今回紹介するアイテムはマルジェラ定番のエルボーパッチスウェットです。スウエットとは言ったものの、細部に工夫がこらされた一枚。筆者が購入したのは2018年秋冬のインラインのもので、一見シンプルなアイテムに見えますが、無地でも地味に見えないように綿密に計算されています。詳しく見ていきましょう。
計算されつくされたシルエット
まず注目したいのは逆三角形に見えるシルエット。これは袖のリブの締めつけとドロップショルダーによるもの。裾にクッションがたまると膨らんでしまいポッコリお腹のように見えてしまうのですが、締めつけはそれほどキツくないため、少しリブの上がふんわりする程度にとどまっています。
また袖は長く作られており、リラックスした雰囲気。通常それでは手を隠してしまうほどの長さになってしまい大変不便ですが、目の詰まった絶妙な締めつけのリブが取りつけられているので、萌え袖のようにはなりません。
リブを縫い合わせた箇所が、シャツによく見られるような形状になっているため、生地がリブにたまり、ミニマルなデザインとマッチしてちょうどいいリラックス感が生み出さています。そのためサイズはジャストよりも1サイズ大きめをおすすめします。普段M～Lサイズを選択する筆者はサイズ46を購入しました。
3つの大きなディティール
“ノームコア”の大きなトレンドが収束し、“脱地味“が昨今の一大キーワードとなっている現在、プリント・色・柄など一目でわかるような特徴がないスウェットシャツは、文字だけ見ると確かに地味でしょう。しかしこのスウエットには地味だと感じさせない工夫が３つあります。
1つ目はカーフレザー素材のエルボーパッチです。スウェットにレザーのパッチをドッキングさせるデザインは、デザインのためのディティールではありません。スウエットやニットを着ていくなかで、最も消耗するのは肘の部分です。腕を曲げ伸ばしすることによって生地が伸縮し、摩耗します。それが積み重なることでダメージとなってしまうワケです。
そこで、エルボーパッチに戻るのですが、摩耗においてはコットンのスウェット生地よりもレザーの方が強いです。したがって永く使うための機能的なディティールの１つだと言えます。
2つ目に注目したいのが目の詰まったリブ。リブについては前述しましたが、デザインの観点からも見ていきましょう。リブは、ボディと比較して尋常ではないくらい目が詰まっています。単に伸びにくいためというだけでなく、その詰まり具合によって色が違って見えます。当然ながらリブは袖・裾・ネックと末端に配置されるため大変目立ちます。そこで色を切り替えさせることで、視覚的に変化を強く感じさせることができ、グレーの一色のみでも地味になりません。
3つ目に縫製に注目していただきたいのですが、裾・袖・肩の縫製がシャツのステッチと同じ仕様に、脇から下と袖までがスウエット本来のものになっています。多くの場合、シャツは生地を重ねて縫い合わせる縫製を、シャツやニットは生地を縫い込む縫製を採用しています。デザイナーのガリアーノの遊びゴコロのあるデザインをオーセンティック志向のマルジェラに落とし込んだ１つの形だといえます。
洗濯・使用感
ボディはコットン100％ですが洗濯後の縮みはありません。またエルボーパッチが断ち切り状になっており、着用・洗濯を繰り返していくうちに糸がほつれてきます。気になる方は引っ張らずにハサミで一つ一つ取り除いてあげてください。カーフレザーをエルボーパッチに使用していますが、アイロンは厳禁です。洗濯を重ねることで硬化していきますので適宜クリームを使ってください。革靴に使うものと同じでいいと思います。念のために裏返して洗うとなお良いでしょう。
価格は6万2640円（税込）。非常に高額ではありますが、頭一つ以上とびぬけたアイテムであることは間違いありません。良質なものを永く着たい方にはこれ以上ないものだと思います。インナーとしても１枚でも非常に使い勝手がいいです。目にする機会がありましたら試着だけでもされることを強くおすすめします。
