珍しいデザインが目を惹くソーイのウォームネックスウェットシャツをレビュー

ファッションの流行・トレンドは、少しずつ変化しています。数年前までトレンドの中枢にあったシンプルなアイテム同士を合わせてカッコよく着こなす「ノームコア=究極の普通」から、デザイン・シルエット・素材・カラーに工夫をこらしたアイテムを取り入れて着こなす「着飾るオシャレ=装飾性」に移り変わろうとしています。

ノームコアのトレンドの中で、定番アイテムとして定着した「スウェットシャツ」。ノームコア時代には、一切の装飾を削ぎ落した極めてシンプルなデザインのスウェットシャツが人気を博していましたが、装飾性のトレンドの中で、スウェットシャツにもいろんなデザインが盛り込まれるようになってきました。

一方で、ファッションアイテムにおいては、デザインが施されれば施されるほど、子供っぽい印象になりやすく、客観的に「カッコいい」とか「オシャレ」というイメージに繋がりにくくなる傾向にあるため、デザイン性の高いアイテムを選ぶ際には、上記の点に注意しながら選び取る必要があるでしょう。

今回の記事では、珍しいデザインが目を惹きつつも、大人っぽさも担保できるソーイのウォームネックスウェットシャツをご紹介させていただきます。

大胆かつ緻密なビッグシルエット

ソーイ(soe)は2001年の秋冬シーズンからスタートした日本が誇るブランドの1つ。デザイナーは伊藤壮一郎氏。ファッションに敏感な若い世代から、30~40代でも着ることができる稀有なブランドだと筆者は感じています。さて、今回ご紹介するスウェットシャツですが、仕上りはかなり大胆なビッグシルエット。

サイズ表記は「1」で、一般的なサイズ表記で表すと、S~Mサイズになります。詳細な寸法は、着丈:64cm、身幅:58cm、肩幅47cm、袖丈:65cm、袖幅(リブ部):9cm。特に身幅については、一般的なスウェットシャツよりも大きく設定されています。

具体的な数値で比較すると、ユニクロのスウェットシャツのSサイズの場合の身幅は51cmとなっていますので、本記事のスウェットシャツは約7cm程度も大きな作りとなっています。この身幅のおかげ、ゆったりとリラックスした印象をコーディネートに加えることができます。

シルエットにおいて特筆すべき点としては、袖のシルエット。袖とボディーとの付け根の袖幅は31cm、袖とリブとの付け根の裾幅は12cmと、袖先に向かうにつれて、袖幅が大胆に絞られていくシルエットとなっています。ファッションの印象は「首・手首・足首」の3ヵ所で決まると言われています。

このスウェットシャツは、身幅や袖幅が大きく、ビッグシルエットな作りとなっていますが、袖先がギュッと絞られえているため、腕の先端に位置する手首が「細い」という印象を持つことから、ゆったりシルエットが持つ「だらしない」イメージを軽減する役割を果たしてくれるでしょう。

一見すると、非常に大胆なシルエットになっているのですが、実は緻密に考えられているということを、何度か着ていく中で感じることができました。

随所に施されたデザインの数々

今回ご紹介するスウェットシャツには様々なデザインが随所に施されています。まずは、スウェットシャツのプリントについて。表側には胸の部分に「SOMEWHERE YOU BELONG」という文字がプリントされています。実は、このスウェットシャツはソーイと写真家 ” 森 健人 ” とコラボレートアイテムだそうです。

胸にプリントされた英文字の意味は「あなたが “属する / 調和する” どこかで」とのこと。服を着る人と、ある街の風景写真、日常では繋がらないモノが、洋服を通して繋がって調和する。そんなテーマが込められているそうです、こういう背景も知っていると、また違う角度でファッションを楽しむことができるのだと思います。

スウェットシャツの背中側には、写真家の森健人氏が撮影された写真がプリントされています。今回のスウェットシャツには、都会的でスタイリッシュな写真が使われています。

今回のように、大人っぽくてオシャレな写真がプリントされていると、「おっ!なんかカッコいい!」みたいな感じになりますし、これを選び取ったセンスも相まって、総合的にオシャレな印象を高められるような気がしています。大人な雰囲気と遊び心が見事なバランスで存在している背中ですね(笑)。

スウェットシャツの表面のお腹あたりには、スウェットパーカーによくみられるポケットのデザインが施されています。このポケットがあると、いかにもスウェットシャツ感が強まり、スポーティーな印象がコーディネートに加わります。見た目もさることながら、実際に使用しても手が温かくてほっこりするので、機能的な面でも十分に価値がありますね。

