ハリスツイードのジャケット&ベストは現代的シルエットで着まわしやすい!

セレクトショップのアーバンリサーチにはいくつかのオリジナルブランドがありますが、その中でも比較的デザインはシンプルながら素材にこだわりがあるのがロッソ。こちらのジャケットもハリスツイードを使用しています。

ハリスツイードという言葉はよく聞くと思いますが、これは素材の名前です。ツイードとは太く紡がれた羊毛を粗く厚く織りあげたもの。その中でもイギリススコットランドのハリス島周辺で作られ、かつハリスツイード協会に認められたものだけがその名前をつけることを許されます。

このタグ、どこかで一度は目にしたことがあるのではないでしょうか? ここ数年で日本でも流行した素材で、あまりの普及ぶりに百均でもこのタグのついた商品があったほど。

そのため、このタグさえついていればオシャレ、という時期はとうに過ぎてしまっていますが、素材そのものはとても良いものです。

ツイード生地について

ラペルを横から見たところです。

ツイードといえばこの柄を連想する方も多いのではないでしょうか。これはヘリンボーンと呼ばれる柄で「ニシンの骨」。つまり魚の骨が並んでいるように見えるところからきています。

この柄だけでも十分にクラシックな印象を与えてくれます。アーバンリサーチロッソではこのヘリンボーン柄のものは「チャコール」という品番がついています。

ひとくちにハリスツイードと言ってもその柄や厚さ、品質も様々ですが、このジャケットに用いられているものはこの写真からもわかる通りしっかりとした厚みがあります。この厚みが空気を含み、ニットのような暖かさをもたらしてくれます。

暖房の効いた室内では暑いほど。また厚みのある生地は「シルエットが崩れにくい」利点があります。薄いスーツをタイトなサイズで着ると、背中に「引っぱられた」シワが出てみっともないのですが、厚手の生地ならあまり気になりません。

さらに、生地の厚みによって縫い合わせに「余裕」ができています。ハリスツイードそのものはウール100%なのでストレッチ性はないのですが、この「縫い合わせの余裕」によって、まるでストレッチが入っているかのように動きに合わせて伸びてくれます。

そのため、着心地は案外窮屈ではないのです。

生地についてもう少し。アップで撮ってみましたが、ヘリンボーンの柄にもかなりムラがあるのがわかるでしょうか? またよく見るとこまかい毛があちこち飛び出しています。たまに白い毛が混じっているので、「ゴミかな?」と思うほど。

「ツヤ」とか「なめらか」といった言葉からは程遠い、カジュアルな生地です。だからこそ、テーラードジャケットという最もフォーマルな形になったときに、なんともいえない魅力が出るのでしょう。

現代的なディティールとシルエット

形は2つボタンのテーラードジャケットです。パッと見て、ラペル(襟)と肩の縫い合わせの線の間隔が狭いのがわかります。またラペルそのものも細く作られています。

おじいちゃんが着ていたようなツイードのクラシックなジャケットとの明確な違いがアーバンリサーチロッソのジャケットにはあります。それは「現代的なディティールとシルエット」。

下の写真と比べてみましょう。

http://ur0.biz/IJ18

ラペル(襟)が太く、肩幅もしっかりとってあり、着丈も長い。とても重厚で雰囲気がありますが、着こなしが若干難しくなります。

量販店で売っているようなスーツにこのような形がよくありますが、仕事用にスーツとして着るなら気にならなくても、普段着にしようとすると違和感が強いですよね?その理由はこういった形の違いにあります。

対してロッソのジャケットは、ラペルが細く、肩幅を狭く、かつ肩パッドも入っていません。身幅もアーム(腕)も細く着丈も短め。普段着用として作られているテーラードジャケットなのです。

