インバーアランのカーディガンは一生もの。ニットを作る「職人の思い」が形に。

厚手のニットをお持ちでしょうか? 寒い日が続いており、既にコートは買ったというものの、厚手のニットカーディガンを購入された方は少ないと思います。オシャレの基本は差別化にあり、多くの方が持っているものとは別のものを持つことによって、格段にオシャレに見えるものです。今回は差別化が進む伝統的なニット「インバーアラン」を紹介いたします。

服好きなら誰でも知ってるインバーアラン。希少な時代に逆向したモノ作り

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1975年にスコットランドで創業されたハンドニットメーカー。大量生産では不可能なアイテムの生産をコンセプトに、悪条件の海で働く漁師たちが500年前に着用していたハンドメイドセーターの「アランセーター」を中心に生産をしています。

インバーアランがハンドメイドで作り上げたニットのクオリティは世界的にも最高峰と言われているほど評価が高いものです。その最高峰の評価がどのようにして生まれているのか? それは、イギリスの熟達した一人のニッターが、最低でも25000ステッチもの回数を重ねて1枚のニットを生産しているのです。

大量生産が当たり前となった今の時代でも、非効率な手作業と伝統的な工法を続け、製作時間は、なんと一枚約90時間もかかっています。ニットはそれぞれ、ニッターの自宅にて製造されており、オーダーした場合は、糸の調達から最終出荷まで約6ヶ月もの時間を要するとのこと。

セレクトショップのスタッフの方に聞いたお話ですと、数年後の受注生産を取り付けるのにも職人の確保と生産予定を取り付けないといけないため、すごく苦労するそうです。しかし、この制作期間を伺うと思わず納得するでしょう。

これだけでも気が遠くなるお話ですが、インバーアランの制作には、品質管理も徹底しています。約3000人の登録されたニッターはA、B、Cとランクごとに管理されており、オーダーされたニットの難易度が高いものほど、Aランクのニッターが担当しています。

インバーアランのニットに存在する「A3」「A1」などの番号は、実はニッターのランクが関係していたのです。最終チェックの段階で施される商品タグには、一つずつ、担当した職人のサインが入り、手掛けたニットの品質保証とハンドメイドの証明が行われています。

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もちろん几帳面な日本のセレクトショップに納品されるニットについては、全てAランクのものが納品されているようです。職人の管理は、もちろんのことニット自体の品質にも相当こだわっています。それもそのはずで、100年以上の歴史を持った英国国内で紡績されてきた伝統的なアラン糸を主流に使っています。

未脱脂ウールという油分を含んだ素材のため、小雨や雪などを弾く防水性や防風性が期待できます。洗濯はクリーニングが当たり前ですが、筆者は、EDIFICEで購入した際「できるだけ洗濯回数は少なくして下さい」といわれました。それは、この油分が落ちることを懸念しての発言であったのです。独特の艶感と重厚感が油分のおかげで感じられるからです。

圧倒的な保温性と防寒性。装飾性も兼ね備えた考えられたデザイン

インバーアランの最大の特徴は、サッと羽織ることで簡単にサマになるところです。それもそのはずで、圧倒的な存在感を感じられるデザインがハンドメイドの編みで表現されているからです。

このインバーアランの編み方は様々あるのですが、どれも印象的です。冬は黒系の服の割合がどうしても増えてしまいがちです。全体のコーディネートが地味な印象になってしまうことが多々あります。

そんな時も、インバーアランさえあればたとえ同じ黒を着ていたとしても、素材と編み目が持つ独特の存在感で、地味な印象がとれ、簡単にオシャレな印象を保つことができます。理由は、後述いたしますが、インバーアランのデザインの型は多数あり、筆者は首元にボリュームのあるカーディガンタイプをオススメします。

インバーアランは、重ね着がしやすいのも特徴です。ハンドメイドの目の荒い編み目のため、ニットには弾力と柔軟性があります。引っ張れば簡単に伸び、離せばすぐ元に戻ってくれます。この特徴を活かし、重ね着をした際も窮屈に感じず、快適に過ごすことができるのです。

そして、インバーアランは、意外にも極太のイメージとなりにくいです。アイテム単体で見てしまえば、着膨れ感を起こしそうな印象の商品。しかし、リブが必ずあり、袖先や裾先がキュッと絞ってあります。このお陰で中はゆったりしているのに、あまりだらしない印象とならないようにしています。

