足が長く見えて歩きやすいラスアンドフリスのサイドゴアブーツ

メンズファッションのアイテムの中で、靴は時計と並んでとりわけ思い入れが強くなりがちではないでしょうか。靴そのものの造形美や、作り手にまつわるストーリーは、“男の子心”をくすぐるものがあります。

しかし一方で、コーディネートの観点からは、靴そのものの主張が乏しくても、様々な洋服と合わせやすく、そして歩きやすいものが望ましいところ。

今回ご紹介するのは、まさにそんな靴です。一般的に知られているメーカーのものではありませんが、確かな技術力をもとに、実に使い勝手が良く仕上がっている佳品なのです。

足長に見えるシルエットとシンプルなデザイン

今回ご紹介する靴は、「サイドゴアブーツ」と呼ばれるブーツです。暖かい季節だと、実際にどうかはさておき「蒸れそう」な印象があるので履きづらいところですが、秋口から春先にかけて気軽に履ける点で便利なアイテムです。

今回ご紹介するブーツの一番の特徴はシルエット。注目すべきは「ノーズ」と呼ばれる先端部分です。ここが細く長いことで、コーディネートに際してポジティブな効果が生じるのです。

まずノーズが細身だと、ドレス感が強まります。逆に先端が幅広で丸っこいと、野暮ったさが出てしまいます。
※ドレスとは? こちらをご参照ください。http://www.neqwsnet-japan.info/?p=1810

また、ノーズが縦に長い方が、足が長く見えます。離れて見た場合に、ブーツの全体の縦の長さが、そのまま足の長さに見えるという錯覚を起こすためです。サイズ感については後ほど詳述しますが、筆者が購入したサイズは27cm相当でありながら、縦の長さを実測すると約32cmもありました。

それに加えて、このブーツはヒール自体に3cmほどの高さがあり、物理的な足長効果も獲得できます。普段、男性はヒールのついた靴を履く機会があまりないと思いますが、女性の場合がそうであるように、ヒールがある方が、スタイルがよく見えるという効果もあるのです。

後ろから見るとこんな感じです。かかとについたプルストラップが若干大きくて野暮ったい印象はありますが、少なくとも正面からは見えにくい部分なので、目をつぶるとしましょう。

ご覧の通り、どの角度から見ても、デザインは全体的にシンプルです。メダリオン(小さい穴をたくさん開けた装飾)のようなものもなく、ステッチは最低限と言っていい程度。

すっきりと仕上がっており、足下が“足長な見え方”になるほか、特に強く主張することはありません。

「靴メーカー」の商品だからこその良好な履き心地

続いて靴の機能性、いわゆる履き心地について見て行きましょう。そもそもこのアイテムの作り手は、メンズ・サンエーという創業約50年の老舗靴メーカー。様々なセレクトショップやアパレルブランドのOEMを受注している上に、自社でもオリジナルブランドを複数展開しています。

ファッションブランドが“見た目重視”を前提に限られた費用で発注をかけたものではなく、靴メーカーが自社商品として出しているものだけあって、「歩きやすさ」という機能性が前提としてきちんと確保されているのがありがたいところです。

ヒールの部分は硬めの合成樹脂。歩くたびにカツカツと音がしますが、その反発で足が痛くなる、ということはありません。ソールにきちんとゴムが入っていて、衝撃を吸収してくれるようになっています。

先端部分に目を転じると、少し浮いていることがわかります。これによって、体の重心を前にかけるだけで自動的につま先が踏み込むことになるため、歩く際の足の疲労が軽減される仕組みになっています。

内側を見てみましょう。かかとの部分には緩衝材が入っており、靴擦れのリスクが軽減されています。少なくとも筆者が履いている限りにおいて、かかとの痛みは全くと言っていいほどありません。

ただ、靴擦れはサイズ感とも密接な関係にあります。ここでサイズ感についても触れたいと思います。

このブランドの靴は、全体的に表示サイズよりも「ちょっと大きい」傾向があります。ゾゾタウンの販売ページでも「※こちらの商品は大きめの作りになっておりますので、ご注意下さい。」という注意書きがあり、またアマゾンのレビューにも「少し大きかった」といったコメントがあります。

