一昔前ならば「安かろう悪かろう」といわれたユニクロも、今では高品質低価格の代名詞的な位置づけとなりました。それはフレンチリネン100%のシャツや、カシミヤ、スーピマコットン、カイハラデニム、クラボウ、リバティプリント……など、その価格ではありえないような商品開発の結果でしょう。
またそうした素材だけではなく、ジルサンダーやJ.W.アンダーソン、トーマス・マイヤーなど世界のトップデザイナーとコラボし、注目を集めています。
その中でも、ラコステの立役者であり元エルメスのデザイナークリストフ・ルメールとのコラボ「ユニクロU」は、フリマサイトでプレ値がつくほどの勢いであり、注目されています。
しかしこの今ではおなじみになってきた「ユニクロU」ですが、当初は呼び名が違ったのをご存じでしょうか? ルメール氏のデザインということは相変わりありませんが、Uラインではなく、「UNIQLO AND LEMAIRE (ユニクロアンドルメール)」とされて2回だけリリースされていたのです。
今回は、この「UNIQLO AND LEMAIRE (ユニクロアンドルメール)」の最後の商品でもあった「キャンバススリッポン」についてレビューします。
これはユニクロ史上でも名作中の名作とも呼び声高いのですが、なぜそこまで「たかがスリッポンごときで」ここまで名をあげたのか、その理由を「1. デザイン」「2. シルエット」「3. カラー(素材)」に分け、徹底解剖いたします。
一見シンプル、超ミニマル・デザイン
まずはデザインから見ていきましょう。スリッポンと言いますとバンズのものが有名ではあります。
(参考 VANSのスリッポン)https://goo.gl/RcxNvZ
この形ですね。他にもスリッポンと言いますと、
(参考 一般的なスリッポン型のビジネスシューズ)https://goo.gl/mV9rQ8
このようなビジネスシューズですとか、
(参考 一般的な形のローファー)https://goo.gl/d2asiH
こうしたローファーもスリッポンのカテゴリに所属します。紐がなくて切り替えしが少ない靴、というようなイメージで結構でしょう。
切り替えしが無いと、どのような印象になるのか。それは革靴をイメージするとわかりやすいかもしれません。日常で、最もフォーマルなシーンは基本的に冠婚葬祭ではありませんか? その時に用いるのは、切り返しの多い靴よりも切り返しのない靴でしょう。
(参考 切り返しの多い靴)https://goo.gl/NUhYcX
(参考 切り返しの少ない靴)https://goo.gl/GCjYCM
これは何も切り返しがあることが悪い、というわけではありません。単なるTPOの問題です。
では、今回のユニクロのスリッポンに戻りましょう。こちらはかなりシンプルでミニマルに仕上がっています。と言うのもまず、切り返し、つまりデザイン性がほとんどあり得ません。
先ほどのVANSのスリッポンは、色こそオールブラックでは無いにしろ、ステッチが入っていたり、ロゴのタグがついていたりとデザインが入っているのがわかります。
対して、ユニクロは一枚の布で作られたかのようなデザインになっています。つまりデザイン性が無いことがデザインになっているのです。
発売当初はノームコアのトレンド真っ盛りでしたので、この「究極までにシンプル(ミニマム)」なデザインは頷けます。しかし、現在はノームコアからの脱却を図るトレンド。
これぐらいミニマムなデザインになっていると、ちょっとトレンドと合わないんじゃ無いか?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、ここまで落ち着いていれば、コーディネートへ与える影響が少ないため、どんなトレンドでも使える定番品と言っても過言では無いでしょう。
また、スマートにスタイリッシュに見える要因に、ソールの薄さも影響しています。
ここでいうソールは中敷を指すインソールではなく、見た目に影響しているアウトソールの方です。このアウトソールが厚いと、靴自体の主張となり、結果として足元に目が行くことになります。
そうすると、一見、靴単体ではカッコよく見えたとしても、履いてみるとなんだかスタイルがよく見えない、といった現象につながりやすいので注意が必要です。
