東海岸のプレッピーを再構築したKOE×トムブラウンのボタンダウンシャツ

日本のカジュアルブランド「コエ」が、アメリカを代表するデザイナー、トム・ブラウンとコラボする2017AWコレクションが発表になりました。このコラボ、2016AWから始まり、今期で3回目です。過去2回とも、発売してすぐに売り切れてしまうほどの人気。

ただうれしいことに、今回は新作のリリースに加えて、コラボ第1弾のアイテムも再入荷します。本稿では、その第1弾で発売されたボタンダウンシャツを取り上げます。

デザイナーであるトム・ブラウンについて


https://wear.koe.com/tb/16AW/about/

アイテムに触れる前に、トム・ブラウンについて簡単にご紹介します。ニューヨークを拠点に活動するトム・ブラウンは、ファッション界のオスカーと言われるCFDAファッションアワードを2度受賞するなど華々しい経歴をもつデザイナーです。

彼のスタイルは、古き良きアメリカを大胆に解釈し、現代風にアレンジすること。アメリカの有名私立大学における50~60年代のファッション・スタイル「アイビー」や、良家の子女(お坊ちゃんお嬢ちゃん)の「プレッピー」といったアメトラ(アメリカン・トラディショナル)をベースにすることを好みます。

日本のカジュアルブランド「コエ」とのコラボのきっかけは、実のところ「コエ」の母体となる会社による「トム・ブラウン」社への出資、という大人の事情のようです。ユニクロとセオリーのコラボと似たものを感じます。

しかし背景はさておき、トム・ブラウンの手がけたアイテムをリーズナブルに入手できるのはうれしいところです。


http://urx.red/Gqad

今回ご紹介するシャツでも、上述のトム・ブラウンのスタイルはしっかりと活かされているとことが見て取れます。それでは、細部を順番に見て行きましょう。

プレッピースタイルをベースにした上品なカジュアル感

このシャツの基本的なビジュアルを構成しているのは、グリーンをベースしたチェック柄と、白いダック柄。チェック柄はプレッピースタイルの典型的な意匠です。

そしてトム・ブラウンに言わせると、白いダックもまた「プレッピーの伝統的な象徴」「東海岸の美学の象徴」とのことです。
(参考動画:https://www.youtube.com/watch?time_continue=2&v=ygSWtLYh0q0

そもそもプレッピーとは古きよき時代の“学生”のスタイル。つまりここだけを見ると、“大人っぽさ”からは程遠いデザインと言えます。ただ同じチェック柄でも、アメカジを代表するアイテムであるネルシャツとは全く見え方が異なります。

色遣いの美しさだけでなく、巧妙なディテールにより、上品な印象に仕上がっているのです。

首周りは、商品名の通りボタンダウンになっています。ボタンダウンシャツもまた、トム・ブラウンが好む“アメトラ”を代表する意匠。一番上のボタンだけを開けて着ても、襟がだらしなく開かず、キリッとした印象を保ちます。

ちなみにボタンダウンシャツの襟のボタンを「あえて留めない」のがトム・ブラウンの流儀だそうです。曰く「ルールに反することをするのは、とても素敵なことだ」とのこと。実際にこのシャツも、ボタンを留めなくても違和感なく着られます。

ただ、このアイテムの公式ルックでは、モデルはきっちりボタンを留めているのですが。

袖口のボタンはひとつだけ。ボタンを留めると、手首周りはキュッとタイトです。また、肘周りは生地が切り替えになっており、デザイン的なおもしろさに加えて、動きやすさが確保されています。

裾はラウンドカット。着丈はSサイズで73cm、Mサイズで75cm、Lサイズで77cm。ニット等と重ね着した時に、裾がきれいに出る長さは確保されています。

なお、後述する通りこのシャツは厚めな生地でタイトな作りなので、重ね着した時に裾の両サイドがぐしゃっとならない点も優れています。

なお、裾の左脇のところに、「KOE」のブランドロゴ入りのガゼット(補強布)があります。これは実のところ機能的にもデザイン的にも不要ではないかと筆者は思います。裁縫用のはさみがあれば容易に取れそうです。

左の胸元にはポケットがあります。シャツのベースと同じ生地を斜め45度に傾けて重ねています。そのためチェック柄とダックも傾いており、デザインのちょっとしたアクセントになっています。

また、ポケットにはボタンがついています。「胸元の柄だけ傾いているのはポケットによるものである」と遠目にも違和感なくわかる仕様です。

ポケットのサイズは横10×縦11.5cm(筆者実測)と、やや小さめ。ちなみに筆者の手元にあるユニクロのYシャツだと横11×縦12.5cmです。デザインのアクセントを控えめに入れたいという作り手の意図が感じられます。

作り手の意思がこもるタイトなシルエット

続いてシルエットについてです。トム・ブラウンの特徴のひとつに「タイトめのシルエット」が挙げられます。厳密には、「ただ細身」というよりも「引き締まった男性の体を素敵に見せる」ことを前提としているようです。

