現役スタイリスト高橋ラムダの新ブランド「アールエムギャング」をレビュー/ベルベットノーカラージャケット

ファッションのトレンドは、シンプルなアイテム同士を合わせてカッコよく着こなす「ノームコア=究極の普通」から、デザイン・シルエット・素材・カラーに工夫をこらしたアイテムを取り入れて着こなす「着飾るオシャレ=装飾性」に移り変わろうとしています。

しかし、「装飾性」がトレンドだからといって、いきなり派手なアイテムを着こなしに取り入れるのは抵抗がありますよね……。

もちろん、服を売る側である市場も、上記のような服を着る人が抱く感情をきちんと理解しており、ノームコアのトレンドで市民権を得たベーシックなアイテムを土台にして、デザインを少しだけ加えてみたり、表情のある素材に変えてみたりと、今までとは「少しだけ違う」という、服を着る人が新鮮に感じられるアイテムを打ち出している傾向にあると感じています。

特に、今シーズンの秋冬では、ジャケットやチェスターコートの襟が無いデザインである「ノーカラー」のアイテムが多く出回っており、いわゆる「旬」のアイテムの1つといえます。

今回の記事では、今シーズンの旬であるノーカラージャケットの中でも、筆者が大変気に入って購入したアールエムギャングのベルベットノーカラージャケットをご紹介させていただきます。

現役スタイリストが立ち上げたブランド「アールエムギャング」

アールエムギャング(R.M GANG)というブランドは、ファッション雑誌やパリコレクションのスタイリングを手掛けた経験を持つ「高橋ラムダ」という現役スタイリストが立ち上げたブランドで、2017年の秋冬から始動しました。

ブランド名の“R.M”はRebel Modanist(反逆的近代主義者)の略で、“現代のパンク”をイメージしているそうです。高橋ラムダ氏自身が「今着たい」と思う全15型のアイテムを発表、しかも、全アイテムがワンサイズのワンカラー展開。

デザイナー自身が着たいモノというだけあって、サイズ感も高橋ラムダ氏自身の体型を主軸に構成しているそうです。全体的に、今のトレンドを組み込んで、オーバーサイズに作られているため、ワンサイズといいながらも、一般的な体格の方であれば十分に着られるアイテムが多いです。

今を代表するスタイリストが手掛けるブランド、要チェックです!

こだわり抜かれたデザインの数々

今回の記事でご紹介するジャケットには、実力派スタイリストのこだわり抜かれたデザインの数々が随所に施されています。まずはシルエット。

アールエムギャング自体は昨今のトレンドであるビックシルエットの流れを意識してオーバーサイズのアイテムが多くリリースされていますが、こちらのジャケットはその中でも比較的細身の作りになっています。

サイズ表記は「フリー」。詳細な寸法は、着丈:72cm、身幅:56cm、肩幅40cm、袖丈:70cm、袖幅:14cm。165cmの筆者の着用したところ、肩幅や身幅はそこまでオーバーサイズという感じではありませんが、着丈や袖丈が長いのでゆったり感がありつつも縦のラインを強調できるシルエットに仕上がっていると感じました。

この着丈で肩幅や身幅が大きいと、いかにもオーバーサイズという感じがするものですが、このあたりの絶妙なバランスの取り方に感動しました。

続いては、襟のないノーカラーの首回りと白地のパイピング。首回りは襟を省略することによって、ジャケットとカーディガンの中間的な位置付けのアイテムとなり、同素材のパンツと合わせてセットアップのようなコーディネートでも程よい抜け感を与えてくれます。

一方で、襟が無くなったことによって、少し寂しくなった首回りをはじめとして、ジャケットの端部に白地のパイピングが施されています。

こちらのパイピングはシルク100%の糸を使用しているため、非常に美しい艶を放っています。手首にも同素材のパイピングが施されており、上質なパジャマのような印象も感じることができ、そのリラックスした雰囲気が大人の余裕感を演出してくれます。

