【企業分析】ステュディオスを擁するTOKYO BASEは1000億円企業になる日はくるのか?

TOKYO BASEは、2016年から2017年にかけて株価が10倍になるなど、その成長率が著しい企業として着目されました。そして、2018年。売上の増加は続いているものの、半期目に初の減益。株価も低迷してしまい、我慢の一年になってしまいました。

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しかし、実際に財務諸表を見てみると、赤字になったわけではなく、健全な財務状態をキープすることができている状態です。そのような企業がなぜ減益しただけで株価が大きく下がってしまったのでしょうか? その理由の一端は、財務諸表を見てみると浮かび上がってきます。

2019/2期の経営成績を確認。売上は成長を続け、企業の安全性は抜群だが……?

簡単に今期の財務諸表を見てみましょう。売上は増加が続き、損益構造を見ても、減益となった期であるにもかかわらず、税引き後の利益率で7%をキープしています。他のアパレル上場企業が何とか利益を捻出しているのを考えると、非常に利益率は高いと言えるでしょう。

また、企業の財産目録であるBSを確認しても、TOKYO BASEは非常にキャッシュリッチ。資産の半分近くが現預金であり、安全性には何ら問題がありません。

ただし、企業の現金の流れを示すキャッシュフロー計算書を見てみると、少し面白い事実が浮かび上がってきます。株式の配当です。通常企業は上場後、株式を購入した投資家に向けて、税引き後純利益の中から配当を行います。

例えば、ZOZOのキャッシュフロー計算書を見てみると、この配当金が現金流出の最も大きなファクターになっています。

これに対し、TOKYO BASEの配当金を見てみるとその金額はゼロ円。TOKYO BASEは配当を行わない無配当企業なのです。これは、「配当を行わない代わりにその分現金を投資に回して、企業を成長させていく」というメッセージとして投資家に受け取られます。

加えて、TOKYO BASEは「日本発のファッション・コングロマリットになる為に、長期的に売上1000億円を目指す」と宣言しています。

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この目標と配当の政策を考えると、TOKYO BASEは当面売上1000億円をめざし、配当も行わずに成長に向かって突き進むことが求められます。その姿勢と実際の成長率の高さがTOKYO BASEの魅力だったのでしょう。

だからこそ、無配当にも関わらず株価は大きく上昇した。しかし、成長スピードが緩んでしまったように見える今期の売上は139億円。1000億円にはまだまだ成長が必要なこのタイミングで成長が緩み、かつ減益となってしまったというのは、無配当のまま成長していくというという姿との乖離があります。

このような背景が、依然として優秀な財務状況にあるTOKYO BASEの株価を押し下げ、TOKYO BASE全体が我慢の一年になった要因の一つであるように思います。

1000億円という目標はどれくらい高い壁なのか?

では、1000億円という目標はどれくらい高い壁なのでしょうか? この額は大きすぎて、体感的に非常につかみにくい額です。そこで、実際にどれくらい高い壁なのかを検討する為にブレイクダウンを行っていきましょう。

この目標は長期目標に位置付けられており、具体的な達成のためのロードマップは公開されていませんが、昨年の決済発表時に「STUDIOUS(以下STと表示することもあります。)」「UNITED TOKYO(UT)」「PUBLIC TOKYO(PT)」の3ブランドで300億円ずつを目指すという記述があります。

また、谷社長のブログでは1000億円の内ECで500億円という記述があったため、それを使って推計していきましょう。

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各ブランドの目標売上額はSTUDIOUS 300億円(うちEC150億円)、UNITED TOKYO 300億円(うちEC150億円)、PUBLIC TOKYO 300億円(うちEC150億円)。1000億円に比べると少し細かくなりましたが、まだまだ非常に大きな額です。

この年間売上を日割り計算してみましょう。すると、300億円達成のためには各ブランド一日8200万円の売上が必要だということが分かります。

各ブランドで1日平均8200万円。この目標はどうすれば達成可能となるのでしょうか? 具体的にTOKYO BASEの売上を因数分解してみましょう。TOKYO BASEはどんなに大きくなってもアパレル企業。その売上は最終的に顧客が洋服を買ってくれるため発生します。

つまり、TOKYO BASEの売上は、「売上=商品単価×購入回数」というふうに因数分解できます。各ブランドは、この商品単価か、購入回数のどちらかを改善して売上を伸ばさなくてはなりません。

TOKYO BASEは各ブランドの単価を開示していますのでそれを利用し、購入回数を改善して、売上を増加させることが可能かを見てみましょう。

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上記の単価をベースに、1日8200万円を売り上げるための顧客の購入回数を計算すると、STUDIOUSは実店舗で2054回、ECで2935回。商品単価が若干低いUNITED TOKYOとPUBLIC TOKYOはそれ以上に販売しなければなりません。

