【企業分析】靴のロコンドはZOZOTOWONを倒せるのか?

ロコンドはファッション業界の中でも「靴」に特化したEコマース企業です。事業はEC事業(BtoC事業)、プラットフォーム事業(BtoB事業)、自社ブランド事業(MANGO)の3つがあり、相互に補完関係を担っているのか大きな特徴です。

2017年に上場を果たした新興企業なのですが、少し面白い特徴があるので確認していきたいと思います。

ロコンドの収益構造を確認

まず収益構造を確認しておきましょう。自社ブランドのMANGOはまだ店舗の売上が大きくないのか、分割して計上されていませんでした。どうやらロコンドの現在の収益の源泉はBtoC事業とBtoB事業のようです。各事業の内容と収益構造を確認していきましょう。

BtoC事業

BtoC事業はECサイトの運営がメインです。女性の靴とファッションに特化したLOCONDO.jpと、メンズなどの他の分野の販売を行うLOCOMALLの2つがあります。収益はLOCONDO.jpが中心です。

BtoB事業

他ブランドのECサイトの制作、運営を行うBOEM、ロコンドの倉庫を他企業に貸し付け、店舗に在庫がなくなればロコンドがその商品を店舗に発送してくれるe-3PL、LOCOCHOCなどがあります。一時期EC支援事業が大幅に売り上げを担っていた時期もありますが、現在はLOCOCHOCの売上と半々程度の売上のようです。

これら全ての売上をトータルで見てみると、LOCONDO.jpが収益の中心を担っているという事がよくわかります。

次に現在ロコンドが置かれている状況を確認します。ロコンドは2017年に上場する前に営業利益を黒字化することに成功しましたが、今期より事業拡大の為にCM等の広告を積極的に打ち始めています。事業は黒字化できる仕組みを構築することができたため、事業拡大を狙ってアクセルを踏みなおしたものと推察されます。

このCMの効果は大きく、放送地域では売上が格段に増加しています。この事からも、ロコンドはまだまだ事業の成長過程にあるといえそうです。

 

ここまでのデータではロコンドは順調に成長しているように見えます。しかし、日本にはZOZOTOWNがあります。ロコンドは靴だけでなく将来はファッション分野にも力を入れたいという考えがある様なので、いずれは競合していくかもしれません。現在、ロコンドはZOZOとどれくらいの「差」があるのか比較してみましょう。

(企業比較)

比較すると大きな差があることがよくわかりますね。この差は一体何から来るのか。そしてこの差を縮めるためにはロコンドは何が必要なのでしょうか。ロコンドもZOZOもECサイトが事業の中心ですので、収益を分解すると「購入者数×出荷単価」になります。まず出荷単価から比較してみましょう。

出荷単価はロコンドの方が高いです。しかし、少々驚きですが出荷単価の推移自体は非常に酷似していますね。靴と服というメインの商品は違っても3Q(9~12月)の単価がともに最も高くなっています。日本でファッションに特化するECサイトであればこれだけ連動するというのはファッション業界の大きな特徴の一つといえそうです。続いてアクティブユーザー数を見てみます。

ここに大きな差がありました。ZOZOとロコンドは「アクティブユーザー数」が圧倒的に違います。この利用者数の違いが、ZOZOとロコンドの収益の大きな違いになっているようです。しかも、利用者数の増加はZOZOの伸びの方が大きいように見えます。

これはEC業界の一つの大きな特徴なのですが、EC業界には「Winner Takes All(強者が全てを手に入れる)」という構造があるといわれています。利用者数が増えると商品が売れるのでブランドがそのサイトを利用したがり、取り扱いブランドが増えていく為よりユーザーが増えていくという良い循環が生まれる事になります。

ZOZOとロコンドのアクティブユーザー数の伸び率の差は、この業界のルールを反映したものになっています。これを何とか覆すために、ロコンドはCMを打つなどしてアクティブユーザー数を増やす施策を行っているのでしょう。

ロコンドがZOZOに肉薄している要素はブランド数の伸び率

とはいえZOZOは日本一のECサイトだけあってぱっと見は穴はありません。ロコンドがZOZOに対抗できる要素はあるのでしょうか。そのような視点で色々と探していくと、一つだけ見つけました。それは「取り扱いブランドの増加数」です。

ロコンドは2014~2018年、ZOZOは2008年~2012年と期間の差はあるのですが、取り扱いブランドが1000を超えた段階で両者のブランドの増加数を比べてみました。

すると、ZOZOの方が当時でもアクティブユーザー数は圧倒的に多いにもかかわらず、ブランドの出店スピードはZOZOとロコンドは肉薄する結果となったのです。

これは、ブランドがアクティブユーザー以外にロコンドに魅力を感じて出店を決めている事を示しています。ロコンドにあってZOZOにないもの。それは先ほど確認した、ロコンドのプラットフォーム事業です。

この中でも、特にe-3PLというサービスがロコンドの強烈な差別化要素になっていると考えます。

売上にはならないものの、強烈な差別化要因となっているe-3PL

3PL(サードパーティロジスティクス)とは、企業の物流業務を専門事業者が長期間、包括的に請け負うアウトソーシングサービスです。

ロコンドのe-3PLとは、ロコンドの持つ倉庫に、無料でブランドの商品を預かり、ブランドは店舗にお客さんの求める商品がなかった時、ロコンドに連絡し、預けていた商品を発送してもらうことができます。

ロコンドの3PLは、保管中はロコンドもその商品を販売できることが特徴。ロコンドにとっては売上獲得の機会が増え、ブランド側にとっても保管コストを減らすことができるというメリットがあります。このような理由から、近年急速に利用が進んでいるサービスです。

ロコンドはこのサービスを武器に取り扱いブランド数を伸ばし、LOCONDO.jpをより魅力的な場にするつもりなのでしょう。数年前には、「将来に向けた布石」として11,000坪もの広大な倉庫を確保しています。

e-3PLというロコンド独自のサービスは、それ自体では売上に大きく貢献はしないものの、そこからもたらされる売上以上に大きな価値をロコンドにもたらしてくれており、ロコンドも重点的な投資部門として位置づけていることがよくわかります。

ロコンドの各事業は補完関係にある、非常に面白いビジネスモデル

今までの話をまとめてみましょう。ロコンドは今伸びてきている企業ですが、日本には大きなライバルであるZOZOがいました。このZOZOにもない独自のサービスとしてロコンドが始めたのがe-3PLというサービス。これは、ブランドにとっても非常に魅力的であるためブランドの出店スピードは非常に速くなります。

ロコンドは、ブランド数を増やしてECサイトとしての魅力を高めてユーザー数の増加、ひいてはLOCONDO.jpの収益の増加につなげようとしています。

この図のように、自社の一つの事業が好調であれば自然と他の事業も業績が上がるというようなビジネスモデルは、他のECサイトではあまり見かけません。

筆者は、この取り組みが順調に続けば、靴という分野に限ればZOZOに負けない企業になる日もそう遠くはないのではないかと考えます。今年からCMも始まって徐々に認知度も高まってきているようですので、興味があればぜひ一度チェックしてみてください。

サイトurlは https://www.locondo.jp/

会社の財務分析に使った資料は https://www.locondo.co.jp/ir

からご覧いただけます。

やなぎば

この記事を書いた人

やなぎば

身長168cm 体重63kg 靴26.0cm

「オシャレわかんねぇよ!」と叫んでいた所MB理論と出会いオシャレさんを目指し中。友人の「オシャレになったねー!」の一言が今の原動力です。