ハリウッドセレブ御用達のブランド「トム ブラウン ニューヨーク」をご存知でしょうか。東京であれば伊勢丹メンズ館や青山に店舗を構えるこのブランド、シャツ1枚の価格が5万円ほどします。
そんなトム・ブラウンの手がけたシャツがアンダー1万円で購入できる、日本のブランド「KOE」とのコラボシリーズ。その中から今回は、ベーシックなボタンダウンシャツをご紹介します。
トム・ブラウンの目指すボタンダウンシャツのイメージとは
アイテムに触れる前に、トム・ブラウンについて簡単にご紹介します。ニューヨークを拠点に活動するトム・ブラウンは、ファッション界の数々の賞を獲得している、実力派のデザイナーです。
彼のスタイルは、古き良きアメリカを大胆に解釈し、現代風にアレンジすること。アメリカの有名私立大学における50~60年代のファッション・スタイル「アイビー」や、良家の子女(お坊ちゃんお嬢ちゃん)の「プレッピー」といったアメトラ(アメリカン・トラディショナル)をベースにすることを好みます。
さて、そもそもボタンダウンシャツとは、馬に乗って行うスポーツ「ポロ」の選手が着ていたシャツが元になっています。風で襟がバタつかないようにボタンを留めているのを見た、アメリカで最も歴史のあるブランド「ブルックス・ブラザーズ」の社長が、19世紀末に製品化したのが起源。つまり100年以上にわたり愛されてきた、アメリカの伝統的なデザインなのです。
そんなわけで、トム・ブラウンが手がけるシャツも、ほとんどがボタンダウンシャツです。特徴は、すっきりとした上品なデザインでありながら、全体的には堅苦しくなり過ぎない印象に仕上がっている点。
ピシッとしたスーツに合わせて、ボタンダウンシャツをラフに着る、というスタイルを好むのだとか。
その一例が襟のボタンです。もちろん、留めて着ても良いのですが、トム・ブラウン自身の流儀は、敢えてボタンを外して着るというもの。曰く「ルールに反するのはとても素敵なことだ」。
そんなわけでこのシャツも実際にボタンを外してみても、程よい襟の開き方で違和感なく着られます。
また、スーツに合わせて着ても違和感がないように、襟の後ろ、“襟腰”の部分も十分高さがあります。
その他にも、トム・ブラウンの“本家”のブランド「トム ブラウン ニューヨーク」におけるボタンダウンシャツは、「名作」として愛されるだけのことはあり、様々な部分において行き届いた作りになっています。一方で、今回ご紹介するシャツには、そこまで期待することはできません。
そんなわけで、ここではまず“本家”のシャツにはない、KOEとのコラボシャツ独自の特徴的な部分を2点ご紹介します。
1つは袖周りのデザイン。販売サイトの売り文句では「トムブラウンのアイデンティティでもある、袖のカーブの切り替えは機能性も考えられたデザインになっています」となっています。
筆者の認識する限り、このデザインが「トムブラウンのアイデンティティ」とは思えないのですが、少なくともKOEとのコラボシリーズのシャツは全て、このデザインが踏襲されています。
「機能性」という点では、確かに腕周りは動かしやすいです。シャツで「腕が動かしやすい」のは当然のことと思われるかもしれませんが、このシャツは後述の通り、かなりタイトなのです。
もう1点。脇の裾のところにある「ガゼット」と呼ばれる補強布。ただこれは「補強」の機能より、「KOE」のブランドPRの目的だけにあるように思われます。オシャレの観点からは外しても差支えない部分です。
シルエットこそがトム・ブラウンらしさを最も感じられるポイント
トム・ブラウンのボタンダウンシャツの特徴のひとつにシルエットが挙げられます。その点においては、このシャツはかなり“本家”に近いものがあります。そのポイントは、上述しましたが「タイト」である点です。
「ボタンダウンシャツ」というアイテムは、本来的にシャツの中ではカジュアルな存在です。しかしながら、トム・ブラウンは上述の通り、スーツに合わせてドレスに着こなすことを前提に作っているのです。
