ドレス感を醸し出すハイテクスニーカー、プーマ「BOG LIMITLESS Lo Lunar Eclipse」

奇抜な色やデザインのものが多いハイテクスニーカーは、コーディネートが難しいし、そもそも“大人”としては履きづらいですよね。

一方、ここ数年爆発的な人気となったアディダスのスタンスミスや、コンバースのオールスターなどローテクスニーカーは、シンプルであることが身上。ドレス要素の多いセットアップスタイルをカジュアルダウンしたり、スラックスに合わせたり、お役立ちアイテムとして人気を博しました。

とはいえ、ナイキのエアマックスが大流行した90年代に多感な少年期を送った方であれば、ハイテクスニーカーに抗いがたい魅力を感じる人も少なくないはず。

そこで本稿では、大人のファッションをたしなむ、かつて“男の子”だった紳士諸兄にご紹介したい、逸品スニーカーを取り上げます。それがプーマの「BOG LIMITLESS Lo Lunar Eclipse」。ユナイテッドアローズのストアブランドのひとつ「モンキータイム」とのコラボ別注品です。

モノトーンのグラデーションが醸し出す、程よいドレス感

このスニーカーの一番の魅力はアッパー、つまり足の甲の部分の美しさです。見るからにさわり心地のよそさそうな(そして実際に硬質なふかふか感のある)メッシュのアッパー部分が描くグラデーションは、「お上品」のひと言。そもそも“大人っぽい”コーディネートを目指すに当たり、まず排除すべきはカラフルな色使いです。

全身のコーディネートを3色以内に収めれば、大人っぽさを演出するうえではまずまちがいありません。もちろん、「おしゃれ上級者」と呼ばれる人が“上級者”である理由のひとつは、このルールを超越した色遣いをコーディネートのなかに採り入れることができる点です。しかし、そういった難度の高いことは、上級者にお任せしておきましょう。

そして、体の「先端」部分である靴は、人の視線を集めやすい箇所です。スニーカーは本来的にカジュアル感、つまり子供っぽさをもつアイテム。そんななかでも色味が少ないほうが、“大人っぽさ”、つまりドレス感につながります。

実際にここ最近は色んなショップで、大人の買い手を意識してのことか、コーディネート提案上の都合か、モノトーンのスニーカーを目にする機会が多いと感じます。そんな数あるモノトーンのスニーカーの中でも、これこそが一番美しいものであると、筆者は敢えて断言致します!

人の視線を最も集めるアッパー部分に、コーディネートの邪魔にならない程度の絶妙なさじ加減で、黒と白のグラデーションだけで、ほかでは見られないデザイン感を主張しています。思えば、あの伝説のハイテクスニーカー「エアマックス95」も、モノトーンではありませんでしたが、イエローのグラデーションのデザインが人気でしたね。

ちなみに商品名の「Luna Eclipse」とは「月食」のこと。このデザインは夜空に浮かぶ、欠けた月のイメージなんですね。「月食」。この単語に、心の奥底に封印していたはずの“中2マインド”がうずきませんか? 恥じることはないのです。カッコいいハイテクスニーカーの前では、老いも若きも誰もが常に、“男の子”なのです。

 抜群の歩きやすさは、ハイテクスニーカーの真骨頂!

ハイテクスニーカーとは、そもそもブランドのテクノロジーを搭載したスニーカーのことなので、実用性の高さは本来、言うまでもないものです。しかし、筆者が実際に使ってみて、本当に実用性の高さを実感しているので、是非お伝えさせてください。

このスニーカーに採用されているミッドソール(靴底と足裏の間に入る部分)は、もともとランニングシューズに使われているもので、地面に着地する時の衝撃を吸収する“クッション性”と、着地時に地面から受ける力を前に進む力に変換する“反発性”を両立させる、というスグレモノです。

つまり、「疲れない上に速く歩きやすい」のです。休日に長時間出歩くことの多い筆者ですが、このスニーカーを履いている日は、他の靴を履いている時に比べて格段に快適です。

また、かかと部分にあるニットも魅力のひとつ。足首を包み込むようにフィットすることで、優しく固定されている安心感があります。このニット、足首にフィットしているサマは、靴と体の境界線をスムーズに見せる点においても素敵です。逆に、このニットの下から中途半端な丈のソックスがのぞいてしまうと、とてもカッコ悪いことになってしまうので注意が必要です。

