メンズのハイブランドデビューならヨウジヤマモトのラップパンツ

ヨウジヤマモトというブランドをご存じでしょうか。

デザイナーの山本耀司氏の名前を冠していることからわかるとおり、日本生まれのプレタポルテ(既製服)ブランドであり、和製ブランドとしては、コムデギャルソン・イッセイミヤケと並んで海外でも有名かつ人気となっています。

パリコレに初登場した際は、当時タブーだった黒を基調としたコレクションに対して批判もありましたが、今となっては完全に定着しており、黒一色のコーデも見慣れたものです。

さて、そんな特徴的なハイブランドですが、「ブランド名しか知らない」「気になっているものの、手を出せない」「そもそも店舗を見たことない」といった意見も多いようです。そんな皆さんの参考になるように、ヨウジヤマモトのアイテムをレビューしてみようと思います。

まず今回は、ヨウジヤマモト定番のアイテムである変形ラップパンツです。このラップパンツ、私が今期に購入したボトムスの中でもトップクラスのオススメ品ですので、ぜひともその概要を確かめてください。

穿くことすら難しい

そもそもラップパンツとは何なのかという点ですが、簡単にいえば、体に巻き付けて穿くように設計されたパンツのことです。「巻き付けて穿く」という表現が、意味不明に思えるかもしれませんので、今回のアイテムの着用方法を簡単に解説します。

まず、ウエストまわりが最大116㎝ほどもあるこのパンツ、よっぽどお腹が膨らんだ人でもない限り、ベルトで締め付けないと着用不可能です。しかしここで注目したいのが、左右に2つずつ配されたボタン。

このボタンをとめることによって、ウエストの全周を84㎝ほどまで縮めることができます。着用の際は、ボタンを外したぶかぶかの状態でパンツを腰まで持ち上げ、ボタンを使ってウエストを調節する、という流れになります。しかし、これでもウエストはゆるゆるですので、パンツの前面から伸びている帯を腰に巻き付けて締めることにより、パンツがずり落ちないよう、完全に穿くことができるのです。

ここまでの説明でお分かりいただけたと思いますが、穿くための過程が非常に面倒です。

着るときも脱ぐときも、他のパンツよりだいぶ手間がかかりますし、トイレの個室を利用するときが特に厄介です(小用を足す場合は、普通のスラックス同様にファスナー(いわゆる「社会の窓」)が付いているので問題なし)

ただ、誤解しないでいただきたいのは、ヨウジヤマモトのアイテムが一般的にこういった厄介さを抱えているわけではなく、あくまでこのアイテム自体の問題だということです。いきなりマイナスポイントから入りましたが、着脱はすぐに慣れますし、これから説明する長所のほうが圧倒的に大きいのでご安心を。

素材感と機能性は良好

着脱に難のあるこのアイテムですが、穿いてしまえば最高の一品です。

まず、ヨウジヤマモトの代名詞ともいえる「ウールギャバ」の素材感がすばらしい。「ギャバ」とはギャバジンの略で、スーツの生地にも採用される「ギャバジン織り」によってつくられた、丈夫でツヤのある生地です。

スーツに使われる素材のおかげでツヤがあり、これだけワイドなシルエットでも一定の高級感・ドレス感を保っていますね。

一方、「ワイドシルエットでドレープ感もあるパンツって、ウィメンズじゃねーか」と思うかもしれませんが、ウールギャバのおかげで紳士服のイメージを醸し出してくれていますので、「オカマっぽく見えたらいやだな」という不安も一掃されます。

また、素材はウール100%(前面に垂れている四角い布部分のみコットン100%)のため、化学繊維とは違う本物の高級感を持っているのですが、さすがにウールは春夏に着られないと思う方もいるでしょう。

しかし、実際に穿いてみると、意外と暑苦しく感じないのが分かります。というのも、普通のスラックスのように脚と生地との距離が近くないので、生地がペタッと密着することがないのです。

脚と生地との間に空間が広くとられているので、通気性が確保され、汗でベタベタすることなく過ごせる。このアイテムの特筆すべきポイントといえるでしょう。

この、猛暑でもベタつかない快適さの味を知ってしまうと、普通の細みのパンツを真夏に穿くのが、苦痛にすら思えてしまいますね。

さらに、脚と生地の距離が離れているおかげで得られる特徴がもう1つ。歩いてみると、生地が揺れて、美しいドレープ感が生まれるのです。歩くとき、前に出した脚にワンテンポ遅れて生地がついてくる、といった動きですが、このときに生み出される生地の上品な揺らめきは、歩くこと自体が楽しくなるような感動をも与えてくれます。