筆者が靴を買う時は、27.0~27.5cmで買うことが多いのですが、それであれば本来、この靴はブランド表記で「42」か「43」、つまり「26.0cm相当」または「26.5cm相当」のものを買うべきだったのかもしれません。しかしまっすぐ「27.0cm相当」の「44」を購入したところ、やはり大きすぎました。

ただし、薄いインソールを入れると見事にフィットしました。そもそも筆者の足は甲高幅広なので、細身の靴を履くに当たっては、むしろこのように“大きめのサイズをインソールで調整”するのがよかったのかもしれません。結果的に足先も甲も全くストレスがなく、大満足の履き心地です。

生地にチープ感はないが耐久性は今ひとつ

続いて素材についてです。このブーツの毛羽立ちのある表地は、合皮、いわゆるフェイクスエードです。実際に触ってみると若干ざらつきがあり、無愛想な印象ですが、見た目に限って言えば、かなり本物に近いです。


https://goo.gl/EhFnGV

また、後ほど“色のラインナップ”についてあらためて詳述しますが、この靴にはフェイクスエードのものだけではなく、光沢感のあるものも用意されています。光沢感のあるものについては、筆者は現物を見ていないので軽々に評価できませんが、アマゾンのレビューを見る限りでは、購入者は概ね満足されている模様です。

なお、問題と言いますか、使用した実感を3点付記します。ひとつはシワについて。フェイクであるか否かにかかわらず、スエード地の靴にありがちなことですが、アッパー(靴の上部)にシワが入りやすくなっています。

シワはドレス感を損ねるものですが、ある程度までは“味わい”と言えるでしょうか。ここは好みもあろうかと思います。

続いて、サイドゴアブーツの特徴であるサイドのゴムについてです。ここは着脱を容易にしてくれるものである一方、常に伸縮するために負荷がかかりやすい部分でもあります。

特にこの秋以降、筆者はこのブーツをヘビーユースしているのですが、越冬を待たずしてゴムの最上部がよれてきてしまいました。このブーツはケアしながら長く履き続けるもの、と言うよりはノーケアで履き潰すべきものなのかもしれません。

最後に、“臭い”にも言及しておきます。アマゾンのレビューでいくつか低評価のコメントがあるのですが、その理由は概ね「合皮の臭いが耐えがたい」というものでした。確かに筆者も、宅配便が届いて箱を開けた瞬間に気づくほどの合皮独特の臭いに驚きました。

しかし2度3度履いている内にその臭いもなくなり、今では靴に鼻を近づけない限りは臭いません。個体差もあるのかもしれませんが、開けてすぐに放り出すのではなく、少し付き合ってみるのも一手のようです。

質感の異なる生地含め計7色展開


https://goo.gl/EhFnGV

このブーツはフェイクスエードでグレー、ブラック、ブラウン、ベージュ、ネイビーの5色、光沢感のあるものでブラック、ブラウンの2色の、計7色展開。

コーディネートに気軽に採り入れやすいのは、フェイクスエードにせよ光沢感のあるものにせよ、ブラックかブラウンでしょう。しかしそもそも商品名にある通り、特に光沢感のあるものは、ともすれば「ビジネスシューズ」に見られてしまう可能性もあります。

その点、フェイクスエードで色つきのものは、まずビジネス用には見えません。中でも、モノトーンでコーディネートに合わせやすい点で、筆者はグレーを選びました。そして確かな汎用性の高さを実感しています。

定価は5292円(税込)。ただしゾゾタウンではしばしばセールにかかるアイテムです。急ぎでなければ「お気に入り」にしておくと、4000円台で入手できるタイミングがあります。

また、ゾゾタウン以外の通販サイトでもちらほら取り扱いがありますが、グレーとベージュ、ネイビー以外の4色を扱っているところが多いようです。販売価格もまちまち。いつからいつまでかわからないセール価格で、3000円強で販売しているところもありました。

コストパフォーマンスに優れたこのブーツ、ご自身のコーディネートの可能性を広げるために、普段は履かない色にチャレンジしてみるのも一手です。

EQ03

この記事を書いた人

EQ03

身長178cm 体重64kg 靴27.0cm

洋服を“食”と共に、「コミュニケーションを最適化するためのツール」と位置付けています。物産展マニア。国内外を問わず、地域・人に根差した物語性のあるモノ・コトに惹かれます。コーディネートはワイルドよりもきれいめを。