ユニクロは服を売っているのではなく情報を売っている!?【会計情報】

ユニクロを運営するファーストリテイリング。筆者は「安い。でもオシャレなものもある」「ベーシックなものが多い」「ずっと前から順調に成長し続けている大企業」といったイメージを持っていました。しかし、直近のファーストリテイリングのIR情報を読むと、自社を一風変わった定義にしています。それは、「情報を商品化する企業になる」というもの。

今までのファーストリテイリングの決算書を読むと、「最先端の情報を集めて、商品を企画し、製造販売する」というように、情報とは「洋服のデザインに落とし込んでいくもの」として取り扱っていました。また、それが功を奏して発展してきました。しかし、今後はそこから一歩進んで「情報を商品化する」という業態に変えようとしているのです。

しかし、「情報を商品化する」とは非常に抽象的な言い方です。具体的にはどういった事を指すのでしょうか。この言葉を読み解くヒントもまた説明会資料にありました。

ファーストリテイリングの「情報を商品化する」とは?

これは2017年の有明プロジェクトの発表の際に使用されていたスライドです。ここで情報製造小売業について説明がなされています。このプロジェクトの目下の関心は、「無駄なものをつくらない」「無駄なものを運ばない」「無駄なものを売らない」ということ。その為に、顧客の購買などの情報をスマホのアプリを通して「見える化」しようとしています。

小売業は顧客がどれだけ来客しているか、どの層がどの商品をどれだけ購入しているのかといった情報が取りづらい業界です。それを顧客にアプリを使ってもらうことで、どの商品が、どの地域でどれだけ販売されているかなどのデータが蓄積されていきます。そして生産や物流、店舗などもデータ管理を徹底することで、サプライチェーンをすべて「見える化」しようとしているのです。

上記の画像のように、情報のプラットフォームをつくり、顧客の購買動向やアプリの閲覧履歴などのビックデータを用い、求められているものを求められているだけ提供しようということなのです。

現在のユニクロやGUのオンラインストアでは売れ筋の商品が欠品していることがあります。一方で売れない商品も多く、週末にはセール用のカゴに大量に投げ入れられています。このような事態は企業にとって大きな損失。こういった状態を減らし、作ったものを確実に顧客に届ける施策を行おうとしているのです。

今後、ファーストリテイリングで注目すべき会計情報はROAという指標

顧客が欲しいものを欲しい分だけ作る。消費者から見ても質の高い良品がちゃんと売られているといったメリットの大きい施策ですが、うまくいっているかどうかを判断するためには、ROAという指標をチェックするとよいでしょう。このパーセンテージが上昇するほど、ファーストリテイリングの「情報を商品化する」という取り組みが成果を上げている指標になります。ROAとは、会計の指標で総資本利益率と呼ばれています。これはファーストリテイリングのホームページにも掲載されている情報です。

このROAとは企業の経営資源を効率的に利益に変えることができているか?という事を測る指標だといわれていますが、この式を組み替えると、「利幅がどうなっているか?」「資産の効率性はどうか?」を判断するための指標となります。

上記がROAを求める公式なのですが、これを下記のように組み替えてみます。

当期純利益と総資本の式に、「売上収益」を組み込むだけです。すると、図のA「当期純利益÷売上収益」とB「売上収益÷総資本」に式が分解できます。一見難しいもののように見えますが、Aは利益率、Bは資産回転率と呼ばれるもので、それぞれ「利幅がどうなっているか?」「資産の効率性はどうか?」を判断する指標になります。

なぜこの数値をチェックしておくと情報製造小売業への取り組みが成功していることになるかというと、商品を必要なだけ作って売れるようになると、値下げの必要がなくなり、商品の在庫を抱えることが少なくなるからです。そうすると結果として、利幅が大きくなり、資産の効率性が高くなるため、このROAの指標が上昇していきます。

実際の直近3年分の実際のファーストリテイリングの売上収益などの財務情報を使ってROAの仕組みを見てみましょう。

最も低い年は2016年の4.0%ですが、その理由はAの数値が低いことです。これは「親会社の純利益」が他の3年よりも低く、結果として「利幅が小さかった」という事が要因です。また、最も高かった2015年ですが、他の3年と比べると少ない資産で売上収益を効率的に上げており、Bの数値が高くなっています。これは、「資産の効率性が高かった」という事が要因です。

情報製造小売業への取り組みが成功したとすると、値下げの必要がなくなるためAの「利幅」をしっかりと確保できるようになり、商品在庫が限りなく低くなってBの「資産の効率性」が上昇していきます。結果としてこのAとBの要因の両方が上昇し。ROAの指標が上昇していくことになります。ROAはザックリとした指標ですが、企業が継続して発表している指標でもあるため、継続的にチェックしやすい指標です。今後ファーストリテイリングの業績を見ていくとき、情報製造小売業としての取り組みが功を奏しているのかを確認するためには、このROAを継続的に見て頂くと面白いでしょう。

ファーストリテイリングが売っているのは、服ではなく情報である!といった時代が本当にくるのか、今後もチェックしていきたいと思います。

やなぎば

この記事を書いた人

やなぎば

身長168cm 体重63kg 靴26.0cm

「オシャレわかんねぇよ!」と叫んでいた所MB理論と出会いオシャレさんを目指し中。友人の「オシャレになったねー!」の一言が今の原動力です。