恥ずかしながら、スーツに関心がなかった私はかばんも適当なもので済ませていました。量販店で売られているナイロン製で自立する1万円未満のもので。
実際、それでも困らなかったし、周りも同じようなものを使っていました。「スーツとはユニフォームのようなもの」このどこかで目にした言葉に出会ったときも、「そうだよなぁ」とくたびれてきたバッグを見てつくづく納得していました。ユニフォームだから遊ぶ必要はない、と。
そんなさなかでした。私がこのブリーフケースに出会ったのは。ある人から「5000円で買わないか? 使ってないんだ」と持ちかけられたのです。
私の返事はもちろん「買います!」でした。本当は憧れていたのです。数万円とするバッグの世界に。そしてそれを持って颯爽と歩く大人の姿に。
こうして幸運にも、私は名作フェリージのバッグを手に入れることができました。さて、この出会いで私のバッグ観はどう変わっていったのでしょうか。
愛鞄紹介
フェリージ「8637/DS BRFネイビー」7万1280円(税込)
頂き物で語るのもおかしいですが、よいバッグなので紹介させてください。おそらく服ログ読者の皆様も一度は目にしたことがあるでしょう。フォーマルバッグとして名高い「フェリージ」のブリーフケースです。
フェリージはイタリアのブランド。イタリア産の素材を多く使用し、縫製も国内で行う気骨あるバッグブランドです、
このブリーフケースは、およそ10年前から、ユナイテッドアローズの店頭にならんでいます。取扱がはじまった当初はなんと5万円台。以後主に為替の影響で上がりつづけ、現在にいたります。仕様や品質に大きな変わりはありません。
それでもなお、バーニーズニューヨークなどの高感度セレクトショップでは依然と取扱があります。もはやフォーマルバッグの定番と言っても過言ではないでしょう。では、何がこのバッグを定番たらしめているのか。
その答えに触れるまえに2つの素材について説明をさせてください。ご覧のとおりこのバッグは「ナイロン」と「レザー」から出来ています。まずはこの両者について詳しく見ていきましょう。
では1つ目、ナイロンから。
フェリージで使われているナイロンは「リモンタナイロン」です。生地メーカー、リモンタ社によるイタリア製のものを指します。極上のナイロンです。
ナイロンときいて侮るなかれ。たしかに通常のものではチープな印象になります。しかしリモンタナイロンは別格。あのプラダやグッチ、エルメスでも使われているほどの高級素材です。その魅力は多数……。
まず発色の良さが挙げられます。後述するイタリア製の革にも共通しますが、光沢のある美しい色の出方をします。くわえて強いハリ感。雑に扱ってもだらしなく伸びることなく、バッグのシルエットを綺麗に保ってくれます。
さらに「表情が変わらない」点もはずせません。ナイロンに経年変化はほぼなく、購入当初から高級感を保ってくれます。もちろん耐水性、汚れの付きにくさも備わっています。リモンタナイロン、バッグに使うにはもってこいの素材です。
2つ目はレザーです。フェリージ社製品の多くには「バケッタレザー」が使われています。これは「バケッタ製法」で作られたものを指します。「バケッタ製法」とはイタリアのトスカーナ地方に伝わるなめし製法です。
植物性タンニンを使い、時間をかけてゆっくりとオイルを染みこませてつくります。こうして出来たバケッタレザーには油分がたっぷり。経年変化するレザーの中でも表情の出方が圧倒的といわれています。
写真の持ち手のところをご覧ください。濃く深い色に変化しています。バケッタレザーは使うごとに色濃くなり、艶が増す特徴があります。このバッグは述べ1年の使用歴がありますが、特にケアをしていません。手の脂や使用の際の摩擦などでこのように変化してゆきました。
気負わず使え、エイジングも楽しめる、それがバケッタレザーです。
「品のよさ」「丈夫さ」「使い勝手のよさ」
「品が良い」今回このバッグを撮って改めて感じました。写真は購入から2年、使用歴述べ1年のバッグ。さらに購入1年目は日の目を浴びることなくクローゼットの隅で眠っていたそうです。譲りうけた当初から側面のレザーはひしゃげていました。
