しまむらがゾゾタウンに出店した本当の狙い【決算書】

企業が発展していくためには、新しい取り組みを始めねばなりません。総合衣料品販売で日本第2位の「しまむら」がZOZOTOWNに出店し、新たな挑戦を始めました。そもそもファッションセンターしまむらは、自前でECサイトを持っておらず、主に郊外に出店を重ねること規模を拡大してきました。出店数ではユニクロをも上回ります。頑なにECサイトをつくらなかったしまむらが、なぜ急にZOZOTOWNに出店を始めたのか? 決算書から分析してみましょう。

決算書は色々なことを教えてくれる。


https://www.shimamura.gr.jp/company/business/detail.php?id=50

しまむらのHPから、ターゲットは20代~50代の主婦とその家族であることがわかります。実際にしまむらで商品を購入している人はどのような方なのか、決算情報を通してより正確にしまむらの顧客像を把握します。

しまむらの売上と客数のデータ / 服1点当たりの単価


https://sslimg.shimamura.gr.jp/finance/file/65_04_gaiyou.pdf

しまむらの全店の売上は4461億4100万円、客数は1億6994万人。客数が日本の人口を超えていますが、これは何回もしまむらに訪れている方が多いということを示しています。しまむらファンを指す「しまラー」や何か掘り出し物を見つけるために定期的にしまむらに買い物に行く「しまパト」という造語があるくらいなので、確かに実態を示している数字だといえるでしょう。

次に、「売上÷客数=1家族当たりの売上」なので、これを割ると2625円。そして平均のお買い上げ点数は2.9点なので、割ると一つの商品当たりの価格は900円弱となります。つまり、しまむらの顧客は平均的に「一回の買い物で約3点の商品を2625円出して購入する」といことがわかります。そして、1点の単価は900円弱です。次にしまむらの売上比率のこの構成比を確認してみましょう。

しまむらでは平均して3点商品を購入されているのですが、2018年の売上高構成比によると、婦人衣料が売上の32%、肌着が24.3%で半分を占めています。つまり、これで2点。その他、「寝装具、紳士衣料、子供服」を合わせると売上の26.4%を占めます。これが最後の1点なので、買い物の内訳は平均的に「女性物1点、肌着1点、その他に男性物、子供服、寝装具の中から1点」ということになります。

まとめると、しまむらの顧客は「一回の買い物で婦人服と肌着を1点ずつ、そして他に男性物、子供服、寝装具の中からどれか1点の商品を、2625円出して購入して、商品1点当たりにはおおよそ900円弱を出す層」だと言えます。確かに、ここにハマる層はファミリー層は多いでしょう。

このように、決算書を読むときに、「顧客一人当たりの平均購買数」などをチェックすると実際の顧客像が浮かんできます。さて、ここまでが、「今までのしまむらの顧客像」です。

ZOZOTOWNに出品している服は今までの顧客層に合わない?


http://zozo.jp/shop/shimamura/

では、ZOZOTOWNに出店したしまむらの商品を見ていきましょう。こちらはZOZOTOWNのしまむらのページ。「ファッションセンターゾゾタウン」と、ZOZOTOWNの表記もわざわざしまむら風に作り変えるなど、力の入れ具合がうかがえます。さて、こちらで見て頂きたいのは服の構成とモデルの方。そして商品の価格帯です。

もともとしまむらは20代~50代の主婦とその家族をターゲットにし、実際の1点当たりの服の単価は900円未満という極端にファストファッションに偏った販売の仕方をしていました。しかし、ZOZOTOWNにおいては比較的若い層に向けられた商品構成となっており、大体価格は安くても1900円~と、いままでのしまむらからすればかなり高価格帯の商品が目立ちます。


http://zozo.jp/shop/shimamura/goods/31556344/?did=55320770

これは、しまむらの今までの顧客層とかなり異なり、むしろZOZOTOWNの顧客層に向けた商品構成を取っているといっていいでしょう。

詳細は省きますが、ZOZOTOWNのアクティブユーザー(過去一年間で買い物をしたユーザー)のメインは、1回の商品の購入で約4000円程度の買い物をする30代前半の女性です。このしまむらの商品は、どちらかというとそのZOZOTOWNの顧客に向けた商品が多くなっているのです。ZOZOTOWNに出店するのですから、これはある意味当然のことでしょう。しかし、見方を変えればしまむらが新しい顧客層の開拓に乗り出したと見ることができます。

しまむらの今後の方針とは?

実は、しまむらは2018年を「変革3年、完成の年」と位置付けて変革を推し進めていこうとしています。そして、その流れの一つとして今まで郊外に出店してきた方向性を変更し、新幹線沿い・商業集積地周辺という、より都心部に出店の重心を移そうとしています。

つまり、このタイミングでしまむらがZOZOTOWNに出店する意図は、より都心部への出店を本格化する過程で、しまむらのイメージを「安い」というものから、「安いのになんだかオシャレ」に変えていこう。顧客層の拡大を図ろう。そう考えているような気がします。そしてそのように考えているのであればZOZOTOWNに出店した理由もおぼろげながら理解できます。

ZOZOTOWNは服を販売、発送するまでを受託してくれる企業なので、しまむらにとってはECサイトの管理、商品の梱包、発送などの手間を省くことができます。そして、しまむらにとって今まで少し手薄だった顧客層がしまむらの服を見てくれる土壌が整っています。ZOZOTOWNに商品を卸して販売すると売上の30%近くの手数料を取られてしまうことになりますが、しまむらにとってこの新たな顧客層とEC方面の管理コストの低さは魅力的だったのではないでしょうか。

ただし、いずれにしてもしまむらにとっては非常に重要かつ大きな取り組みといえると思います。この取り組みとその意図が成功するのか? しまむらにとっては大きな挑戦をはじめたといっていいでしょう。

やなぎば

この記事を書いた人

やなぎば

身長168cm 体重63kg 靴26.0cm

「オシャレわかんねぇよ!」と叫んでいた所MB理論と出会いオシャレさんを目指し中。友人の「オシャレになったねー!」の一言が今の原動力です。