また、ジャケットの裏地にはキュプラ100%のライナーが付いており、着脱もスムーズ。デザイン上、ライナーが袖と裾からのぞくようなデザインになっており、表地とライナーのキュプラとの色のコントラストによって、コーディネートのアクセントとしても活躍してくれるところもポイントです。

この「テキトーに生地を切って張り付けた」という感じがストリートっぽい印象もあってカッコいいです。

そして、最も特筆すべきポイントは、一般的なジャケットのボタンの代わりに取り付けられているベルト。ウエスタンベルトのようなデザインでバックルの形も特徴的。少しくすんだ印象のシルバーカラーが上品な雰囲気を醸しています。

もちろん、ボタンと比べれば留めたり外したりの動作は少々面倒ですが、まったくと言っていいほど、市場で見かけたことのないデザインですので、周りとの差別化にもうってつけです。上述した数々のこだわり抜かれたデザインによって、唯一無二のジャケットになっていると感じています。

艶やかなベルベットの美しい表情

今回のジャケットの表地にはベルベット素材を使用。ベルベットとは、起毛された生地のことであり、光沢感があって非常に艶やかで美しいのが特徴です。

ベルベット素材の場合、綿やポリエステルとは違い、例えば同じ黒でも色味に深みがあります。この色の深みがアイテムに高級感を与えてくれます。

また、ベルベットの艶によって、シンプルなデザインでも光の当たり具合によって、生地の見え方が異なってくるため、のっぺりとした地味な印象を払拭してくれる点もポイントです。

ただし、欠点としては、椅子に座ったり、リュックやトートバッグ等に擦れることで、ベルベットの持つ風合いが損なわれやすいデリケートな素材であること、また、ホコリなどが付くと非常に目立つことが挙げられます。

定期的にブラッシングなどを行ってホコリを落としたり、着用シーズンの終わりにはクリーニング等に出すなどの手入れが必要になってきます。

ボトムスのポケットに手を入れたときの見え方がカッコいい

今回ご紹介するジャケットはボトムスのポケットに手を入れたときの見え方が非常にカッコいい。上の写真は、ボトムスのポケットに手を入れないとき(写真左側)とポケットに手を入れたとき(写真右側)を比較したものになります。

上の写真からもわかるとおり、ジャケットの着丈が長いため、ポケットに手を入れたときにジャケットの裾が捲れ上がることによってジャケットに動きが加わって独特な雰囲気が生まれます。さらに、白のパイピングがジャケットに沿って施されているため、ジャケットの裾の捲れ上がりに合わせて動いてくれるので、これがほどよいアクセントになってくれます。

また、ポケットに手を入れることによって、ジャケット自体を持ち上げる形になり、ジャケットの胸回りの生地に余裕が生まれ、ジャケットのフロント部分が開いたときの見え方も余裕感があって、さらにオシャレにみえます。

ちなみに、デザイナーである高橋ラムダ氏もこのジャケットを着てボトムスのポケットに手を入れるという着こなしをされているようです。少しヤンチャな感じが今のトレンドであるストリートな雰囲気とマッチして、すごく今っぽい印象に仕上がっていると思います。

人気アイテムはシーズン前からチェックしましょう

今回ご紹介したアールエムギャングのベルベットノーカラージャケット、今年の9月末頃に入荷していますが、私自身は行きつけのお店で5月にはすでにチェックさせていただいておりました。

価格は8万0000円(+税)とかなり高額であったため、5月の時点でこのジャケットを買うことを決め、他のアイテムには目をくれず、入荷日をひたすら待ち続けました。入荷の連絡を受け次第、すぐに商品を見に行き、試着をしてめでたく購入となりました。

後で話を聞いたところ、こちらのジャケットはアールエムギャングの中でも一番人気だったらしく、入荷したお店のほとんどで即日完売となったそうです。やはり、人気のアイテムはシーズンの始まりとともに完売してしまうケースが多いですので、シーズン前からチェックして、ある程度、ターゲットを絞っておくのがファッションにおける買い物のコツのように感じます。

少し高めの金額ではありましたが、ひねりの効いた粋なジャケットをゲットできたので、今年はガンガン着ていきたいと思います。