さて、デザイン面で一番のポイントは、首回り。一般的なスウェットといえば首元がクルーネックやパーカーが付いているのが一般的ですが、このスウェットシャツはネックウォーマーのようなデザインとなっています。

一見するとタートルネックのようにも見えますが、かなりゆったりとした作りになっており、首元の口に付いたスピンドルを絞ることで首元のニュアンスも変えることができ、いろんな着こなしにチャレンジすることができます。さらに、首元の口を絞ることによって風の侵入を防ぐ事が出来るため、防寒性も高めることもできます。

この「スウェットパーカーっぽいけど、パーカーじゃない」という点が、デザインとして非常に面白く、他人との差別化に繋がります。こういった定番アイテムをどのように捻り(個性)を加えるか、これこそが、デザイナーズブランドの腕の見せ所ですし、デザイナーズブランドの価値だと筆者は感じています。

ホワイトカラーが爽やか

今回のスウェットシャツ、カラー展開はブラック・ホワイトの2色展開となっていましたが、筆者は迷わずにホワイトカラーを選びました。一言にホワイトといっても、秋冬シーズンには少し発色の柔らかいオフホワイトが多かったりするのですが、こちらのスウェットシャツはまさに純白、発色の強いビシッとした白となっています。

また、この発色の良さのおかげで、爽やかさも十分に持ち合わせいます。黒系が多くなる秋冬のコーディネートの中で、この白が絶妙な抜け感と爽やかさを与えてくれます。また、顔周りに近いところに白があると、顔の印象も爽やかで明るいイメージを加えてくれる効果も期待できるでしょう。

ただし、やはり白の弱点は汚れが目立つこと。クリーンな印象を保つために、汚れが付かないように振舞ったり、こまめに洗濯をするなどの対応をしています。生地は綿100%のスウェットシャツなので、何度か洗濯をしていますが、生地のヘタレ等は今のところ起きてはいません。

ただし、やはりリブの部分は少し締め付け具合が弱まってきてしまいますが、これは一般的なスウェットでも同じことなので、致し方ないかと思います。

また、裏地は、フワッと毛の立った裏起毛を使用しています。裏起毛は非常に温かくて肌触りも最高に気持ちがいい。秋冬の寒い時期には、本当に温かくてほっこりします。意外と裏起毛のスウェットは、今時、珍しいようにも感じます。デザインもさることがながら、きちんと洋服としても機能も持ち合わせている、非常にありがたいアイテムですね。

Yラインシルエットにぴったり

上記の写真は、実際に着用したときのイメージになります。上述のとおり、こちらのスウェットシャツはゆったりとしたシルエットの作りに加えて、カラーも膨張色のホワイトをチョイスしているので、Yラインシルエットのコーディネートにぴったり。

また、着用時には、袖のたるみ具合が非常に独特な雰囲気を作り出してくれますが、袖先がギュッと絞られているため、そこまでルーズな印象になりません。このあたりのバランス感覚は本当に見事だなぁと着用してから気が付きました。首回りの見え方も、ありそうでない感じがとても個性的で面白い印象に仕上がっています。

デザインはスウェットシャツ、シルエットはゆったりであるため、ボトムスにはスラックスなどのドレスライクな印象が強いアイテムを合わせるほうがコーディネートのバランスが取りやすいように感じています。

定番アイテムに加える「一捻り」、そのアプローチの仕方にブランドの個性が出る

誰もが手に取る定番アイテム、これらに一捻りを加えることで「ベーシックなのに何か違う」と他人に思合わせることができ、この微妙な違いが積み重ねってコーディネートをよりオシャレなものに昇華していくと筆者は考えています。この一捻りこそが、ブランドの個性や実力が試されるものであり、デザイナーズブランドが存在する意義の1つでもあるように感じています。

今回ご紹介したスウェットシャツは、シルエットやデザイン、特に首回りの見せ方は、「ありそうでない」という絶妙なところを突いたアイテムだと思います。こういったアイテムは、やはり魅力的に感じてしまいますね。価格は2万3000円(+税)とスウェットシャツにしては少し高めですが、十分にその価値はあると思います。

ソーイにはこういった面白いアプローチのアイテムがたくさん提案されていますので、ぜひ、以下のリンクからチェックしてみてください。