このスニーカーは“歩きやすい”だけではなく“履きやすい”ところも魅力的です。

まず、足幅にゆとりがあります。筆者は足幅が広く、一見素敵なスニーカーに出会っても、試着するとしばしば「スニーカーに持ち主として選んでもらえない」という悲哀を味わってきました。

その点、このスニーカーは足幅にゆとりがあり、足がストレスを感じません。筆者の足のサイズは27.0cmですが、このスニーカーは27.0cmでジャストサイズです。

なお、足幅の広い分だけ、デザイン的にはシャープさを損なっているとも言えますが、この丸みを帯びた柔らかな曲線を、筆者はむしろ“かわいさ”と感じています。ここは好みでしょうか。

さらに、アッパー部分の柔らかさも大きな魅力。足が幅広なだけでなく甲高でもあるという、残念な足の持ち主である筆者は、靴を履いているとしばしば、甲の締め付けにストレスを感じます。スニーカー等の紐靴であれば、紐を緩めれば問題ないと思われるかもしれませんが、靴紐を通すホールの間隔が狭いものだと、紐を緩めてもダメなことが多々あるほどに、残念な甲高ぶりなのです。

 その点で、このスニーカーは足首がしっかりホールドしておりブカブカ感はなく、それでいて甲に締め付けを感じることもありません。そして爪先立ちのように足の甲を持ち上げてみても、アッパーが柔軟に曲がってくれるため、足の甲が痛みや負担を感じずに済みます。

 真価を発揮するのは、くるぶしを出したコーディネート。

コーディネートのコツです。モノトーンとはいえ、ハイテクスニーカーという点でのカジュアルなアイテムではあるので、できればパンツにはスラックスのような、“大人っぽい”アイテムを合わせることをオススメします。

その際に、できれば足首を見せるようにしましょう。ハイテクスニーカーは単体で完成度の高いビジュアルを形成しているアイテム。なので、下手にパンツの裾のクッションで一部を隠してしまうよりも、全景を見せるような履き方の方が、カッコよく見えます。

上述の、足首を包み込むニットのところが見えるようにするとよいでしょう。

 着用感とデザインで、一応気になった点を。

筆者自身がとても気に入って愛用しているこのスニーカーですが、気になる点が皆無というわけではありません。フェアを期すために、以下2点を共有させていただきます。

ひとつには、上述の足首を包み込むニットについて。なじむまで、かかとの部分がチクチクします。靴ずれ耐性の低い筆者ですが、購入当初は「スニーカーのニットにすら靴ずれするのか」と落ち込んだものです。しかし3回ほど使用すると、ニット自体が柔らかくなってくるので、気にならなくなりました。

もうひとつが、サイド部分のデザイン。「月面のクレーターを模した」とされる、黒地にランダムな白が散らばるビジュアルと、靴紐を通すホールを擁するプラスチックの部分。ちょっとカジュアル過ぎるかな、と思うことも。

ただ、実際にこのスニーカーを履いているときに、上から、または前から見たとして、特に気になる場所ではありません。その部分だけをまじまじと見るのは、このスニーカーの保有者だけでしょう。ということで、不問とさせていただきます。

あと、デメリットということではないですが、アッパーがメッシュなので、雨の日には不向きです。しかし暑い季節に履く分には、蒸れにくくなる点でのメリットの方が大きいと感じています。

 そこに衝動があるならば、買って正解です

スニーカーを履くのであれば、パッと見地味なローテクスニーカーの方が、“大人っぽい”コーディネートを作りやすいもの。また、価格的にも1万円はおろか5000円を割り込むものも多いですよね。

その点、このハイテクスニーカー「BOG LIMITLESS Lo Lunar Eclipse」は、モノトーンとはいえローテクスニーカーよりカジュアル感が強く、価格も1万7280円(税込)と安いものではありません。

しかしそれでも「これは買いだ」と思わせる衝動が心の中に湧き上がったならば、買って正解です。筆者は正解でした。心からそう思います。パッと見の「カッコいい」という直観を正当化するに足るだけの確かな価値を、今回は言葉にしてみました。この思いを共有できるお仲間が一人でも増えるなら、筆者としてもうれしい限りです。

EQ03

この記事を書いた人

EQ03

身長178cm 体重64kg 靴27.0cm

洋服を“食”と共に、「コミュニケーションを最適化するためのツール」と位置付けています。物産展マニア。国内外を問わず、地域・人に根差した物語性のあるモノ・コトに惹かれます。コーディネートはワイルドよりもきれいめを。