※ドレスとは? こちらをご参照ください。http://www.neqwsnet-japan.info/?p=1810
肩幅はSで42.4cm、Mで44cm、Lで45.6cm。身幅はSで49.3cm、Mで51.8cm、Lで54.3cm。袖丈はSで60.7cm、Mで61.5cm、Lで62.3cm。
身長178cmで細身の筆者はLサイズを選びましたが、それでも脇の部分にグッと食い込んでくるようなタイト感があります。それでいて、よくよく見ると肩から背中にかけての部分だけ、生地が少し余って見えます。許容範囲ではありますが。
これはひとえに筆者の筋肉不足です。このシャツは体を鍛えた筋肉質な男性に最適化された作りなのです。逆に“体型難”の方には厳しい作りと言えます。
着丈はSで73cm、Mで75cm、Lで77cm。筆者が着た場合、スラックスのポケットが隠れる程度です。これも上述の通り、スーツに合わせて着ることを前提に、タックインして着てもきれいに見えることを目指したためです。
ただ、このシャツを着る際には必ずスーツと合わせなければならない、というものではありません。そもそもトム・ブラウンの思想は「型にとらわれず自由に着る」というもの。
一般的に、シャツを買う際に、重ね着等を前提として、裾に長さを求めて大き目のサイズを選ぶと、全体的なルーズなシルエットになりがち。その点で、このシャツのように裾が長くてもシルエットを崩さずきれいめに着られるボタンダウンシャツは、なかなかありません。
そんなわけで、サイズ的に合うのであれば、1枚あると重宝するアイテムです。
生地は“本家”と最も差のあるポイント
生地は、アメリカントラッドのボタンダウンシャツにおける代表的なオックスフォード。厚めで丈夫、若干の起毛感があります。
ただ、“本家”のボタンダウンシャツの場合、同じオックスフォードでも、指一本触れるだけで、素人でも違いがわかるくらいに質感が良いのです。
その点、このシャツの生地は端的に言ってユニクロと大差ありません。とはいえ、ユニクロ自体が驚異的なコスパで良質な生地を調達するブランドなので、「ユニクロと大差ない」=「質が悪い」ということでは決してないのですが。
2000円ほどで手に入るユニクロのシャツと、7000円超のこのアイテムが同じような生地感、というのは、ちょっと物足りないのが実感です。
ボタンについてはさらに物足りないところ。高級シャツにおいては一般的な貝ボタンではなく、プラスチック製です。ただ、光沢感のあるボタンにすることで、少しでも貝ボタンの印象に近づけようという姿勢は見て取れます。
また、ボタンが下手に悪目立ちしないように、小さ目のボタンが使われている点にも、最低限の配慮は感じます。
ケアに際しては洗濯機OK、乾燥機NGとなっています。アイロンは中温推奨。元々シャツの中ではカジュアル感の強いボタンダウンシャツだけに、シワはカジュアル感をより強調してしまいます。アイロンを丁寧に当てることをオススメします。
カラーバリエーションは2色。
http://zozo.jp/shop/koe/goods/12769581/?did=28749191
色は2色展開。このたび筆者が購入したサックスブルーと、ベーシックなホワイトです。サックスブルーについては、ステッチに使用されている糸も生地と同じ色で、シンプルでクリーンな印象を目指した作りになっていると感じます。
価格は7452円(税込)。トム・ブラウンの主義を断片的に感じられるこのシャツに、ユニクロで支払う3倍以上の価格分の価値を見出せるかどうか。そして、いずれ“本家”のシャツを買うための、ステップになりうると思われるかどうか。是非現物を手に取ってご検討いただきたいところです。
本稿が読者諸兄のご検討の一助になれば幸いです。
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