圧倒的なあったかさもインバーアランの魅力。12月の関東圏では、ユニクロのエクストラファインメリノセーターの上に1枚羽織るだけで、満足のいく温かさが得られます。筆者がこのように感じた日の気温は、最高気温は8度、最低気温はマイナス1度の晴れの日でした。やや風が強かったため、念のためマフラーを巻いていた程度です。

職人の「想い」は「重い」?デメリットもあるかも

ここまでインバーアランを褒めてきましたが、デメリットもあります。1つ目は、使える期間がやや短いこと。関東圏で12月頃から2月頃までの冬本番の時期だけと感じています。それは、保温性が高すぎるがゆえの使いにくさといえます。

特に、都内で生活する方々であれば、電車移動がほとんどであるため、暖房の効いた車内では脱げないと困ります。上述しましたが、カーディガンタイプをオススメするのはこういった理由です。

デメリットの2つ目は、風を通しやすいことです。重厚感があり圧倒的にあったかいインバーアランですが、網目が非常に荒いため風が入ってきてしまうのです。そのため、風が強い地方で利用されることとなると、使い方が難しいアイテムです。この弱点を補うには、風を通さない素材を中に重ね着することをお勧めします。

例えば革ジャンを中に着込むのもオススメです。デメリットの3つ目は、重さです。魅力の1つでもある重厚感が弱点にもなりえます。長時間着用していると、肩こりの原因にもなる位重さを感じます。筆者が重さを測ってみると、なんと約1.5Kgもありました。まさに、職人さんの「重い」が形になっているのだなと感じました。

10年以上着れること間違いなし!別注モデルの魅力

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筆者が購入したインバーアランは、EDIFICEとの別注モデル。購入は、7年程前で、一目惚れしたこの商品は、6万9120円(+税)でした。では、通常モデルと何が違うのかというと、主に3つの特徴があります。1つ目は、ボタン。些細なことかもしれませんが、ボタンはとても重要なデザインにおけるパーツです。

服全体の雰囲気をボタンが左右するといってもいいでしょう。通常版のインバーアランについているのは、木目のタイプ。インバーアランのカジュアル感を、さらに加速させています。そのため、デニムやチノパンを合わせてしまうと、途端に休日のお父さん感がでてしまうでしょう。

しかし、別注モデルは、ホーンを採用しており、スタイリッシュで上品に仕上げているので。上の写真でもチノパンを合わせていますが、休日のお父さんには見えません。

2つ目は、全体的にシルエットを細く作っていること。EDIFICEは様々なブランドの商品をタイトに仕上げるのが、とにかく上手。インバーアランは、実はシルエット作りが少し難しいです。しかし、この別注モデルでは、全てタイトに作られているため、都会的なスタイリッシュな印象を保つことができてしまいます。

実寸採寸したところ、袖丈84㎝、袖裾幅10㎝、着丈73㎝、身幅49㎝。筆者は身長184㎝、体重65kgの痩せ型体型で、少しタイト目ですが丁度いいサイズ感。サイズ表記は、Mです。インバーアランは、通常タイプも少し大きめにできているようです。

ただし、職人それぞれで個体差ももちろんありますので、試着後の購入をオススメします。筆者も当時EDIFICEで同じサイズのMのものとLを試着し、比べてから購入しました。

3つ目は、デザイン。ただのカーディガンではなく、ショールカラーカーディガンにすることで、首元にボリュームを持たせることで、小顔効果も狙っています。また、中央のボタン部分は、シングル仕立てではなく、ダブルにすることで、他のインバーアランにはないデザインを持たせており、差別化に繋がっています。

筆者はこのインバーアランと出合ってから、もう7年の月日が流れております。しかし、劣化するどころか、ますます魅力を増していると感じる今日この頃です。購入時は、コートが買える価格だったので決して安いものではありません。

しかし、職人がハンドメイドで制作したセーターと考えれば納得のいくお値段です。これから購入される方々が高いと思うか、安いと思うかは、その人次第かと思います。今ではこちらのモデルを購入することはできませんが、新しいモデルをコンスタントにリリースしているようです。

ただし、様々なタイプを制作しているため、毎年カーディガンタイプとは限らないようです。残念ながら2017年秋冬は、制作していませんでした。

EDIFICE以外にも細身を得意とし、リリースしているのは、同じベイクルーズ傘下のジャーナルスタンダードやSHIPSです。楽天などで過去のモデルも多数出品されていますので、探してみてはいかがでしょうか。