【言葉で学ぶファッション】服を考えるファッション本3選

「おしゃれなんてよくわからない」「かっこいいやつは、やっぱりセンスがあるんだよな」。そう思っている方が大半だと思います。実際にアパレルの店員は「うちの服はおしゃれな人に着てほしいので、おしゃれじゃない人は買わなくていい」といったスタンスをとっている店もゼロではありません。

また、デートに着ていくためにファッション誌を参考にしても、掲載されている服は「なんとなく」かっこいいのはわかるけれど、自分が着るイメージがわかないえうえに、高価なものばかり。そんな、おしゃれをすでに諦めている人にこそ読んでほしい本があります。今回は、感覚や写真でファッションをみていくのではなく、「言葉」で考えていくファッションの本を紹介します。

ファッションは最高の自己啓発……!?

MB・著『幸服論 人生は服で簡単に変えられる』(扶桑社)

「おしゃれは論理で説明できる」。こちらはメンズファッションバイヤーのMB氏が「おしゃれになる」のはどういうことかを対談形式で語ったもの。まったくおしゃれに興味のなかった青年が、おしゃれによってどんどん自信をつけて思考が変わっていく様子が描かれています。4章から成り、具体的に「どんな服を着れば最速でおしゃれに見えるのか」がよくわかる内容であることもさながら、服を着ることによって「内面」が変わっていく、ということがよく表れています。

第1章では、「おしゃれ」になるとどう変化するのかが書かれています。特におしゃれに興味のない人は、「おしゃれになる必要なんてあるの? 着たい服着てダメなの?」と思うかもしれません。もしくは「おしゃれって難しい」、そんな誰もが一度は考えてしまう思いに応えてくれる内容となっています。服を変えることは「ただおしゃれになる」だけではありません。おしゃれになれば、場に臆することがなくなります。「私なんかが〜」と卑下しなくなるだけで、どれだけの可能性が広がるでしょう。おしゃれをすると、こうしようと思った瞬間に実際に行動できるのです。つまり新しいことにチャレンジできるのです。

第2章では、ではどうやって外見を整えていけばいいかをレクチャーされています。街で振り返られるくらいのおしゃれは方程式がある、というのがMB氏の理論。実際に服を選ぶときは何を意識すればいいのかがすぐにわかり、試せるようになっています。

第3章では、ファッションによって思考がどう変わっていくかがわかります。おしゃれになることで行動が変わる。多くの自己啓発で結果がほとんど出ないのは、実際にやれることがわかりにくいからでもあります。これは良し悪しではなく、多くの人に届けるには抽象化をしなければならないから。しかし、服は誰もが着るもので、すぐに目に見えて実践できるものです。だからこそ最高の自己啓発ツールであり、それが人を思いやる他人目線の入り口になると。

第4章ではそうして思考が変わっていったなら、どうやって人生を変えるために行動していくのかが書かれています。ここでの理論は机上の空論ではなく、著者が実際に行って結果を出してきたこと。ファッションを入り口として、人生を変えるための手立てがわかるようになっているのです。

本書を読むと、ファッションはただセンスのいい人の趣味なんかではない、ということがわかります。服はただ着る物ではなく、思考を変えて、自信をつけるものだと。「たかがファッション」。そう思っている方、ファッションに興味がイマイチわかない人は、一読すると世界が変わって見えます。

もっとファッションに浸かってみたい!

祐真朋樹・著『祐真朋樹の密かな愉しみ』(マガジンハウス)

そうしてファッションによって自信がつき、服を好きになっていったら、一流の人がどんな服を買って、どんな思いで着ているのか。気になりませんか? こちらは有名スタイリスト祐真朋樹さんのエッセイブック。1つのアイテムにつき1つのエッセイが書いてあり、計100のエッセイからなる本。

今では香取慎吾さんともコラボしてブランドを運営したりと常にファッションの第一線で活躍する祐真氏が自身のこだわりを詰めて書いたもの。多くのファッション好きがこの本を愛読し、かくいう筆者もファッション好きの方から知った一冊。通常のアイテム紹介本とは異なり、あくまでも「エッセイ」なので、「そのアイテムをどこで買ってどんな思い入れがある〜」という個人的な体験が書かれています。

しかし、それはただのファッション好きな大学生なんかが書いたものではなく、超一流のスタイリストが何を思って、どう着ているのかがわかるということ。それは服を買うときに、あるいは着るときに自分は何を考えて着たいだろう、と考える指針にもなります。

「アイテムのことを知る」というだけではなく、服への造詣と愛が深まる一冊。1エッセイにつき2ページほどなので、寝る前の読書なんかにもおすすめ。

そもそも服とはなにか?

鷲田清一・著『てつがくを着て、まちを歩こう』(ちくま学芸文庫)

 

しかし、だんだんと「服好き」になっていくと、「自分の着たいものを着ればいい」「人と違うのがおしゃれ」とのめり込んで行きやすいもの。この本は「それでいいの?」と、ちょっと冷静にさせてくれるものです。さきほどはファッション業界の人でしたが、こちらは「哲学者」の鷲田清一氏の話。通常、学者というのはファッションは二の次、というようにないがしろにされがちな分野です。しかし、この鷲田氏は本書のなかでこういいます。

「ファッションにぜんぜん気がいかないひとはかっこよくないが、ファッション、ファッション……とそれしか頭にないひとはもっとかっこわるい。このふたつ、一見反対のことのようで、じつは同じ態度を意味している。他人がそこにいないのだ。あるいはじぶんがどのように映っているかという、そういう想像力の働きが、欠けているのだ」

ファッションに興味をある程度持つと、だんだんと自分の世界に入ってしまいがち。「自分はどう見られているんだろう」。それはただ臆病になることではありません。他人目線になって人を思いやることだと言います。ともすると、ファッションは自分目線になりがち。現にファッション雑誌はなぜそれがおしゃれなのか伝わらなく、扱っているものも一般の人にはなかなか手の出せないような価格帯のものばかり。実際にそういう雑誌に載っている服を見に行こうとすると、「無理やり買わされるのではないか」「自分なんかが入ってもいいのか」のようなプレッシャーのある店も少なくありません。

しかし、ファッションは何のためにあるのか、特に日本のファッションはそうした他人目線のものでもあった、と歴史や文化に基づいた知恵から、現代のファッションを考察しているのが本書。ファッションを生業としている人が考えないような、そもそもそれってなに?という入り口から、服の持つ深い意義を問うています。ですが、哲学者だからといって難解な口調なわけではなく、むしろ平易な物言いなのがこの鷲田氏の特徴。雑誌やビジネス書ばかり読んでいる人には読みにくいかもしれませんが、それでも全く読む気にならない、というような専門書ではありません。内容は深く、入り口はわかりやすく語られているので、ファッションをもう少し深く考えたい人にオススメ。

ファッションの深さは学べる

ファッションはどこか「感性」が大事で、おしゃれじゃない人はどうやって考えたらいいのか不透明な世界。でも今は本がたくさんあります。まったく「おしゃれ」ってよくわからなくても、「もうちょっと知りたい」と思っても、「本当にこれでいいの?」と思っても、考える媒体があまりありませんでした。

しかし、今は本があります。もし、実践していく中で少し疑問に思ったら。一度本を読んでみてはどうでしょうか? きっと服との付き合い方が変わると思いましょう。