パンクなのに上品!ソロイストのピンで一歩進んだオシャレを

今回はアクセサリーのご紹介です。と言っても、ブレスレットやリングのように直接身に着けるのではなく、洋服に着けるもの。

それも、着ける対象やつけ方についての自由度の高いものです。“地味”をもってよしとされた「ノームコア」トレンドの反動で、“脱地味”を目指す様々なトレンドが同時多発的に生まれている昨今。

人と違う方法で“脱地味”を図ることができるアイテムを、この秋冬のコーディネートに加えてみませんか、というご提案です。

パンク・ロックのファッション発のデザイン

http://ur2.link/FrFB

アイテムのご紹介に入る前に、前置きを少々。今回ご紹介するアクセサリーのベースとなっているデザインは「安全ピン」です。

安全ピンはもともと“反骨精神”を表現するパンク・ファッションの象徴的なアイテム。パンク・ロックのカリスマ的バンド、セックスピストルズをマネージャーが売り出す際に、ニューヨークで活躍するアーティストのファッションを採り入れたのがきっかけと言われています。

と、ここまで読んで「自分にそんなパンクの思想なんてないよ」と敬遠される方もいらっしゃるかと思いますが、ちょっとお待ちを。

上記のエピソードは、あくまでも安全ピンがファッションに採り入れられるようになった“きっかけ”についてです。ファッションに限らず、世の中に浸透しているすべてのものには原点があります。

原点となるものの背景にあった思想・信条や時代背景は、時間や空間を超えて一般に浸透する中でそぎ落とされて、形だけが残り、そこに新たな価値が付加されるものです。

例えば、今どきデニムを履いているから「労働者階級」だとか、ましてやカモフラ柄を着ているから「軍人」だとか、そんな評価にはなりませんよね。

それと同様に、安全ピンのデザインを身に着けているからといって、それが即「パンク」とか「反骨精神の持ち主」という評価にはなりえないというものです。

そして、特定の思想・信条をお持ちの方はさておき、現代を生きる我々にとってファッションとは、「さまざまな文化的・思想的背景を原点にもつアイテムをいかに組み合わせるか」を楽しむもの。

例えば、スケーターのようなパーカーの上に、英国紳士のようにジャケットを着て、米軍で着られていたモッズコートを羽織り、労働者階級の仕事着だったデニムを着用し、アスリートの商売道具であるスニーカーを履く。

このように様々な文化がミックスされたコーディネートの中に、パンクの象徴だった安全ピンが加わる、それだけのことです。

そして今回ご紹介するのは、「タカヒロミヤシタザソロイスト」なるブランドのアイテムです。このブランドは、日本を代表するブランド「ナンバーナイン」を創業したデザイナー、宮下貴裕氏が設立したもの。

「独奏家」を意味する“ソロイスト”をブランド名に冠するだけあり、宮下氏のデザインはしばしば音楽と密接な関係にあります。

つまりこのアイテムのポイントは、パンク・ファッションの代表的なモチーフである安全ピンを宮下氏がいかにエレガントに再構築したか、という点にあります。

モチーフと裏腹に洗練されたデザイン

さて、ここからが本編です。「BONE SHAPED PINS」という商品名の通り、このピンは骨(形状的に恐らく上腕骨)がモチーフになっています。

「安全ピンはパンク・ファッションの代表的なモチーフ」と上述しましたが、同様に「髑髏」も“反戦”というメッセージが込められた、パンク・ファッションの象徴的なモチーフです。

「やっぱりパンクなアイテムじゃないか」というツッコミは正しくもあり、そして不適切でもあります。原点を踏まえたファッションアイテムは自然で、かつ説得力があります。

逆に、原点への視点が欠けているファッションアイテムは、デザイナーがよほどの創意でも込めない限り嘘くささが見えてしまいます。特にメンズファッションにおいて求められるのは、“さりげない装い”。

つまり自然であること、嘘くさくないことは重要です。一方で、さりげなさを前提としたコーディネートの中にこのアイテムを組み込むわけなので、そもそもこのアイテムを単体で見て「パンクであること」を問うこともまた意味のないことです。

思想的な見方を離れて、コーディネートにおける実際的な価値に目を向けるとしても、骨をモチーフにしていることには価値があります。

そもそも長辺7.5cm、短辺1.8cmと、安全ピンとして見れば大きいものですが、絶対的なサイズとしては決して大きくないこのアイテム。たとえ身に着けている人の目の前に立ったとしても、ひと目で「骨のモチーフ」とはわからないはずです。

しかしその曲線的なラインで「単なる安全ピンじゃなさそうだな」ということはわかります。逆に言えば「この人の服に安全ピンがつけているけど、服に穴でも開いているのかな」という見え方にはならない、ということです。