にも関わらず、このバッグからは品の良さを感じませんか。リモンタナイロンの美しいハリは新品と比べても見劣りせず。曲がったバケッタレザーは経年により生まれた艶を表面にたたえています。
最高峰のナイロンの表情を変えない性質と、至高のレザーの時の経過を美しくまとう性質。ふたつが補い合って、品の良さを保ってくれています。そう、この組み合わせは最強です。この先使い続けても洗練された印象は変わらないでしょう。
「雑に扱える」ところもポイント。私、革への水染みこそ気にしていましたが、他では特に思いやらず。米5kgなどの重い荷物も平気で入れていました。実はふたつ上の画像からそうだったのですが、荷物が増えても硬いタフな素材のお陰で、シルエットは保たれたままです。
6~8月の間は、スーツのジャケットを鞄に忍ばせておき、人と会う際に取り出して着るという使い方をよくしていました。さらに15インチのPCを入れたとしてもまだ大丈夫。リモンタナイロンのハリが、パンパンになりそうでも、品の良い緊張感を保ってくれました。
幅41×高さ32×奥行11cmのサイズには至るところに収納もあります。
また、意外とレザーが汚れにくい。写真は述べ1年使用での底面です。綺麗に経年変化だけを遂げています。気をつけたことといえば、「濡れた地面は避ける」程度。その程度の注意でこの表情です。
これには私も驚きました。普段目にすることがない部分ですが、艶々であると所有者としては嬉しいものです。バケッタレザーの豊富な油分が防汚効果にもつながっていると感じています。
さらに頑丈で丁寧な縫製のお陰で糸のピョン出しも一切なく、1年以上使い続けられています。ドレスなアイテムなのにガシガシ使って大丈夫。持ち主としては安心できるバッグです。
「使い勝手も良い」このバッグのポケット配置には本当に重宝しています。
たとえば正面の刻印レザーフラップの下にはファスナーポケットが。常備薬などを入れておくにはぴったりです。私は使い捨て用の歯ブラシを数本入れてあります。
内部にも大小さまざまなポケットが。中でも使い勝手の良いのが大ポケット。iPad mini2がすっぽり入る容量です。ネクタイを畳んで入れておくのにもちょうどいいです。
背面には大きなポケットが2つも。パスケースや財布をとりあえず入れておくのに便利です。駅の改札口やコンビニでのお会計時など、サッと任意のものを掴んで出せます。「こうだったらいいのにな」がひとつもないほど、このバッグは使い勝手がすばらしいです。
ロングセラーである理由、それは「品のよさ」「丈夫さ」「使い勝手のよさ」と3拍子揃っていたことにありました。非の打ち所は値段くらいでしょうか。
これからも使いつづけたい
私はこのバッグを使ってから、スーツ姿に自信が持てました。私のスーツ姿の先端はハイプライスなものに一変しました。靴もあわせてミハラヤスヒロに新調。すると、全体がより見栄えがするようになりました。
これは隙のないアイテムで視線が離れるため、高見えの効果が得られたのではないかと感じています。結果、自分が立派になった気がして自信も持てるように。
そのため「バッグと靴だけは良いものを使い続けたい」という考えを持つようになりました。このバッグは長く使っても品が損なわれません。靴も手入れを続ければ同様です。
買い替えのコストがしばらくかからないなら、高価なものも廉価なものも負担額は変わらない場合があります。だったら、長く魅力を保てる高価なものがいいでしょう。
私は「良いものを長く使いたい」と考える人にこのバッグをオススメします。使い込んでいくほどこのバッグのレザーは飴色に変化していきます。きっと見る人に「この人、このバッグで頑張って仕事してきたんだろうな」という「良き日」を感じさせるはずです。そんな素敵なバッグがフェリージの8637/DSです。
もし貴方がバッグの買い替えをお考えであれば、一度ご検討されてはいかがでしょうか。
おすすめバッグのまとめはこちらから↓