このシャツも、昨今のトレンドの“リラックス感”とは無縁の、タイトな作り。肩幅はSサイズで42.4 cm、Mサイズで44cm、 Lサイズで45.6cmです。小数点以下の細かい刻み方に、作り手のこだわりが感じられます。

余談ながら、このようなタイトな作りとかわいいデザインのためか、このシャツに限らず、KOE×THOM BROWNEのメンズのSサイズを購入する女性は結構多いようです。

身幅はSサイズで49.3cm、Mサイズで51.8cm、Lサイズで54.3cm。窮屈なサイズではありません。

一方で、アームホールはかなり細め。肩幅も上述の通り狭く、また生地に伸縮性もないため、着用感はタイトです。見え方としては、カジュアルなデザインでありながら、大人っぽさを感じさせるシャープなシルエットになります。

なお、「タイトであるがゆえに着ていてストレスを感じる」ということはないですが、袖が短く感じられる点で違和感があるかも知れません。

袖丈は、Sサイズで60.7cm、Mサイズで61.5cm、Lサイズで62.3cm。この数字自体は特に短いわけではないのですが、肩幅が狭い分、袖の始点が上にあるため、結果として袖が短く感じられるのです。

身長178cm、体重64kgの細身の筆者がMサイズを着用して腕を下ろした際に、ちょうど手首が全て隠れる程度です。違和感なく着ることを優先するのであれば、普段より1サイズ上げることをオススメします。

背中の中央には、柄に埋もれて見えづらいですが、センターボックスがあります。機能的には、肩周りの動きやすさを確保するもの。実際に肩幅がタイトではあるものの、動かしやすくなっています。

ちなみに、このセンターボックスに加え、襟の後ろについている「バックボタン」も、アメトラの象徴的なデザインです。

アメトラらしいオックスフォード生地

素材は綿100%。これまたアメトラらしいオックスフォード生地です。このKOEとのコラボに限らず、トム・ブラウンが好んで使うものです。柄で生地感が若干わかりづらいですが、発色の良さや触感からも、安っぽさは感じられません。

ちなみにアメトラではドレスなスーツスタイルにもオックスフォードシャツを合わせます。
※ドレスとカジュアルについてはこちらをご参照ください。http://www.neqwsnet-japan.info/?p=1810

ボタンはプラスチック製。正直なところ、ユニクロのドレスシャツのボタンに見られるような「貝ボタンに印象を近づけよう」という執念めいた光沢感はありません。それでも、「チープ感が出ないように」という姿勢はうかがえます。

また、カジュアルなボタンダウンシャツのボタンは、しばしば大きなサイズで存在感を主張しますが、このシャツのボタンは小さめで、悪目立ちしません。

ケアについてです。弱めの水流での単独洗いを推奨です。乾燥機はNG。また、色落ちに関する注意書きが強調されています。ほかのものと一緒に洗った時の色移りの可能性や、摩擦による色落ちリスクに加え、そもそも加工の特性上、水洗いやクリーニングを繰り返す中で、色が多少薄くなるとのことです。

筆者が10回程度着た限りにおいて、特に色落ちは感じられません。しかしできるだけ長く着たいので、大切に扱いたいものです。

余談ながら、アイロンは中温推奨となっていますが、トム・ブラウンは「洗いざらしのシャツをアイロンをかけずにそのまま着る」のが流儀とのことです。ただしそれはスーツとのバランスの中で「完璧すぎると退屈な印象になってしまう」から。

このシャツは総柄なのでシワは目立ちにくいですが、カジュアルなデザインのシャツに、さらにシワというカジュアルな要素を付加することを、筆者としてはオススメしません。

色柄の魅力が上品に伝わる着こなしを

このシャツは巧妙なディテールやタイトなシルエットできれいめな印象に仕上がっているため、1枚で着ても全然問題ありません。とはいえ、多色遣いのチェック柄と、ダックのかわいい存在感はなかなかのもの。見る人によっては、驚かれてしまうかもしれません。

まずはシンプルな上着やニットと組み合わせて、コーディネートのアクセントにするのが、間違いない使い方と言えそうです。

価格は8532円(税込)。シャツ1枚のお値段としてお安くはないですが、トム・ブラウンの手がけたシャツが1万円以下で手に入ると思えば、実にリーズナブルと言えるのではないでしょうか。

このコラボのコレクション、10月12日にオンラインで先行予約が始まり、10月19日にネットで、20日に店頭で発売開始です。ほかにも「ベーシック」とは一線を画したおもしろいアイテムが並んでいます。

まずはラインナップだけでも見ていただきたいところです。

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【2019】おすすめメンズシャツを60点レビュー!あなたならどのシャツを選ぶ!?

2018.11.01
EQ03

この記事を書いた人

EQ03

身長178cm 体重64kg 靴27.0cm

洋服を“食”と共に、「コミュニケーションを最適化するためのツール」と位置付けています。物産展マニア。国内外を問わず、地域・人に根差した物語性のあるモノ・コトに惹かれます。コーディネートはワイルドよりもきれいめを。