そういった点でもミニマルに抑えたソールのデザインによって、履いてもサマになりやすいものとなっています。
スニーカーらしからぬ、革靴よりもドレッシーで色気のあるフォルム
続いてはシルエットです。通常のスニーカーは、トゥと呼ばれるつま先の部分がポテッと丸っこくなっていることが多いです。
(参考 トゥが丸っこいスニーカー)https://goo.gl/tnwijc
しかし、ルメールのスリッポンはトゥが革靴のように細くなっています。
www.uniqlo.com/jp/store/goods/176886-09
しかも、ただ単に細いというだけではないのがミソです。単に細さを突き詰めてしまうといわゆるトンガリ靴になってしまい、ホストのようなイメージに近く、街着としては不自然な印象になってしまいます。
ですが今回のスリッポンのつま先をよくよく見てみますと、先が三角形にとんがっているのではなく、緩やかなカーブを描く四角形のように見えるのがお分かりいただけるでしょうか。
この尖りすぎていないスクエアトゥのおかげで、スニーカー、スリッポンの中でもスタイリッシュに、かつトンガリ靴のような嫌味な印象のない絶妙なデザインの止揚に達しているのです。
幅もこちらは細身となっています。筆者の足のサイズはニューバランス直営の店舗にて計測していただいた数値によると27.5、ワイズはDです。
公式ページによると、このようにワンサイズほどあげるのがオススメとありますが、筆者の場合は27だとやや小さく、通常通り27.5でジャストでした。
スリッポンは、特にキャンバス地のものは伸びると言われれいるのでやや小さめを選ぶ方がいらっしゃるかと思いますが、こちらはデザインとして細身ですので、ジャストサイズを選ぶのがいいかと思います。
適度なハリ感のキャンバス地
最後に生地についてです。多くのカジュアルスリッポン同様に、キャンバス地となっています。すごくハリ感のある上質生地とまではいかないものの、約2年弱ほどは問題なく使用できるものとなっています。
邪道かと思いますが、洗濯機に入れ洗濯してみました。
すると、このように真っ白に……。ではなく、二足持っているうち、白色の方を洗濯したものです。やや中央にシワが寄ってしまいましたが、そこまで型崩れすることなくく使える状態です。また、シューツリーを入れても、ほぼ元に戻ります。
こちらのスリッポン、色は先ほどから出している黒色と、そしてこの白の二色展開です。キャンバス生地のため、着こなしによっては、白の方はやや体育シューズやバレエシューズのように見えてしまうかもしれません。
特に白は欲を言えば、レザーであれば最高でしたが、それが気になる方は黒色の方が生地感が目立たなく、安っぽい印象にはならないでしょう。
スリッポンなのに、歩行は快適
多くのスリッポン型のシューズは履きやすいけれど、通常のスニーカーよりは歩いていると疲れてしまい、一日履いているのは不可能ということが少なくありませんでした。
しかし、このようにしっかりしたインソールが付属しているため、1日歩いていたしてもそこまで疲労を感じさせません。この中敷だけで1000円ぐらいするのでは、というほどです。
伝説が再び……?
さて、なぜ2年ほども経って今、このキャンバススリッポンをレビューしているのか、疑問に思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。その理由はこれです。
スマートフォンサイトからは確認できませんが、PC版とアプリ版では2018年3月現在、「近日入荷予定」となっております。
フリマサイトやオークションサイトでプレミアム価格がついたほどの商品。この代替え商品が、現在の市場でもなかなか存在しなく、いまも需要があることがこの靴を見ていけば頷けます。
これが再び販売されることになると、2990円(+税)でこのクオリティでは、ほぼ間違いなく最高のコストパフォーマンスを誇るシューズとなるでしょう。
実は、ジルサンダーとのコラボ+Jラインのスーツも、この状態になった後に販売されました。誤表記かどうかは定かではありませんが、期待せずにはいられませんね!