クラシックな素材ながら、シルエットやディティールを現代的にすることで着回しやすくなっています。

アーム。腕にフィットする細さ。ですが前述した生地の特性もあり、窮屈とは感じません。

袖口。ボタンが3つ付いており、実際に外すことができる「本切羽」です。よく本切羽は高級品の証、と言われることもありますが、袖の長さをお直しすることができない(実際にはできるが、肩口側を詰める大がかりなお直しとなる)など欠点もあります。

またボタンを外せば袖をまくることができますが、薄手のスーツ素材ならまだしも、この分厚いハリスツイードを二折りすることは不可能です。実際に使える効果としては、袖を開くことで抜け感、リラックス感を演出することでしょうか。

ラペル(襟)が細いと、このように襟を立てることができます。幅の広いラペルを立てるのは明らかに不自然、ということは容易に想像がつきますよね。

たまに襟の裏側に別の布が貼ってあったりする物がありますが、こちらは全てハリスツイードでおおわれており、襟を立てても全く違和感がありません。

ちなみに細かいですが、下側のラペルにはボタンホール(ボタン用の穴)の跡のような縫い目がありました。実際に穴が開いているわけではなく、また対応するボタンがないのでただの飾りでしかないのですが、ここに本当にボタンがついていれば、襟を立てて一番上だけのボタンを留めるような面白い着こなしもできたのになぁと思いました。

ボタン。プラスチックですが、中心はツヤなし、外側はツヤありの素材で立体感があるため、安っぽさは感じません。

裏地です。高級品であるキュプラではなくポリエステルです。内ポケットは左右に1つずつ。

裏地はいわゆる「背抜き」の仕様。背中の部分は裏地がないということです。反対に全体に裏地をつけてあるものを「総裏」といいます。春夏は通気性を良くするために背抜き、秋冬は保温性を確保するために総裏とするのが一般的と言われていますが、必ずしもそうなっているわけではありません。

このジャケットの場合、ハリスツイードが十分な保温性をもつので、軽量化とコストダウンの目的で背抜きとしたのではないかと考えられます。

袖を裏返してみました。袖口までずっと裏地が貼られています。摩擦の多いハリスツイード、袖通しをよくするためには必須と言えるでしょう。

ジャケットをハンガーにかけた時に見えるこの場所には、ブランドタグではなくハリスツイードの認定ラベルが。前述のとおりあまりに普及しすぎたハリスツイード、なんとなく気恥ずかしいのでここはブランドタグにしておいてほしかったのが正直な気持ちです。

ブランドタグは内ポケットの下にあります。もちろん人に見せる場所ではないのですが、グレーの生地にオレンジのタグはなかなかカッコいいと私は思っています。

外側のポケット。「パッチポケット」といわれるタイプです。ポケットの生地が外側に縫い付けられた、カジュアルなジャケットに用いられるディティールですね。

ハリスツイードはとても厚みのある生地なので、通常のスーツのようなフラップ(フタ)付きのポケットにすると、かえって目立ってしまうでしょう。この生地にこのパッチポケットはとても自然な仕様と言えます。

背中側、裾部分。真ん中に切れ込みを入れている「センターベント」というディティールです。最近のスーツの多くはこのセンターベントですね。対して両脇に切れ込みが入っているのは「サイドベンツ」と言います。

私は座るときにセンターベントだとここに変な折り目がつく心配がるので、サイドベンツもしくは切れ込みのない「ノーベント」が好きなのですが。

同素材のベスト

さてここからは、同じくハリスツイードで作られたベストについて解説します。ジャケットとは別売りの商品です。

正面から。前面全てハリスツイードなのはもちろん、

背中側もハリスツイードでおおわれています。これが意味することは、このベストは「1枚でアウターとしても着用できる」ということです。

スーツ用のベストは、基本的にこの背中側に裏地の生地を使います。ジャケットと重ね着することが前提ですので、滑りをよくするため、また通気性を確保するためです。その代償として、ベスト1枚で着たときにはどうしても違和感がありますね。

