ソックスの一般的な意義は足の保温・保護にありますが、おしゃれ的に重要な機能にとして「繋ぐ」「差す」があります。
今回はとくにボトムスとシューズを「繋ぐ」、あるいはボトムスとシューズの間に「差す」ための「基本のソックス」として、無印良品「オーガニックコットン混 足なり直角靴下」についてレビューいたします。
「ソックスの基本」から考える

「ソックスの基本」とはやや大げさだったかもしれませんが、靴下の起源について簡単に触れておきます。『アラン・フラッサーの正統服装論』によれば、靴下の起源は「保温」や「保護」という目的のために足に巻いた布や毛皮でした。
現在においても、とくにこれからの季節、「保温」という観点からソックスは不可欠です。海外のビーチなどで観察すると、欧米人は、日本の11~12月に相当する気温であっても短パンにサンダルといったいでたちで闊歩していたりします。
「そんな外人みたいに寒さに強い私」をアピールする目的なら否定はしませんが、「見た目」を重視するなら、たとえ本人が必要としなくてもソックスはマストです。見ているこちらが寒くなりますから。
また「保護」という観点からも、ソックスには蒸れや靴ずれを防止するという重要な効能がありやはり不可欠。
チャールズ1世を描いたファン・ダイクの絵画や、ボー・ブランメルの肖像からもわかるように、19世紀半ばまでのボトムスは「半ズボン」でしたから靴下の原型というのは膝まであったようです。
それ以降ボトムスの丈が靴近くまで下りてきたことにより、靴下はふくらはぎをカバーする程度に落ち着くとともに「ソックス」として定着しました。現在のソックスには、ニーハイソックスからカバーソックスまで数多くの丈の選択肢がありますが、「ソックスの基本」はやはりクルーソックスでしょう。
さて、ここまでは一般的な「ソックスの基本」についてでしたが、ここからはおしゃれにおける「ソックスの基本」の話になります。他人の視線にさらさない前提のカバーソックスは例外ですが、ソックスには「繋ぐ」「差す」という機能があるのはご承知の通り。
単純化するために、設定を黒いボトムスと黒いシューズにしてありますが、もちろん他の色に置きかえて考えることもできるでしょう。「繋ぐ」というのは、ボトムスとシューズを繋ぐということ。
黒いボトムスと黒いシューズを黒いソックスで繋いであげれば、脚がなが~く見えますよ、ということです。「差す」というのは、ボトムスとシューズの間に「色を差す」という意味ですね。
黒いボトムスと黒いシューズの間に白いソックスを差してあげれば、黒一色の重たいニュアンスが払拭されて軽やかに見えますよ、ということです。では「繋ぐ」と「差す」をどのように使い分ければよいのでしょうか。
じつはこれはトップスしだいだったりするのです。筆者の意見ですが、例えば黒いトップス、黒いボトムス、黒いシューズであれば、白いソックスがベターであり、白いトップス、黒いボトムス、黒いシューズであれば黒いソックスがそれぞれベターです。
「基本のソックス」とは……無印良品「オーガニックコットン混 足なり直角靴下」

おしゃれに興味をもつようになってもトップス、ボトムス、アウターに靴と攻略すべきアイテムがたくさんありすぎて、帽子やバッグ、アクセサリーも欲しいしと、とてもソックスまでアタマやお金がまわらないというのが現実でしょう。
かといって靴下を履かないわけにもいかないのでテキトーなもので済ませていたり。そこで所持しておきたいのが「基本のソックス」です。ユニクロの50色ソックスもいいですよね。
神経質すぎるかもしれませんが、私は自分の目的に照らして「リブ」さえも必然性のない装飾なので、あくまでもプレーンな素材のものを求めています。
冠婚葬祭用のものも試しましたが、生地が薄すぎて、どうにも透けてしまう。そうしてたどり着いたのが、無印良品「オーガニックコットン混 足なり直角靴下」です。

このクローズアップ画像でも一目瞭然であるように、踵が直角に編まれています。これはフィット感を重視して足の自然なかたちに合わせたものです。

リブは必要最小限の強さといったところ。全体、とりわけ踵のフィット性を高めることでリブのホールド力に頼らないというコンセプトなのでしょう。
たしかに靴を履くときのもたつきがなく、一日着用してもずれが生じることもなく、リブの跡が脚についたりもせず、履き心地はきわめて良好です。

耐久性についてもとくに問題はなく、せいぜい白の場合は色落ちしそうなものとはいっしょに洗わないといった常識的な対応だけでOKです。ただし起伏のない生地だけに、毛玉がやや目立ってしまうことは否めません。
素材は綿77%、ポリエステル19%、ナイロン3%、ポリウレタン1%の混紡です。柄によっても少し異なるようです。
サイズ感、バリエーションについて

ところで私は足のサイズが25cmあるかないかであるため、婦人用の23~25cmというサイズのものをメインで着用しております。また所有している靴がタイトなものばかりだったりするため、履くときのもたつきが気になるからという理由もあります。
しかし足首は比較的細いもののやはり女性よりはがっちりしているので、生地が幅にとられてしまうのか、やや長さがたりないかなというサイズ感です。
このことについては『ハーディ・エイミスのイギリスの紳士服』でも「ジーンズやカジュアルなズボンならもちろん、白のキャンバスやゴム底靴のときでも、短いソックスをはいてかまわないとは思う」と述べられているとおり、フォーマルやビジネスならNGでしょうが、街着ならアリということで納得しています。
バリエーションについては非常に多岐にわたっていて、「オーガニックコットン混 足なり直角靴下」から「紳士 えらべる靴下 クルー丈 リブなし」という条件で抽出してみても、スタンダードなもののほかにストライプ柄ビジネス、ワイドボーダー柄、アーガイル柄、タッターソール柄があり、それぞれに2つのサイズと数色のカラーがあります。
ちなみに「えらべる靴下」というのは1足390円(税込)、「よりどり3足」で990円(税込)という高コスパなソックスのことですが、これとは別にバラ売りの「オーガニックコットン混 足なり直角靴下」のバリエーションも存在しています。
さらに私もそうですが、足のサイズがメンズとレディースのボーダーとなっているちょうど25cmほどの方であれば、前者からだけでなくさらに大きく展開されている後者からもチョイスすることが可能となり、バリエーションはそれこそ膨大なものになります。
またポチってしまいました

(左から1,5,6足目が、オーガニックコットン混 足なり直角靴下)
色もの柄もののソックスもいいのですが、あくまでもピンポイントで、あるいはワンポイントとして入れるものであって、それだけでスキのないラインナップをつくることは困難です。
あらゆるコーデに対応可能なソックスのグラデーションの空白を埋めるためにもシンプルなソックスは必要なのです。ところで、自らのレビューに影響されてさらに買ってしまう。コレが筆者のクセのようで、今回も書きながら「オーガニックコットン混 足なり直角靴下」のグレーをポチってしまいました。
黒でもない、白も、ましてや色もの柄ものも違う、夏なら素足でいいんだけど、ということが頻繁にあったもので、そのような状況に最適かと……。
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