【決算書】売上2兆円を超えたファーストリテイリングは世界を制することができるのか?

「日本のアパレル界の巨人」ユニクロとGU率いるファーストリテイリングの売上が2兆円を超え、ついに世界一も見えてきました。
発表された財務諸表を紐解いていきましょう。

PL編ファーストリテイリングはどれだけ儲かったのか?

経営成績から見ていきましょう。売上2.1兆円、営業利益2362億円、税引き後当期純利益1548億円で、いずれも前年の業績を全て上回っています。

ファーストリテイリングは売上収益が毎年伸びていっています。財務諸表分析の一つの方法としてある年度を基準としてどれだけ売上が伸びているのかを測る方法があるのですが、それを用いてもファーストリテイリングは2013年に比べて186%の伸びを記録しています。

しかも、ファーストリテイリングがすごいのは売上収益、売上原価、販管費の関係です。売上原価は売り上げた服の原価を指します。販管費は売るために掛かった費用です。テレビCMや店舗の地代、人件費などが計上されます。

この売上収益と売上原価と販管費の成長率がほぼぴったりに連動します。これは、ファーストリテイリングは売上計画のコントロールが非常にうまくいっていることを示しています。

例えばこちらは別の上場しているアパレル企業です。2013年から4~5倍の規模になっていますが、売上原価の伸びが売上より高いことが分かります。

このように、売り上げ、売上原価、販管費を同じように成長させていくのは上場企業でもなかなか難しい。ファーストリテイリングの強みは色々言われていますが、この販売計画の精緻さも強みの一つに挙げてもいいかもしれません。

今まで全体像を見てきましたので、部門別にも売上を見てみましょう。白い部分が国内ユニクロ、赤い部分が海外ユニクロです。国内ユニクロは8647億円、海外ユニクロは8963億円と、海外ユニクロが国内ユニクロの売上を逆転しました。海外ユニクロが現在の成長ドライバになっている事は間違いないですね。

また、先ほどのように成長率を見てみると海外ユニクロは圧倒的です。国内ユニクロの成長率と比較してみましょう。

ユニクロは早くからグローバルブランドを目指していましたが、既に名実ともにグローバルブランドとなったのではないでしょうか。

また、こちらの図は世界地域別の販売高。中国の売上が4400億と、非常に大きなマーケットになっています。現在ファーストリテイリングの全店舗数はなんと3667店舗。途方もない数字ですが、まだまだ店舗数を増やしていく事になるでしょう。ファーストリテイリングのライバルはより多数の店舗を持っているからです。

ファーストリテイリングのライバルは以前から世界企業

実はファーストリテイリングはIR情報の経営方針に「業界でのポジション」を開示している珍しい会社です。そこに並ぶのは、Inditex(ZARAを運営する会社です)やH&M。特にInditexは2018年1月の時点での売り上げが3.33兆円と、2兆円を超えたユニクロにいまだに1兆円の差をつけています。

しかも、Inditexはスペインの会社ですが、売上の構成比はスペインは約5500億で16%程度しかなく、その他の売上が圧倒的に多いです。

出典 goo.gl/mgPg3j

店舗はファーストリテイリングの2倍近くの7422店舗もあります。

世界一を見据えているファーストリテイリングは、この企業に勝つために今後も海外事業を強化していく事になるでしょう。

BS編

続いて資金をどうやって調達し、どのように投資しているのかBS(バランスシート)を見てみましょう。現金や在庫を示す流動資産が+5,404億円、銀行の借り入れや社債の発行を示す負債が+4,242億円と大幅に増えています。

原因は、流動資産は現金と在庫の大幅な増加。負債は社債の発行のようです。

流動資産の内訳を見ると、在庫の+1751億円という大幅な伸びが少々気にかかります。というのも、2013年から見てみると今年度は急激に棚卸資産が増加しているからです。

在庫として計算するタイミングの変化とコア商品の多めの発注などが原因と書かれていますが、情報製造小売業の目的の一つに在庫の適正化があげられています。今後、この棚卸資産はどのように推移するのでしょうか。今後のファーストリテイリングは在庫の額は継続してチェックしておいた方がいいかもしれません。

現金も+3158億と大幅に増えています。今年度の税引き後の利益は約1550億でしたので、今期稼いだ額の倍近い現金が増えています。その原因をCF計算書(キャッシュフロー計算書)で確認しましょう。

CF計算書

まず初めに、投資活動によるCFが営業活動によるCFの範囲内で行われているかどうかをチェックします。この差額はフリーキャッシュフローと呼ばれ、しっかり投資をしたうえでフリーキャッシュフローを稼ぐ企業は企業価値が高いと言われています。

(ユニクロはこのフリーキャッシュフローを1192億稼いでいます)

現金の増加は3158億でしたが、その内フリーキャッシュフローの増加は1192億。残りは社債の発行などによる1982億円です(15億円ほど円換算などの際に目減りしていますが、大した額ではないので無視してください)。

最後の財務活動によるCFの増加+1982億円。財務活動によるCFの増加は銀行からの借り入れや社債の発行で、返済していく必要があります。投資は事業で稼いだお金の範囲で行われているにも拘らず、なぜこれだけ多額の金額の社債を発行したのでしょうか。

今期決算書から考える。ユニクロは世界一を狙えるポジションについた

ここからは筆者の予測になるのですが、ファーストリテイリングは海外ユニクロの売上が国内ユニクロの売上を超えたことをきっかけに、さらに積極的に海外事業に乗り出すのではないかと思います。その為の資金調達ではないでしょうか。

中国だけでなく、インドやベトナムなどのより多くのアジアの地域。更にはオランダやスウェーデンなどのヨーロッパへの出店。さらにこの流れを加速させるための原資としてこの調達を行ったのだと思います。それは、本格的にファーストリテイリングが世界一を狙う土壌がと整ったという事でもないかと思うのです。

やなぎば

この記事を書いた人

やなぎば

身長168cm 体重63kg 靴26.0cm

「オシャレわかんねぇよ!」と叫んでいた所MB理論と出会いオシャレさんを目指し中。友人の「オシャレになったねー!」の一言が今の原動力です。