一方で、この曲線が生み出す優美なフォルムのおかげで、無愛想な、そして無骨な文房具としての安全ピンとは異なる印象に仕上がっています。

素材は真鍮ですが、鮮やかな銀の輝き。そしてよく見れば、骨をモチーフにしているためか表面にも微妙な凹凸がつけられており、職人の手仕事の精巧さが伝わってきます。

総じてパンクなモチーフでありながら、パンクの激しさとは一線を画した、それでいてチャラさをみじんも感じさせない、大人のオシャレ感を醸し出しているのです。

コーディネートを邪魔しない強力なワンポイント

さて、肝心の使い方です。このピンは普通の安全ピンと違って針が太いため、この針を洋服に刺して使うことは、あまりオススメできません。このピンを外した跡に、大きな穴が残ってしまうためです。

なので、もともと穴のあるところにピンを通す方が望ましいと言えます。その点で最も簡単なのは、ジャケットのラペルについているフラワーホールを活用すること。

さりげなく目を引く独特の存在感が、いつものコーディネートを底上げしてくれることでしょう。なお、ユニクロ等で売られているリーズナブルなジャケットの場合、フラワーホールに穴があいていない場合があります。

そんな場合、このピンの針を使って穴をあけるのではなく、別の道具で先にきちんと穴をあけてからこのピンを通すことをオススメします。

このピンの太い針で穴をあけるのはなかなかに力が要る上に、力を入れ過ぎると、ピンが曲がってしまうリスクがあるためです。

もうひとつ、上級編の使い方をご紹介します。それはピンとチェーンを組み合わせて、腰周りの装飾に用いるというもの。“脱地味”トレンドの一環で、この秋はウォレットチェーンが復活の兆し。

ウォレットチェーンはベルトループを“始点”にして、ポケットを“終点”とする使い方が一般的ですが、この使い方では敢えて“終点”をポケットにせず「チェーンを通したこのピンを垂らす」のです。

http://u0u1.net/Fm4G

これはブランドの公式なルックに採用されてる使い方です。とはいえ、ブランドとしてこの使い方を特に推奨しているというわけでもありません。使い方は本当に自由。

そしてどんな使い方をしても、コーディネートを素敵に彩るワンポイントとなること間違いなしです。

ただ、個人的にオススメしないのは、ストール等を留めるために用いられる“カブトピン”として使うこと。

特にこのように柄のあるストールだと柄の中に埋もれてしまって、せっかくのピンの存在感が消えてしまい、もったいないことになります。

また、編み目のゆるいストールを選ばないと、上述の通り針が太いために、修復不能な穴があいてしまいます。どうぞご注意を。

在庫僅少。全国のセレクトショップから発掘しよう。

このアイテムは3サイズ展開。筆者が購入したのはMサイズです。
L :長辺9cm短辺2cm(税込16,092円)、M:長辺7.5cm短辺1.8cm(税込10,692円)、S:長辺5.5cm 短辺1cm(税込7,452円)

なお、Mサイズは筆者による実測値。、LとSサイズは店舗による測定値です。ゾゾタウンでMサイズのみ取り扱われていますが、8月中旬に一旦完売。

その後1点だけ入荷して、またすぐに売れてしまっている、といった状況です。また入荷するかもしれませんが、大量入荷は期待できません。

一方、商品名で検索をかけると、全国各地のこだわりの強そうなセレクトショップで扱われているのがわかります。しかしL・M・Sの3サイズ、全てがそろっている店は見当たりません。

諦めずに探してみてください。本稿の最下部の商品名のリンク先には、2017年8月26日時点でMサイズの在庫ありのセレクトショップを設定しています。

上質な作り手の創意で、周りよりも一歩先へ。

今回ご紹介した“洋服に着けるアクセサリー”は、ファッションのベースが整っていればこそ映えるものです。ファッションのベースとは、ドレスとカジュアルのバランスがとれた、“大人の男”にふさわしいコーディネートのこと。

日本を代表するファッションデザイナーが手掛けた逸品が、ただでさえオシャレな読者諸兄の装いに、プラスアルファの価値をもたらしてくれることでしょう。
※ドレスとカジュアルについてはこちらをご参照ください。http://www.neqwsnet-japan.info/?p=1810

EQ03

この記事を書いた人

EQ03

身長178cm 体重64kg 靴27.0cm

洋服を“食”と共に、「コミュニケーションを最適化するためのツール」と位置付けています。物産展マニア。国内外を問わず、地域・人に根差した物語性のあるモノ・コトに惹かれます。コーディネートはワイルドよりもきれいめを。