このように、売上を各ブランドが一日に必要とする購入回数まで分解すると、TOKYO BASEの一日の販売目標は店舗で2000~3000回、ECサイトは3000~3500回程度求められることになります。

現在のTOKYO BASEの現状と、目標までの距離

目標の売上高と、それに対する一日の目標については明確になりました。ではこれに対して、TOKYO BASEは現在どのような成績なのでしょうか? 購入回数の目標と現在地を比較してみましょう。

PUBLIC TOKYOはスタートしたばかりの立ち上げ期ですので、まだまだ成長していくと思いますが、立ち上がり期は過ぎているSTUDIOUSとUNITED TOKYOの両ブランドも、現在の購入回数と目標とする購入回数では大きな開きがあります。

この差を埋めるためには何かを変えないといけないのでしょうか。それとも、現在の売上の成長を続けていけばいいのでしょうか。これを検討する為、まずTOKYO BASEが出店戦略もビジネスモデルも変更せず、このままの成長を続けていくと仮定した場合どうなるのかを検証します。

上記は2016~2019年のSTUDIOUSとUNITED TOKYOの購入回数の成長度を示しています。例えば、STUDIOUSの実店舗の購入回数の2016年から2019年までの平均的な成長率(CAGR)は12.81%です。

このペースで継続的に購入回数が増えていくと仮定すると、STUDIOUSの目標とする購入回数は、9年後にならないと達成できないことになります。

長期的な目標であるとはいえ、成長率を維持できると仮定しても目標に到達するために10年近くかかるという結果は、「現状を何も変えずに目標である1000億に到達するのが現実的ではない」という事だと思います。

恐らくTOKYO BASEは、より成長速度を上げていく為にリスクを取って成長戦略を取っていく必要があると思います。

TOKYO BASEの今後の打ち手

では、一体どのような打ち手が必要になってくるのでしょうか。ECは現在もZOZOでの販売が主流のようですが、ZOZOでTOKYO BASEの商品を購入する客がいきなり5~8倍増えるとは考えにくいため、自社ECを強化していかなくてはなりません。

一方店舗販売は、いきなり既存店舗の売上を3~5倍に増やすことは不可能ですので、店舗数を増やす、又は大型店舗化していくという方向性が考えられます。

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TOKYO BASEの実際の重点取り組み事項を見てみると、STUDIOUSは「上海店の出店、ECの強化」、UNITED TOKYOは「旗艦店の出店や海外事業の拡大」、PUBLIC TOKYOは「店舗数の拡大」と、ECの強化・店舗数の増加や店舗の大型化といった施策が並びます。

これらは明らかに売上高を増加させるための施策ですね。このような施策を見てみると、やはりTOKYO BASEも現在のままの成長率では物足りないと考えていると見て間違いないのではないでしょうか。その中でも、今回最も力が入っているように見えるのがSTUDIOUSの上海への進出です。

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2019年の8月にSTUDIOUSの旗艦店が上海に出店するようなのですが、その大きさは80坪。TOKYO BASEが国内に持つ最大店舗と同じような大きさであることからも、TOKYO BASEの上海店の力の入れようが伺えます。

また、UNITED TOKYO及びPUBLIC TOKYOの出店も検討されているよう。中国市場への力の入れ具合が非常によく分かりますね。事実、中国は他の日本企業も進出を狙っている、今非常にホットな市場です。

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別企業のスライドとなりますが、今期の決算でZOZOの開示した中国ファッション市場の現状を見てみると、小売の市場規模は2018年時点で35兆円。

EC化率は35%。成長率も高く、年間のファッション消費額が依然と比べて4~5倍に増加しており、非常に大きい市場になっています。しかも成長の主役となっているのが10代後半~30代向けの「潮牌(最先端のブランド)」だそう。

ブランディング次第ではありますが、この層は日本のTOKYO BASEの顧客と非常に近いように思います。この波にうまく乗ることができれば、先ほど確認した購入回数、ひいては売上高を大幅に成長させることも可能かもしれません。

もちろん海外進出というのは商習慣も顧客の嗜好も日本とは全く異なる非常に難しい挑戦ですし、現に多くの日本企業が挑戦して失敗しています。リスクも高いうえ、すぐに結果が出るという類のものではありません。

しかし、この大きな市場に対してアプローチするのは、TOKYO BASEにとって非常に大きな意味のある挑戦ではないでしょうか。今後のTOKYO BASEは国内の販売状況だけでなく、海外の販売状況も注目すると非常に面白いですね。

中国市場をフックに、今後成長を加速させていく事ができるか。今後もTOKYO BASEに期待したいと思います。

やなぎば

この記事を書いた人

やなぎば

身長168cm 体重63kg 靴26.0cm

「オシャレわかんねぇよ!」と叫んでいた所MB理論と出会いオシャレさんを目指し中。友人の「オシャレになったねー!」の一言が今の原動力です。