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~ベターチョイスなTシャツで、大人の日常着の底上げを~
暑くなってくると、当然ながら身に着けるアイテム数が減ります。と言うことは、身に着けるもの1枚1枚の存在感が、相対的に大きくなりますね。
中でも、秋冬では上着やコートでほとんど隠れてしまいがちなTシャツが、この季節においては重要な役割を果たします。30代以上の大人としては、カジュアルな若者らしさ(子供っぽさ)とは一線を画した着こなしをしたいもの。そこで、大人の夏のローテーションの選択肢のひとつとして、是非ご提案したいのが、このボーダーTシャツなのです。
定番の中の変化球。リスクを低減するデザイン。

そもそもボーダーは、定番であるが故の危険をはらむデザインです。と言うのも、見る人に与える印象が強いため、うかつに多用すると「ボーダーの人」などと呼ばれかねないくらい、存在感のある柄だからです。トップスをTシャツ一枚で過ごすとなれば、その傾向はなおさら強くなりますよね。
この印象の強さの理由は、ひとえに「縞の存在感」と、その「並び方の単調さ」のためです。
まず、縞は太ければ太いほど、存在感が増すと共に、カジュアル感が強くなります。ボーダーを大人っぽく着るのであれば、まず縞は細いものを選ぶことが望ましいです。
そして単調な柄は、強い印象でありながら、没個性的な、地味なイメージになりがちです。
その点で、このTシャツは、縞が細い上に、縞と縞の間(ピッチ)が一定ではない点で、主張しすぎない個性があります。メーカーは、ボーダーTシャツの作り手としてドがつくほどにメジャーな無印良品。定番を知るからこその、さじ加減の絶妙な変化球と言えます。
実のところ、こういった縞のデザインが、他のブランドに全く無いわけではありません。しかしその場合、価格は少なくとも3倍以上と、お安くないものばかりです。
なお、オーガニックコットンの生地は吸汗性抜群で、首回りもすぐに伸びないしっかりとした作り。日常着として重要な機能面も安心のクオリティです。
ワンサイズアップして、大人の着こなしを。
「ビッグシルエット」のトレンドも、かなり定着してきました。これは、体にフィットしたジャストサイズではなく、少し大きめのサイズを着ることで、ゆったりしたシルエットを作るというもの。おなかが出ていることを気にしている人も、細身で夏の薄着に抵抗がある人も、そのコンプレックスのポイントを目立たせない点において便利なスタイルです。
このTシャツも、サイズをアップして着るのに適したデザイン。と言うのも、身幅が広いため、体型をうまく隠せる一方で、首元がしっかりしているため、ブカブカ感がありません。
さて、このTシャツに合わせるボトムスは、一考を要するところです。選択次第では、若者らしさ(子供っぽさ)が強調されるリスクがあります。
と言うのも、トップスが膨張色である白ベースで、しかもビッグシルエット。これは既に、カジュアル感がかなり強い状態です。ここに例えば、デニムのジーンズやショートパンツを合わせると、さらにカジュアル感が付加されることになります。
もちろん、それらが合わないわけでは決してありません。アメカジ風のリラックススタイルを目指すのであれば、アリです。ただ、“大人っぽさ”からは遠ざかってしまいます。
そこでオススメしたいのが、スラックスです。スラックスをオフで履くのは抵抗がある向きもあるかもしれませんが、一度試してみると、“大人っぽさ”を実感できるかと思います。それでいて、トップスがしっかりとカジュアルなので、“仕事着”感はありません。なお、膨張色のトップスと合わせるのであれば、ボトムスは収縮色にした方が、メリハリがつきます。収縮色の代表は「黒」ですね。
「そうは言っても夏に黒は重たいよ」というご意見もあろうかと思いますが、そこは素材の選び方で概ねクリアできます。冬物の重厚なウール素材であれば確かに暑苦しいですが、サマーウールやリネンであれば、黒くても軽さを出すことができます。加えて、足元にエスパドリーユやグルカサンダルといった、涼やかで、かつカジュアル過ぎないアイテムを持ってくることで、夏らしい大人っぽさを表現できることでしょう。
http://www.uniqlo.com/jp/store/goods/286986
コーディネートを、Tシャツに振り回されない。
このTシャツは、単品としてのデザインだけでなく、コーディネートが組みやすい点においても魅力的です。
写真やイラストなどのビジュアルをモチーフにしたTシャツや、今年のトレンドと言われている“ロゴT”の場合、コーディネートの別アイテムによってそのデザインが隠れてしまったりしたら、悲しいですよね。かと言って、ビジュアルやロゴが中途半端に見える状態だと、それはそれで、かえってカッコ悪い。
ビジュアルやロゴは前面のセンターに位置することが多いので、ジャケットを羽織る場合や、シャツの前ボタンを開けて羽織る場合であれば、隠れる心配は不要でしょうけれど、例えば縦のレイヤードで立体的なコーディネートの構築を目指すのには、概ね不向きです。
つまり、ビジュアルをモチーフにしたTシャツや、ロゴTを着る時は、逆に言えば、Tシャツのデザインを意識しながらコーディネートを考えなければならない、ということになります。
その点で、このボーダーTシャツは、どこか少し見えるだけでOK。
無地のシャツやパーカーと合わせると、Tシャツのどの部分が少し見えるだけでも、効果的なアクセントになるのです。身に着けるアイテム数の少ない夏に、構築的なコーディネートを楽しむことができます。
デザインと生地で、好みが分かれるポイント。
このTシャツの首回りについて、「すぐに伸びないしっかりとした作り」と上述しましたが、クルーネックである点において、若干カジュアル感が強いと言えます。また、首元に切り替えがあるところも、好みが分かれるところでしょう。
実のところ、ファッションの歴史的な経緯において正統派のボーダーシャツの首回りは、横に広く開いた、“ボートネック”なのです。
http://item.rakuten.co.jp/z-craft/2068-0005/
また、「好みが分かれる」ということでは、生地の起毛感をどうとらえるか、という点も挙げられます。
起毛感ゆえに、着心地が良さを感じられます。しかし、艶感は乏しいです。ビジュアルとしての大人っぽさという観点からは、艶感がある方が望ましい。しかし、無地のTシャツと違い、ボーダーのデザインがあるため、遠目にはあまり違いはわかりません。
客観的な“本物”よりも、個人的な“最適”を。
「このTシャツこそ、ベストのボーダーです」と言うつもりは、ありません。“本物”という観点から言えば、このボーダーTシャツはむしろ異端と言えます。
しかし日常着のコーディネートに際して、このアイテムは“ちょうどよさ”を実感できるもの。1,290円(税別)という価格も含めて、検討に値するものではないでしょうか。
“大人”の皆様の、日常着のコーディネートを底上げさせる、ベターな選択肢になれば幸いです。