今回ご紹介するのは、ユニクロのレディスアイテムとして販売されているトレンチコート。トレンチコートは普遍的なアイテム。
毎年様々なブランドで展開されていますが、ともすれば仕事着っぽい印象が強すぎたり、重厚すぎるディテールが街着としてのコーディネートを難しくしたり、古着でも高価だったりと、なかなか良品に巡り合えないものです。
しかし今回ご紹介するものは、そうした問題をクリアしている稀有な逸品。秋冬を見据えて買っておくことをおすすめします。
トレンドを採り入れつつ重厚すぎないデザイン
本来的にトレンチコートはミリタリーアイテム。そのため伝統的なトレンチコートには武器を装着したり、過酷な天候に対応したりすることを前提としたディテールがあります。
しかしこのコートは、ファッションアイテムとしての“トレンチコートらしさ”を残しつつ、不要なディテールを省略することで、街着のコーディネートに採り入れやすい作りになっています。
例えば、正統派のトレンチコートには階級を示すバッジをつけるためのディテールとして、両肩に「エポレット」がありますが、このユニクロのトレンチコートでは省略されています。同様に、首元の雨風の侵入を防ぐかぎフックもありません。
一応、ボタンで留めることは可能になっていますが、このコートはボタンを留めずに着る方が本来のデザインやシルエットが活きるものと思われます。加えて、本来であれば肩回りについているはずの「ガンフラップ」と呼ばれる布地のディテールもついていません。
このように、ミリタリーなディテールを取り除くことにより、前面はすっきりとした見え方になっており、コーディネートに際してインナーのデザインとバッティングしないような作りになっています。
クラシックトレンドを反映してか、胸元のボタンはダブル仕立て。ただしレディスなのでボタンはメンズと左右が逆です。ただ繰り返しになりますが、ボタンを留めての着用はあまりオススメではないので、気にする必要はないかと思います。
なお、正統派のトレンチコートについているポケットのフラップ(蓋)もこのコートにはついておらず、手を突っ込みやすいので街着としてはむしろ便利です。
袖口にはスリーブストラップと呼ばれるベルト仕様のストラップがついています。本来的には風雨の侵入を防ぐことを目的とした機能的なディテールです。
しかしこのコートにおいては「オーバーサイズなコートの先端を絞ることで、だらしない印象にしない」というファッション面において有用なディテールとなっています。
背面に目を転じると、ここにも特徴的なデザインである「アンブレラヨーク」があります。これは本来的に雨を背に受けても水滴が下に滴り落ちるように導く、機能的なディテールです。
しかし昨今のレディスのトレンチコートにおいては、しばしばケープのような見え方をすることで、ウエストとのサイズ感の対比により、女性的な体型をより強調する役割を果たします。
ただ、このユニクロのトレンチコートにおいては、特に女性的な体型を強調することはありません。それでいてゆったりと大きめに作られているため、カッチリとしたビジネス感はなく、カジュアルな印象になっています。
そして大きめなヨークではあるものの、ボタンで留めることができるため、下手に広がって体を大きく見せすぎることもなく、実にバランス感覚に優れた作りと言えます。
程よくゆったりで使いやすいシルエット
商品名の通り「リラックス」感があり、ボタンを留めて着ると裾がふわりと広がるAラインシルエットになります。
身幅は大きめなのですが、そのぶん袖が若干短いため、サイズ選びは裄丈を基準に選ぶのがよさそうです。ちなみに身長178cm体重64kgでやや細身の筆者が選んだのは、最大の3XL。それでもブカブカな印象は一切ありません。
袖の部分はラグランスリーブになっており、肩が落ちているので、肩回りが強調されるような不格好な印象もありません。本稿冒頭の全体写真をご覧いただくとややバランスが悪く見えるかもしれませんが、袖を通すと全く印象が変わると思います。
なお本稿の下部にも掲載しますが、ユニクロのオンラインストアにおける写真も、商品単体の「置き撮り」ではなくモデルが着用した画像を使用しています。これは商品単体で見ると商品の魅力が伝わりづらいからではないか、と筆者は推測します。
全体的にゆったりした作りになっているため、袖もかなり太めで、腕のラインがわかりにくくなっています。
しかし既述の通り、袖口をストラップで締めることで、人の視線が集まりやすい先端部分が細くなるので、オーバーサイズでありながら、だらしない印象はありません。なお、ウエスト部分にはベルトがついていますが、取り外しが可能です。
開けて着る方が、シルエットがきれいに見えるこのコートにおいて、ウエストベルトは機能的には不要ではないかと筆者は考えます。後ろにまとめておいたり、先端をたらしたりすることで、コーディネートの装飾の一部にするのも一手ですが、筆者は取り外して着用しています。
チープ感のない機能的な生地
ポリエステル素材の生地ですが、「いかにも化繊」と言いたくなるようなテカリやチープ感はなく、さらさらした手触りの中にかすかにしっとり感さえあるような、不思議な生地感です。
撥水加工がされており、シワになりづらいのもありがたいところ。カーディガンなどに比べればもちろん存在感がありますが、それでもアウターとしてはかなり軽いです。「少し肌寒くなるかも」という季節や地域の旅に際して、バッグに詰めて、旅先での羽織とすることもできそうです。
ボタンもプラスチック製ではありますが、ぱっと見のチープ感はありません。
薄手ではありますが、ポリエステルの裏地を袖裏までしっかり貼ってあるため、風を通しにくい作りになっています。ニットなど摩擦の大きなアイテムを中に入れても、スムーズな着脱が可能です。
ケアに際してはクリーニング推奨です。通常の街着として使う分には、シーズンごとのクリーニングで十分ではないでしょうか。
3色展開の内、メンズにオススメなのは2色
このコートのカラバリは、ユニクロ表記で「09 BLACK」「30 NATURAL」「32 BEIGE」の3色です。「30 NATURAL」は女性的な印象が強い色なので、男性にオススメなのは「09 BLACK」「32 BEIGE」の2色。
そして本稿を執筆している2020年5月13日現在、オンラインストアでは「09 BLACK」はXXLのみ、「32 BEIGE」は3XLのみが残っています。価格も7990円(+税)とリーズナブル。トレンチコートの良品はなかなか見つからないものなので、サイズが合うようであれば、今のうちに購入しておくことをオススメします。