花柄の腕時計はありかなしか?レアセル「Flower Cover Watch」

“大人”の男は、多少高価でも一生モノの腕時計を身に着けるべき。そんな価値観を否定する気はまったくないのですが、洋服のコーディネートはあれこれアレンジするのに、腕時計を1本に固定してしまうのはもったいないのではないでしょうか。

本稿では、コーディネートにおもしろいアクセントを加えてくれる腕時計、レアセルの「Flower Cover Watch」をご紹介します。

これからのトレンドは、脱地味=装飾性です。

このド派手な花柄のビジュアルに、拒否感が先立つ人も多いと思います。その気持ち、わかります。こんな腕時計を紹介しようとすると、「おまえと違って俺は派手好きじゃない」と一刀両断される方もいらっしゃるでしょう。

しかし筆者は決して派手好きではありません。むしろ、ファッションについては保守派のつもりです。そしてこの腕時計は、むしろ保守派の方にこそオススメしたいのです。

ここ数年のファッションのトレンドは、「ノームコア」と呼ばれるものでした。これはスタンダードな普通の服を上手に着ることを目指すというもの。これは、筆者のような、本来的にファッションの冒険を好まない“保守派”にとっては、相性のよいトレンドでした。「“地味”なものをきちんと着てさえいれば、オシャレに見られる」と解釈できたからです。

しかし2017年夏現在、トレンドは“脱地味”に向かいつつあります。その方向性はいくつかあり、柄や色を足そうというもの、大きなサイズの服でシルエットを崩そうとするもの、着こなしを敢えてズラそうとするもの、と、アプローチの仕方は違えども、総じて“装飾性”が意識されているのです。

オシャレな大人の男であろうとする以上、自分の従来の方法論に固執する意味での“保守”ではいけません。トレンドにわけもわからず流されるのではなく、きちんと向き合うなかで、無理なく程よく寄り添う。そういう意味において“保守”であるべきなのです。

そしてこの腕時計は、正しい“保守”であろうとするファッション初心者にとって、とても使い勝手のよいアイテムなのです。

文字盤は派手でも全体は上品なビジュアルとデザイン

“脱地味”がトレンドになると言っても、いきなり地味な服がアウトになるわけではなく、「派手な服を着れば正解」という話でもありません。ノームコアは、それ自体が間違いのないスタンダード。そのスタンダードに、アイテム選びやコーディネートによって、どんな装飾性を、どのくらいのボリューム感をもって付与していくかがポイントになります。

しかし初心者にとって、こうした装飾性の調整は必ずしも容易ではありません。中途半端な取り組みはかえって残念な結果につながります。

そこで腕時計なのです。人の視線は体の先端に集中します。手首もまた、人の目につく部位のひとつです。だからこそ、手首は装飾する意味があります。ただ一方で、身体全体を俯瞰で見た時に、腕時計の占める面積は必ずしも大きなものではありません。また、シャツやパンツとは異なり、腕時計は着用の仕方そのものにバリエーションがありません。つまり、装飾性の獲得が容易な点において、腕時計は“脱地味”ツールとして活用しやすいのです。

実際、襟付きのシャツとスラックスの地味なコーディネートに、この腕時計をするだけで、大人っぽさを保ちながら、“脱地味”を達成することができます。気をつけるべきことがあるとすれば、このベースとなるコーディネートに、カジュアルな要素を付与しないこと。シャツではなくトップスにTシャツを着たり、パンツをスラックスではなくジーンズにしたり、とカジュアルダウンすればするほど、この色彩豊かな腕時計の存在感やアピール力が相対的に薄れてしまいます。

なお、この腕時計の写真をアップで見ると、確かにインパクトの強いビジュアルではありますが、文字盤のサイズ自体は直径36㎜。引きで見ると、意外と悪目立ちはしないものです。また、文字盤の厚さも約7㎜と薄く、腕の上で悪い意味での存在感を主張しません。

ちなみにこの花柄は、「レアセル」というブランドの代表的なデザインです。シャツやバッグなど、さまざまなアイテムで使われています。「レアセル」は東京に直営店がないため、首都圏在住の方でも知らない方が多いかと思いますが、この花柄を採り入れたアイテムは総じて人気が高く、例えばゾゾタウンで見ていても品薄だったり完売していたりすることが多いのです。

つまり、この花柄のビジュアルは多く人に愛されている実績のあるもので、“ポッと出のブランド”の“おたわむれ”で作られたものではないことを、念のためお伝えしておきます。

ベルトの巻き方と交換について

この腕時計のベルト部分には、ナイロンのNATOストラップが採用されています。1970年代に英国海軍が使い始めたとされるNATOストラップの特徴は、ジャケットの上からでも着用できるように、長めに作られていること。そのため、ふつうの時計と同じように巻くと、ベルトに余りができてしまいます。

余りの部分は折り返してストラップに差し込めばOK。

横から見るとこんな感じです。

ちなみにこのNATOストラップ、シンプルな黒で使い勝手がよいものですが、ナイロンである点がカジュアルに感じられる人もいるでしょう。そんな場合、残念ながら純正のものはありませんが、市販の革のベルト等に差し替える、という選択肢もあります。

レアセルの問い合わせ窓口に確認したところ、「ラグ幅(ベルトを取り付ける部分)は18.5mmとなっていますので、一般的に流通しています18mm幅のベルトでしたら問題なく差し替えが可能です」との回答でした。

ターゲットは花を愛でる女性です

冒頭で“脱地味”についてご紹介しましたが、どの方向性で“脱地味”を図るかを考える上では、「どんなシーンで誰に見られることを前提とするか」がひとつの基準になります。ファッションは自己満足のためだけでなく、むしろ見る人のためのものです。コーディネートを考える時は、自分が着たいものであるだけでなく、その時に目にする人のことを考えるようにすべきです。

この腕時計の特徴はカラフルな花柄。であれば、「花」を喜ぶ人に見てもらうべき。そう考えると、この時計を身に着けるべきシーンは自ずと見えてきます。つまり「女性と会う時」です。女性はかわいいものが好きです。少なからぬ女性が、花柄を「かわいい」と評するものです。そんな人に楽しんでもらうためであればこそ、この腕時計は着用する意義があります。

一方、この腕時計はビジネスシーンにはそぐわない可能性もあります。TPOはおしゃれの基本なので、そのあたりのバランス感は必要です。

花柄だけじゃない「レアセル」は一見の価値ありです

今回ご紹介した“花柄”は、「レアセル」の代表的な柄ではありますが、「レアセル」は“花柄”だけのブランドではなく、また腕時計だけのブランドではありません。上品ななかにも遊び心があるアイテムがラインナップされています(個人的には、ピーコートがとくにお気に入りでオススメです)。国内各地のセレクトショップで取り扱いがあるようですが、ブランドオンリーの店舗は、大阪、梅田駅前の「LUCUA osaka」に1店舗のみです(2017年7月11日現在)。大阪に立ち寄られた際には、ぜひ一度のぞいてみてください。

EQ03

この記事を書いた人

EQ03

身長178cm 体重64kg 靴27.0cm

洋服を“食”と共に、「コミュニケーションを最適化するためのツール」と位置付けています。物産展マニア。国内外を問わず、地域・人に根差した物語性のあるモノ・コトに惹かれます。コーディネートはワイルドよりもきれいめを。