このように背中も表地の生地を使えば1枚で着ても違和感はありません。またハリスツイードで前後はさまれることでとても保温性が高くなります。個人的な感想としてはインナーダウンベストを着ているような感覚でした。

しかしながら、このようにベスト(ジレともいいます)1枚のスタイルがおしゃれなのか?という疑問がでますね。ベスト1枚のスタイルは日本人にはなじみが薄く、どうしても不自然に感じます。

男性のおしゃれには「さりげなさ」が大事。このベスト、後述する「ジャケットとのセット」で着用することをオススメします。

また、ベストによくあるディティールとして背中にサイズ調節用のベルト(尾錠)がついていますが、生地が厚いハリスツイード、ベルトで締めてサイズ調節できるものでもありません。不要なディティールとして排除されています。

ベストにもきちんとポケットがついています。両脇と、左胸に1つ。浅いのですが、キップや小銭をちょっと入れておくなど、あると便利です。

ボタンは5つ。全て留めることも可能ですが、基本的に一番下は留めない方がいいでしょう。2つボタンスーツの下のボタンは開けておくように、ベストもまた一番下は留めないのがスーツでのマナー。カジュアルで着用する場合はその限りではないのですが、実際にやってみるとわかりますが、一番下まで留めてしまうと座ったときに非常に窮屈です。マナーには理由があるものですね。

ベストの裏側。ベストは総裏です。左胸にだけ内ポケットがあります。

ジャケットとベストのアンサンブル

これでスラックスも同じ素材のものがあれば「スリーピース」となるのですが、今期のアーバンリサーチロッソではスラックスの発売はありませんでした。ジャケットにベストを合わせるとどのような効果があるのかいくつか挙げてみますと

ドレス度が上がります。元々、スーツはジャケット·ベスト·スラックスの3点で構成されていました。現在でも、燕尾服やモーニングではベストと合わせることが多いですよね。インナーが見える面積も減りますし、とても「カッチリした印象」になります。その姿に近い形となります。

スーツ素材でこれをやると日常着の範囲を超えてしまいますが、ハリスツイードというややラフな素材によってちょうどいいバランスを作ることができます。

保温性が高くなる。先ほども書いたとおり、インナーダウンを着ているかのような保温性。おなかまわりが冷えないのもありがたいです。背中もハリスツイードが二重になるので暖かいです。

体型隠しの効果がある。おなか周りを厚手で硬い素材で覆うことによって「おなかが出ていることを隠せる」。体型をキレイに見せる一つのテクニックとして使えます。

ジャケットとベストの着丈の差はこのくらい。ベストの下にシャツを着てタックイン(シャツの裾をスラックスに入れる)する場合、ベストとスラックスの間からシャツが見えないようにしましょう。

どちらもMサイズで購入しています。168㎝67㎏の私で、ジャケットのMだとお尻が半分隠れるくらい、Lだとお尻全体にかかるくらいの着丈です。

身幅は実はMだとボタンを留めると後ろのセンターベントが開いてしまうくらい細いのですが、ベストを着る際には前を留める必要がないこと、Lだと着丈が長すぎてカジュアルさに欠けて着回しにくいと判断しました。

定価はジャケットが3万9960円(税込)、ベストが2万1600円(税込)です。アーバンリサーチロッソでは毎年ハリスツイードの製品を展開しているようです。また2017年末には30%オフと、比較的早い時期からセールにかかっていました。

執筆時は色によってサイズ欠けしていますがまだ少し残っていました。定価ですと決して安いとは言えない価格ですが、ツイードは丈夫で、長く着ることでなじんでアジが出ていく素材です。その中でもその品質を世界に認められたハリスツイード。

この機会にジャケット&ベストのセットでいかがでしょうか。

三十路

この記事を書いた人

三十路

体重69kg 足の実寸25.5cm 頭囲60cm

37歳、2児の父。 体型に恵まれなくても、仕事や育児に忙しくても、いっしょに「おしゃれでカッコいいパパ」を目指しましょう!