シンプルコーデを輝かせる存在感

暑い季節にはTシャツと短パンしか着ない、という方もいるかもしれませんが、どうしても子どもっぽいカジュアルコーデになってしまいますよね。かといって、細みのスラックスを穿くのは暑くて厳しい、という気持ちはよく分かります。

そんなときに活躍してくれるのが、ラップパンツです。すでに述べたとおりですが、通気性がよく、暑いときでもベタつきが少なくて済むのがすばらしい。このラップパンツならば、Tシャツとスニーカーを合わせたとしても、スラックスという要素のおかげで大人っぽさをキープすることができるのです。

しかも、明らかに他のアイテムとは一線を画する、特殊なデザインが目を引きますよね。

袴のようなワイドシルエット、片側だけ付された一枚布、ベルト代わりの帯。はっきり言うと、こうしたデザインは、初心者向けではないです。

ただ、身につけるだけでコーディネート全体のイメージを完全に変えてしまうような、存在感の強さがあり、シンプル・スタンダードな格好に飽きた中級者・上級者は、確実に魅了されるはず。暑さゆえ、シンプルなTシャツを着ざるを得ないとしても、このラップパンツがすべてを変えてくれるのです。

これこそが、ヨウジヤマモトのアバンギャルドデザインの真骨頂といえるでしょう。少しでも興味を引かれた方は、ぜひ実際に穿いてみてください。自分で穿いてみると、予想以上にかっこよく見えることに驚くはずです。

他を圧倒するデザインに加えて、着こなしの幅を広げる利点も持ち合わせています。実はこのアイテム、股上が深い構造になっているため、ウエストを高い位置に持ってくることが可能なのです。

身長172㎝の私はサイズ2を選んだのですが、くるぶしに少しかかる程度のアンクル丈として着用することもできますし、ヒザ下丈の短パンのように見せることも簡単。

このため、最近流行の着こなしである「タックインスタイル」(トップスをボトムスの中にインすること)に挑戦しやすいという特徴があります。

タックインスタイルは、腰の位置が丸わかりになってしまい、胴長短足の体型をごまかすことができないという欠点があるのですが、ウエストを上げることによって腰の位置が高いかのように見せ、体型をきれいに見せることができるのです。

キメすぎ注意

https://goo.gl/mEFwDd

ヨウジヤマモトの服は、スーツスタイルを崩したアバンギャルドデザインのものが中心となっています。もちろん、コレクションを見れば、スーツスタイルとは離れたアイテムも多く存在するのですが、定番アイテムとしては、ジャケットやシャツやスラックスを崩したものがメインです。

つまり、デザインで崩したとはいえ、根本にはドレスの要素(生地感や配色、ベースデザインなど)が色濃く残っており、どうしてもコーディネートをキメすぎに見せてしまう危険を抱えています。

もっとも、コレクションの着こなしをそのままの形で再現したり、あえてキメキメなスタイルでモードファッションを楽しんだり、必ずしもキメすぎてはいけないというわけではありません。そういった嗜好があってもいいと思います。ただ、街着としてドレス・カジュアルのバランスを意識するのであれば、ドレス寄りになりすぎることを警戒するのも重要でしょう。

さて、ドレス要素が強いという点では、このラップパンツも同様です。形の特殊さや太いシルエットが目立つものの、素材は高級感のあるウールギャバですし、ベースは黒のスラックスとなっています。

そのため、シャツではなくカットソーを合わせたり、靴もスニーカーを選ぶようにしたりすることで、キメすぎになるのを避けるようにしましょう。

上の画像のように、ツヤのあるドレスシャツと革靴を合わせてしまうと、「普段着なのに気取っているなぁ」という印象を与えてしまうのです。あるいは、シャツを使うにしても、襟のないノーカラーシャツを使うなど、いろいろ工夫が必要になりますね。

まとめ

今回紹介させていただいたラップパンツ、定価は税込みで7万7760円と、なかなかのお値段です。冬物のアウターが買えてしまうような金額ですし、万人に手放しでお薦めできるものではありません。クリーニング代も高級ブランド価格なので、通常のスラックスより高くつきますし(お店の設定次第ですが、私の場合は通常のほぼ倍額でした)。

ただ、上質な素材感と唯一無二のデザインを考えれば、スタンダードな服装に飽きた方々には見て、試していただきたいです。では、今回はこの辺で失礼します。

 

ぎすお

この記事を書いた人

ぎすお

身長172cm 体重63kg 靴26.5cm

スタンダードを通り越してアバンギャルドな方向に魅力を感じ、ヨウジヤマモトをメインで買って着ている29歳独身。 最近はリアルクローズとして如何に普通の服っぽく着こなすかを課題に据えている。