMかLを着ていますが、このシャツはSでほぼちょうどぴったり(肩幅44.5cm)です。

ちなみに今回ご紹介したシャツは8900円(税込)。夏のセールを経た後だと、少しお高く感じられるかもしれません。しかし実際に手に取って見ていただければ、他のブランドであれば1万円を超えてもおかしくないであろうクオリティを、実感していただけると思います。

上品なカジュアル感で大人の“脱地味”を

シンプルをもってよしとされていた「ノームコア」から、トレンドは“脱地味”に向かっています。オシャレ初心者の“脱地味”は、いきなり極端にハンドルをきるのではなく、洋服を構成する3要素、つまり「デザイン」「シルエット」「素材」に少しずつ丁寧に要素を加えていくのが良策といえるでしょう。

このシャツには奇抜な派手さはないものの、上品な“脱地味”を図られる点で、とてもオススメです。夏だからこそ、夏ならではのアイテムを楽しみましょう!

EQ03

この記事を書いた人

EQ03

身長178cm 体重64kg 靴27.0cm

洋服を“食”と共に、「コミュニケーションを最適化するためのツール」と位置付けています。物産展マニア。国内外を問わず、地域・人に根差した物語性のあるモノ・コトに惹かれます。コーディネートはワイルドよりもきれいめを。